モスクワに住む若い夫婦との雑談(前半部)

ロシア人の若い夫婦とのインタビューを模した雑談。二人は地方出身で現在はモスクワに住んでいる。前半と後半に分け、今回は前半です。

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グレブ:グレブ、28歳です。エカテリンブルグに生まれ、いまはモスクワに、もう12年住んでいる。ロシア国立人文科学大学の歴史学部、政治法学科を卒業した。いまは博士論文を書きながら、Transparency Internationalのロシア支部で働いています。

ベラ:ベラ、27歳、生まれと育ちはナリチクです。ナリチクというのは、カバルジノ=バルカリアにあります。モスクワにはいったりきたりしながら2008年から住んでいます。仕事は雑誌や広告業界。

編集部:ありがとう。じゃあ最初の質問。どうしてモスクワに来ることになったの? 大学にはいるため?

グレブ:僕の母親が仕事を変え、家族でモスクワに来た。大学に入りたいという僕の希望とも合致していたけど、主な理由はこれだね。

編集部:ベラ、いったりきたりというのはどういうこと?

ベラ:モスクワに住みたいと思ったことは一度もないけど、ただ、私が最初に結婚した男性がモスクワに住んでいたからそうなったの。それから知り合いが増え、仕事もあって、街に慣れたわ。いったりきたりっていうのは、2009年に地元に半年戻っていたから。笑

編集部:つまり君達は最初は(あるいは今まで?)モスクワに住みたいっていう気持ちはなかったということ?

グレブ:僕はそう思った事はなかったね。いまでもモスクワは好きじゃない。けど、満足に生活するためには本当にお金が必要で、そのためには稼がないといけない。

ベラ:えっと、たぶん本当に若かった時、14歳くらいのときはそう思っていたわ。というのも一番いいライブは全部モスクワだったから。でも、そんなに強く思っていたわけでもなく、モスクワに来たいという気持ちを持ち続けたりはしなかった。まぁ、モスクワの悪口を言うことにしたのよ。笑

モスクワが好きだってあけすけに言う人は少ないわ。でも、それぞれに街のいいところもあるし、モスクワが好きな時期というのもある。でも、モスクワがなんで良くないかを話すのはちょっとイケてないわよね。

グレブ:うん、僕にもモスクワのなかで気に入っている場所が少しはあるよ。

編集部:モスクワに関して言えば、時々ロシア人はモスクワは完全に別世界だって言うのを聞く。だから、モスクワに引っ越してきたロシア人たちはなにか特別な感情や考えをモスクワについて持っているのかな、と思ったんだよ。つまり、「なぜこんなに多くの人々がモスクワに集まるのか」に興味がある。

ベラ:それは、ロシアの他の地域と比べて、所得も生活水準も高いからね。なにかが得られるチャンスがあるから、みんな次々と集まってくるのよ。

グレブ:二つ理由があると思う。一つは平均所得が高いこと。二つ目は社会的なステータス。

編集部:グレブ、「社会的ステータス」ってどういう意味で使っている?

グレブ:もし僕がモスクワ出身のデザイナーだったら、それはヴォログダ出身のデザイナーよりもイケてるってことになる。たとえ仕事が半分しかできなくともね。

編集部:面白いね。もう少し詳しく聞かせて。モスクワ出身というのは、「モスクワ生まれ」ってこと、あるいは単に「モスクワに住んでいる」ってこと?

グレブ:なんていうか、モスクワに住んでいるということは、ロシアでは特別なステータスなんだ。モスクワ人は伝統的にあまり好かれていないし、傲慢でケチだと思われている。ここには、中央政府があり、そうした権力に近いということはある種のシンボルだ。モスクワ生まれかモスクワに引っ越してきたか、この違いを気にしているのは、モスクワ生まれ人たちだけだね。つまり、“モスクワ人”と“それ以外”でなんらかの差があると。そして、“モスクワ人”はさらに“モスクワ生まれ”と“モスクワに移ってきた人たち”で区別される。そして、なによりも、“生粋の”モスクワっ子であることが一番イケている。

編集部:ところで、収入についてなんだけど。ちょっと突っ込んだ質問いいかな? モスクワで生活するためにはどれくらいお金が必要なんだろう? また、生まれ故郷で生活するためにはどれくらい必要?

ベラ:どういう生活をするかに依るわね。笑

グレブ:僕たちの収入はモスクワの平均に比べてあまり高くない。






モスクワでは、僕らの消費水準では一人、だいたい月15万ルーブル〔編集部註:現在の為替レートでおよそ37.5万円〕くらい必要かな。

ベラ:地元では5万ルーブルあれば足りるわね。

グレブ:エカテリンブルグでは、5万ルーブルの給料があればいい方だと考えられている。

ベラ:でも地元ではなにも必要ないから。笑

編集部:モスクワで一人月15万ルーブルくらい、これは実際の感覚ではどう? モスクワに住んでいた時、カフェやレストランの値段によく驚いていたんだけど。

グレブ:それだけあれば、住居を借りて、食べ物を買って、簡単な洋服買うのに十分だし、娯楽も、映画や展覧会にも行ける。もし車を持っていたら、お金はもっと必要だとは思うけど。うん、外食費は本当に高いよね。

ベラ:うん、ちょっと高い洋服だって買えると思うし、旅行だってできると思う。レストランにはいずれにせよ、毎日はいかないし。もし行くとしても、ふっかけてこない場所を知っていればいいのよ。

グレブ:東京で住むにはいくらくらい必要?

ベラ:ルーブルでね。笑

編集部:生活の水準によるかな。笑

ベラ:じゃあ、特別おしゃれはしないけど、欲しいなと思ったものは買えるくらいでは?

編集部:10-12万ルーブルくらいなのかなぁ?

グレブ:だったら、モスクワとほとんど似たようなもんだね

ベラ:でも、東京ってモスクワより高いって思われているんじゃない?

編集部:でもモスクワのほうが東京より高くない?

グレブ:東京行ったことない…。

ベラ:いま世界の都市の物価高リストのサイト観たけど、モスクワはリストにも載っていないわ。でもジェノヴァでは前に金欠に陥ったわ。

グレブ:モスクワでは、5−700円で軽食が食べられて、地下鉄の切符が、80円くらい。家賃の平均は80000円/月くらいかな。

ベラ:モスクワの端っこに借りれば、71000円くらいあるわ。

編集部:なんで円で言ったの?笑

グレブ:興味あって、笑。まぁだいたい、すごく簡単な昼食で300-400ルーブルだね。メトロの一回券は40ルーブル、家賃は3万ルーブル。

ベラ:25000-30000ルーブルはもう端の値段じゃないと思うわ。

グレブ:僕たちの家賃は25000ルーブルだけど、これは本当に稀だと思う。

ベラ:一番質素な昼食って言ったらもっと安いわよ。150-200ルーブルくらい。

グレブ:でも、150ルーブルだと少ないよ。笑 これだとどこか道ばたの売店でサラダ一つだけだ。

編集部:ベラ、モスクワにそんなランチあるの?

ベラ:うん、サラダが50ルーブル、メインが100ルーブルの食堂なんてたくさんあるわよ。クールスカヤ地区にはランチが110ルーブルのところがあるわよ。

グレブ:えー、僕は平均的な昼食について話していたんだけど……。安いところを見つけることはできるけど、平均的な値段で言えば、300ルーブルくらいだと思うよ。

ベラ:場所によるわよ。

ベラ:

ベトナム系のレストランに行けば、だいたい数コペイカで食べられるわ。〔100コペイカで1ルーブル〕

グレブ:あとは、教会なら時々無料で食べさせてくれる。あるいは公共食堂(工場式の大調理場がある食堂)もいいね。

ベラ:でもね、モスクワの食事はそんなに高くないわ。高いのは、不動産と交通、それとクラブで飲むお酒ね。最後のは、いろいろ議論があるだろうけど。それと、洋服も高いわ! でもモスクワではほとんど誰も服を買わないわね!

編集部:ところで、モスクワ(ロシア)のご飯は、他の国のより美味しいと思う? どう思う?

グレブ:いや、ご飯は絶対に美味しくない。

ベラ:カフカス地方には素晴らしい料理があるわよ!

グレブ:カフカス地方は、確実に美味しい!

ベラ:つまりね、素朴な料理はモスクワの外にあって、それは新鮮なの。

グレブ:でも即座に答えるね、どんなところでも、モスクワよりは不味いところはないよ。

ベラ:それには賛成しかねるわね。素朴じゃなくて凝った料理なら、モスクワのほうが多いし、ナリチクの日本食レストランにはいかないほうがいいわ。というのも、ナリチクではもう長いこと本物の日本人を見たことはないし、料理法に関しても誰も知らないだろうから。でもモスクワでは信頼できる(相対的にね)レストランを見つけることができる。

編集部:うん、ベラの言う事はわかるよ。でも例えば、どんなレストランが思いつく? それと、洋服に関しても質問していいかな? 普段君達はどこで買い物をしている?

ベラ:あらゆるレストランね。モスクワは、大都市で、沢山の人たちが行き交っているわ。そうした中には料理できる人はいるし。ロシアの他の地域では、そういうことはないし、あってもごく僅かでしょ。たぶん、極東には沢山の中華料理屋や日本食レストランがあると思うけど。洋服は私の支出項目のなかでも多いほうね。洋服と居合道がその中心かな。

グレブ:洋服に関しては、別々に訊いたほうがいいかも。というのも僕らは好みも知識もバラバラだから。たぶんね。

ベラ:洋服に関しては、私は黒いのを着るわ。黒い物は安いと、すぐわかっちゃうでしょ。だから私はオーガニック素材のもので、Rick OwensやAnn Demeulmeesterみたいなアヴァンギャルドなデザイナーのものをいつも買ってる。そういうのは、安くはないわ。でも、セール期間にサッと手に取るの。

編集部: Leformとかで?(http://www.leform.ru/index.php)

ベラ:そうねLeformやSVMoscow(http://svmoscow.ru)とか。でも、列車でも買うわよ。〔ロシアでは郊外行きの列車などで物売りの人たちが口上をききながら、様々なものを売っている。ボールペンやノートやイコンや聖書や洋服やアイスクリームや……〕

グレブ:最近買ったもので2000ルーブル以上のものは、ヨージ・ヤマモトのバッグかなぁ。それを買ったのはベラが買えって言ったからなんだけど。

ベラ:グレブは洋服を全然買わないの

グレブ:たまには買うよ。笑

ベラ:グレブはプレゼントとしてもらうか、あるいは私が買わせるか、ね。でもこれって、ロシア人に典型的な話よね。男がおしゃれに気を使うのはダサいっていう。

編集部:グレプはあまりファッションに興味ないの?

ベラ:ファッションについて詳しいことさえ恥ずかしいと思われているかも。先入観ね。笑

編集部:うん、そのことはロシアに来る前に聞いたことあるよ。ところで、ロシア人は黒いのが好きなの?

グレブ:ロシア人は黒好きだね。

ベラ:北国の人はみんな黒が好きよ。だって歴史的に見て、冬に川で洗濯するのは寒いでしょ。笑 で、黒なら汚れが目立たないから。笑

グレブ:僕はファッションに興味を持つことは恥ずかしいとは思わないけど、ファッションの世界にあまり興味がないんだ。笑

編集部:ロシアでは、イケてる男の子はファッションに興味を持たないと。

グレブ:僕は自分のことを「イケてる男の子」とは思わないよ。笑 ただ単に僕がほとんど興味がないというだけだ。

編集部:わかった。笑

ベラ:そう、なんでかそうなの。笑 あらゆるマッチョ文化では、少しでも「男らしさ」のイメージに陰を落とすものはもう駄目ね。

グレブ:僕は洋服に詳しかったり好きなことが悪いことだとは全く思わないよ。洋服は、素晴らしいものだと思う。

追加分(2014年12月12日)

【以下書き足し部分】

編集部:日本の男性はお金があれば洋服が好きな人は多いと思うけどね。あ、あと政治のことに関して訊きたいんだけど。

グレブ:ロシアの男性も洋服が好きなんだけど、ちゃんと着こなしているわけではないんだ。本当に多くの人が「高いものは良い物だ」っていう原則にとらわれている。

ベラ:そんなことないわよ。ちゃんと着こなしている男の人もいるって。知り合いでもいるし、私のタトゥーを彫ってくれた人もそうよ。

グレブ:そういえば、さっきランチが150ルーブルで食べられるって言ったよね。もちろんそういうのもあるけど、でもそれって例外だと思うよ。

編集部:笑

ベラ:私はおしゃれな男の人と150ルーブルのランチに囲まれたいわ。笑

まぁ、モスクワもペテルブルグも他の地域よりそういうのは多いわよね。

編集部:日本にはおしゃれな男の子たくさんいるよ、ベラ!笑

グレブ:日本にいけたらベラも幸せだ!笑

ベラ:150ルーブルのランチはある? ランチなかったら行かないわ。笑

編集部:たぶん、140ルーブルくらいの昼食あるよ……

ベラ:トランクの用意するわ









。笑

後半に続く

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