アルバイツ・コレクチフとロシアのデザイン

2015年秋に発刊された『チェマダン』07号では「新しいロシアの若いデザイン」と題する、デザイナー、ナタリア・アガポヴァへのインタビューを掲載しました。
ここでは彼女が参加していたデザイナー集団「アルバイツ・コレクチフ」の作品を紹介します。
ロシアのデザイン界を席巻するアルバイツ・コレクチフのメンバーによる斬新なアイディアをご覧あれ。04_boxerユーリー・ボクセル《ルイス・ブニュエル「ブルジョワジーのひそかな愉しみ」のためのポスター」1988

ソヴィエト末期のデザイナーたちは西側のデザインにインスピレーションを求め、ポーランドのデザインの魅力に抗うことはできなかった。ユーリ・ボクセル、イーゴリ・マイストロフスキーらのデザイナーによるポスターでは文学的イメージが俳優の演技および作者の発言と結び合わされている。

 

05_belousov_itikavaエリク・ベロウソフ《市川崑 映画回顧展》 2008

05_gurovich_opus

イーゴリ・グロヴィチ《ゾーン オーパス・ポスト》2005

 

05_naumova_glotka

アンナ・ナウモヴァ《深き声》2006

90年代にロシアのデザイナーは世界のデザインの多様性を発見した。あらゆる新しいものに対する関心はポストモダニズムに対する一般的な熱狂となり、多くの奇抜なグラフィックを生み出した。無限の実験への道に出現したのは現代ロシアのデザインの特徴を決定づけた人々やスタジオだった。それらの中にいたのが、グロヴィチ、ベロウソフ、ナウモヴァによって2002年に設立されたオステングルッペである。

「グループは、視覚言語に対するラディカルな態度という価値観、ナンセンスの抒情的な調子、原則的態度の情念、グラフィック上の正確さを超越する。ロシアアヴァンギャルドの社会的実践的な達成はグループの行動政策および作品に直接表れているが、そこに新しい生命を与えている。おそらく、デザイナーたちがおこなう手段の選択はおのずと、伝統的な絵画、彫刻、写真、インスタレーション、ビデオなどを避けて平均的で複製可能なオフセット機を利用し、ギャラリーの閉鎖性を避けて普遍性と物質主義を利用することになるのだが、これはロシアアヴァンギャルドの芸術家たちとの結びつきを示すもっとも本質的な要素である。言いかえれば、デザイナーの制作の帰結としての(第一に物理的な)近づきやすさという原則は、実際に生活のファクターについて語るかのように現代美術について語ることを可能にし、グループの制作を一貫してつらぬく経糸となっている。」K.ブラゴダツキフ「オステングルッペ ポスター、デザイン、芸術」展覧会カタログ、モスクワ現代美術館、2011.

dom_poster_lukex_695x1000.indd

エリク・ベロウソフ≪ Luc Ex Assamblee≫2015

cadet corps 01cadet corps 03cadet corps 07cadet corps 05cadet corps 04イーゴリ・グロヴィチ≪第一陸軍幼年学校≫2014

rock-seine_210x315_agapova.indd

ナターシャ・アガポヴァ≪像を閉じ込めろ≫2014

WebTheatre_01_02Theatre_01_03Theatre_01_08WebTheatre_04_02Theatre_04_03Theatre_04_07WebTheatre_17_03Theatre_17_04Theatre_17_06Theatre_13_06ナターシャ・アガポヴァ『チアトル』誌

2012年に設立されたスタジオ、アルバイツコレクチフはかつてのオステングルッペのメンバーであるグロヴィチ、ベロウソフ、アガポヴァから成っている。「労働集団」という名前が選ばれたのは偶然ではない。視覚言語の実験と領域を横断する企画への興味がスタジオの仕事を決定づけている。アルバイツコレクチフには上司も部下もない。みな独立して働き、大きな企画の時には団結する。「プロフェッショナリズムへの愛、互いの信頼、よいデザインは自由な人間だけが生み出せるという信念がぼくらを結び付けるんだ」と、アルバイツコレクチフのメンバーは言う。


Leave a Comment