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    【ロシア・アヴァンギャルド特集第四弾】 パーヴェル・フィローノフ / Павел Филонов / Pavel Filonov(1883-1941) いわゆる「ロシア好き」の多くが夢中になってしまうフィローノフ。研究者よりも崇拝者をうみだすフィローノフ。マレーヴィチやカンディンスキイと異なり、いわゆる「美術史」の文脈に乗れないフィローノフ。でも、ロシア国外での知名度に比べて国内では意外と知られているフィローノフ。個人的には、荒木飛呂彦先生も気にいってくれるだろうことを疑わないフィローノフ。 あまりにも「ロシア的」というべきか、コスミックな感覚に貫かれた彼の絵画は、ある意味ではきわめてわかりやすく、美術の知識を持たぬものにも開かれているといえ、ただただ観る者を魅了する(か、嫌悪感を引き起こす)。彼の絵画のほとんどは、具象的とはいえないものの、マレーヴィチやカンディンスキイのような「抽象」とはまったく異なるし、仮に「幻想的」と形容するにしても、それは、ベラルーシ出身の(って知ってました?)シャガールの「幻想」とは似てもにつかない。 立体未来派の詩人アレクセイ・クルチョーヌィフは、フィローノフのことを「不可視のものを観る者」と呼んだ。添えられたタイトルから、そこで作家が何を描きたかったかはそれとなく理解できるフィローノフの絵画の中では、その対象の過去と現在、そして未来(これが重要)とが作家の内なる「慧眼」によって積分され、一挙に一枚の絵画へと微分されていく。彼の絵画は、瞬間と永遠との間で交わされる激しい往復運動を思わせるだろう。蠢く細部の積み重ねによって紡がれ、美的な統制を失いながらかろうじて保たれるその全体のもつ緊張感は、他の作家の作品に類を見ない。(text)