ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第7週

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第7週

Театр.誌原文(第7週)

(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)

▶︎公開:4月22日01:30
▶︎更新:4月26日00:41


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。



4月13日

22.29.
ミュージック・ライフ誌〔Музыкальная жизнь〕によると、文化会館「ラススヴェト〔夜明け〕」で行なわれたピアニストのアレクセイ・リュビモフと歌手ヤナ・イヴァニロヴァのコンサートに警察が来て、建物に爆破予告がされたと伝えた。しかし、これによって音楽家がシューベルトの即興曲の演奏を中断することはなかった。観客も逃げ出さなかった。この晩のプログラムにはウクライナの現代作曲家ヴァレンチン・シリヴェストロフの連作歌曲《ステップ》も含まれていた。
https://vk.com/video-164944669_456239714

15.00.
ムヌシンスク・ドラマ劇場がウクライナでの特別作戦を支持するビデオ「ZV」を公開。

14.00.
ノヴォシビルスク州立人形劇場がロシア連邦大統領とロシア軍を支持するビデオを公開。

11.00.
英露オペラ・バレエ・チャリティ基金(Mariinsky Theatre Trust)が活動を停止。ヴァレリー・ゲルギエフによって30年前に設立された同組織は、イギリスにおけるロシアのバレエ・舞台作品の発展のための資金運用を担っていた。基金のサイトには「マリインスキー劇場の基金は閉鎖しました」と掲載されており、理由の説明は一切ない。


4月12日

10.00.
ドラマ芸術学院と統合されたメイエルホリド・センターから三人の職員が職を辞したことが本日明らかになった。マーケティング部長のオレグ・ソコロフ、マーケティング部マネージャーのソファ・クルグリコヴァ、PRマネージャーのヴァレリヤ・ゴルベヴァは、統合された劇場のディレクターであるオリガ・ソコロヴァとの方針の不一致による辞職に関して、声明を発表。彼らは声明文をSNS上で公開した。
メイエルホリド・センターは、エレナ・コヴァリスカヤがウクライナでの軍事行動開始への抗議としてディレクターの職を辞し、芸術監督のドミトリー・ヴォルコストレロフが理由の説明なく解雇された後、3月1日にドラマ芸術学院に統合されていた。


4月11日

20.00.
ウィーン・コンサートハウスにおけるテオドール・クルレンツィス、musicAeterna、ピアニストのアレクサンドル・カントロフのチャリティ・コンサートがキャンセルされた、とSlipped Discが報じた。これは、musicAeternaのスポンサーがVTB銀行〔制裁対象に含まれているロシアのメガバンク〕であることが判明し、在オーストリアウクライナ大使アレクサンドル・シェルバが要求したためである。4月12日のコンサートの全収入は、ウクライナの被害者の救済に充てられる予定だった。同会場におけるチャリティ目的ではない直前の二つのコンサートは予定通り行なわれた。

18.21.
テオドール・クルレンツィスが立ち上げたmusicAeterna合唱団が、4月20日にサンクト・ペテルブルクのドム・ラジオでチャリティ・コンサートを実施することをアナウンス。ヴィタリー・ポロンスキー指揮のもと、合唱団は受難週〔4月10日から4月16日、復活祭前日までの一週間を指す〕に東西のキリスト教の音楽を組み合わせたプログラムを演奏する。チケット売り上げはすべてロシア赤十字社に寄付される。

15.00.
ノヴォシビルスク州文化大臣のナタリヤ・ヤロスラフツェヴァが離職。これについて、4月11日に同州知事が運営会議で発表した。知事によれば、これは彼らの総意である。ヤラスラフツェヴァは2008年から2013年、そして2020年から2022年にかけて在任。ノヴォシビルスクでは最近、3月31日にノヴォシビルスク・バレエ・オペラ国立劇場が、ウクライナでの出来事についての発言を理由にアンナ・ネトレプコのコンサートをキャンセル。3月16日にノヴォシビルスクの第一劇場ディレクターのユリヤ・チュリロヴァが解任。3月12日にノヴォシビルスク青年劇場グローブスが他劇場と同様、イヴァン・ヴィルィパエフの作品の直近の上演をキャンセル。3月6日にトマス・ザンデルリングがノヴォシビルスク交響楽団の芸術監督と主席指揮者を退任。

10.00.
演出家のセルゲイ・レヴィツキーが自身のSNSで、ウラン・ウデのロシア内務省支局から召喚状を受け取ったと公表。レヴィツキーは「行政上の法律違反に関する人物」として警察に呼び出されている。先の3月22日にはブリヤート共和国文化省が、セルゲイ・レヴィツキー氏をベストゥジェフ記念ロシア国立ドラマ劇場(在ウラン・ウデ)の芸術監督から解任している。3月28日にレヴィツキー氏は「勤務調査を行なうため」東シベリア文化国立大学の職を一時的に解かれた。4月2日には、演劇批評家協会がセルゲイ・レヴィツキー氏を支持するオープンレターをサイトに公開した。


4月10日

23.00.
ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでローレンス・オリヴィエ賞の授賞式が行なわれた。多くの出席者、受賞者がウクライナ情勢について言及した。また、アルバート・ホールの舞台には、この夜〔ウクライナの〕ヘルソン出身のオペラ歌手クセニヤ・ニコラエヴァが招かれ、ウクライナ国歌を歌った。


4月9日

14.45.
ナポリのベッリーニ劇場はウクライナ・クラシック・バレエ団が出演する『白鳥の湖』の上演中止を発表。同バレエ団は〔4月9日〕現在、イタリア巡業中である。〔イタリアの情報サイト〕Fanpageでは、4月25日は『白鳥の湖』に代わりアダンの『ジゼル』が上演されると伝えられた。TASS通信によれば、ロニーゴとトリエステの劇場でも同様の決定がされた。フェラーラの市立劇場〔Teatro Comunale〕では『白鳥の湖』の代わりに世界の様々なバレエ作品の抜粋が上演される。〔フェラーラの〕劇場サイトで、演目変更の決定は、ウクライナ政府が自国のアーティストたちにいかなるロシアの作品の上演も禁止したことに関係したものだと記されている。
ポータルサイトTriest Primaは、ウクライナ・クラシック・バレエ団のヨーロッパツアーのディレクター、ナタリヤ・イオルダノヴァの言葉を引用している。「芸術、音楽、文化に政治が介入し、私たちや他のアーティストたちがロシアの作品を上演することを禁止しました。私たちに与えられた状況は大変辛く、痛みを伴っています。大変残念ですが、イタリアでのチャイコフスキーの『白鳥の湖』は、これ以上の上演を中止せざるありません」。


4月8日

19.00.
ゴールデン・マスク賞演劇祭は、ロシア文化省がルガンスク共和国、ドネツク共和国からの避難民支援のために企画した慈善イベント「オープン・カーテン」に加わる。これについて演劇祭はSNSで発表した。イベントに参加する最初のゴールデン・マスク演劇祭の演目は、カザン青年観客劇場の『僕の村は戦場だった』(アントン・フョードロフ演出)。これは、アンドレイ・タルコフスキーの同名映画に基づいた作品で「戦争への静かなる追憶と、時間と記憶についての心からの対話」である。上演前にゴールデン・マスク賞演劇祭総裁のイーゴリ・コストレフスキーは観客に対して以下のように述べた。「慈悲と寄り添いーーこれが私たちの文化と芸術の本質的価値です。困難を理解すること、これは私たち全員が共有すべきものです。そのため、私たちの義務は、いま家から遠く離れ、大変な状況にあるすべての人々を支えることなのです。今夜〔の上演〕が私たちに団結を感じさせ、こうした人々への支援を表明する一助となることを心より願っています」。
『僕の村は戦場だった』のチケットのうち40枚は「ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国からの避難民」の為のキャンペーン企画者に渡された。ゴールデン・マスク賞ディレクターのマリヤ・レビャキナによれば、4月12日に上演されるエカテリンブルクの音楽コメディ劇場による『Lend Me a Tenor』(演出アントン・ムジカンツキー)も同イベントに参加する。この作品では62枚のチケットが配布される。
「オープン・カーテン」キャンペーンは4月2日に始まった。ボリショイ劇場の『スパルタクス』の収入はウクライナで犠牲になった軍人の家族の支援のために寄付された。この活動にはヴァフタンゴフ劇場、マールイ・ドラマ劇場/ヨーロッパ劇場、アレクサンドリンスキー劇場、サチリコン劇場、ロシア・アカデミー青年劇場、モスクワ芸術座、ボリショイ・ドラマ劇場、ネイションズ劇場が参加する。

11.00.
劇場ファサードに特別作戦のシンボルを掲げた劇場に、トルストイ記念ブリャンスク・ドラマ劇場、ウドムルト共和国チャイコフスキー記念オペラ・バレエ劇場、オフロプコフ記念イルクーツク・アカデミー・ドラマ劇場、カルーガ州立ドラマ劇場、プーシキン記念クルスク・ドラマ劇場、アムトバエフ記念メンゼリスク・タタルスタン・ドラマ劇場、オイウンスキー記念サハ・アカデミー劇場、チンチュリン記念タタルスタン・ドラマ・コメディ劇場、ウリヤノフスク州立ドラマ劇場が加わった。

7.00.
4月29日にオムスク国立ドラマ劇場が慈善作品『クレチンスキーの結婚』(アレクサンドル・クジン演出)を上演。「この作品のチケット売り上げは、全ロシア非政府組織「ロシア赤十字社」オムスク地方支部に寄付されます。ドンバスからロシアへの移住者、避難者の援助のためです」と劇場の広報部は伝えている。

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第6週

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第6週

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第6週

Театр.誌原文(第6週)

(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)

▶︎公開:4月9日23:59
▶︎更新:4月17日16:00


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。



4月6日

14.00.
現在、数十の国公立の文化施設が建物にバナーを掲示し、特別作戦を支持するアクションに参加している。そうした劇場には、とくに、ヴォロネジ国立オペラ・バレエ劇場、コリツォフ記念ヴォロネジ国立ドラマ劇場、ロモノソフ記念アルハンゲリスク・ドラマ劇場、トムスキー・ドラマ劇場、カチャロフ記念カザン・ボリショイ・ドラマ劇場、サマラ・オペラ・バレエ劇場がある。これ以前にナウム・オレロフ記念チェリャビンスク・ドラマ劇場とホヴォロストフスキー記念クラスノヤルスク国立オペラ・バレエ劇場が劇場ファサードにZの文字を掲げた事が明らかになっている。

10.00.
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団はオデッサ・アカデミー・オペラ劇場での出演を取りやめ。楽団のウェブサイトで発表された。5月1日のコンサートは、同楽団の140周年を記念するものだった。会場はラトヴィアのリエパーヤにあるコンサートホール「ボリショイ・ヤンタリ〔大きな琥珀〕」に変更された。


4月5日

18.00.
劇作家のアーシャ・ヴォロシナは、ナウム・オルロフ記念チェリャビンスク・ドラマ劇場に対し、劇場ファサードにZの断幕が設置されたことを理由に、彼女の名前を『外套』(ゴーゴリ原作、演出家はデニス・フスニヤロフ)のポスターから削除するよう自身のSNS投稿で要求した。


4月4日

18.00.
モスクワのロシア現代史博物館で、企画展『NATO、非道の年代誌』が、4月24日まで北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization, NATO)の発足記念日に合わせて開催される。これは同博物館内で唯一の無料展である。(現在、館内では5つの展示が行われており、それぞれのチケット価格は150〜500ルーブル)
博物館のウェブサイトでは催事について次のように記されている。「本展は、NATO加盟国の平和的なレトリックと同機構による実際の政策の非道的内容との矛盾に焦点を当てたものです。これらの矛盾は20世紀半ばから今日に至るまでの世界各地の軍事衝突に現れています。特に注目すべきはウクライナでの特別軍事作戦に関する展示区画にあるロシア国防省から提供されたトロフィーです」
企画展ではロシア現代史博物館所蔵品のほか、ロシア連邦中央軍事博物館、ロシア歴史協会、歴史的公園協会「ロシアーーわが歴史」、TASS通信社、「ロシア・トゥデイ」〔ニュース局RT〕の資料、写真、工芸品が展示される。

13.28.
ホヴォロストフスキー記念クラスノヤルスク国立オペラ・バレエ劇場が、ファサードにZの文字の形で巨大な断幕を設置。公開されたビデオコメントで劇場ディレクターのスヴェトラナ・グジーは、Zを「信念と希望の堂々たる象徴」であるとし、特に、「ここ数日、ロシア全国で多くの文化施設のファサードにZの文字が掲げられています。この文字には「勝利のために〔Zа победу〕」という意図が隠されているのです。〈中略〉私たち文化従事者は、わが国の大統領の立場とロシア軍の行動を支持することを表明しているのです」と述べた。
先日には、同様の断幕がモスクワのオレグ・タバコフ劇場(在スハレフスカヤ広場)に劇場芸術監督のヴラジミル・マシコフの主導で掲げられている。
https://vk.com/video-89881522_456239764

3.06.
連邦議会経済政策委員会の委員長アンドレイ・クテポフは、契約者が非友好国の人間だった場合、映画、アニメの作中音楽の著作権料の支払いを一時停止することを提案。この発案は、ロシアの映画館の支援プロジェクトの一部であり、このプロジェクトでは制裁期間および国外映画の上映中止期間中の家賃と光熱費の支払いを免除することも予定されている。


4月3日

23.24.
南ドイツ新聞〔Süddeutsche Zeitung〕は、ロシア人振付家のイーゴリ・ゼレンスキーが2016年から就いていたバイエルン国立バレエ団芸術監督の職を、4月4日(日)を以て退任すると報せる。同紙はゼレンスキーの発言を引用し、「バレエ団の指揮とは両立できない、私の全神経と時間を必要とする」家族および個人の事情により致し方のないものであったと伝えた。

22.49.
ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵のエドガー・ドガの絵画『ロシアの踊り子たち』が『ウクライナの踊り子たち』に改名された。改名の主唱者となったのは、彼女自身のSNSによれば、ウクライナ人アーティストのマリアム・ナイエムである。彼女はドガのパステル画『ロシアの踊り子たち』(1899)を所蔵する世界の主要美術館に依頼した。

19.00.
ローザンヌの国際バレエコンクールはワガノワ記念ロシアバレエアカデミーの生徒の参加を受け入れない。
学長のニコライ・ツィスカリゼに宛てられたコンクールの公式文書には次のように書かれている。「遺憾ながら、ローザンヌ賞はロシア政府と公的な関係を維持する機関との関係を当面停止することを決定しました。これはワガノワ・バレエ・アカデミーに直接関係することです。政治的と関係がない限り、以前のようにあらゆる国籍の若いダンサーたちを私たちの予選、セミナー、そしてコンクールに招待します。アーティストたちもまた、紛争の犠牲者です。平和が勝利することを、強く願っています」。

14.32.
マリウポリでリトアニア人のドキュメンタリー映画監督、マンタス・クヴェダラヴィチュスが亡くなった。彼の同業者で、先日終了させられたArtdocfest映画祭主催者の映画監督ヴィタリー・マンスキーがSNSで公表した。映画『バルザフ』と『マリウポリス』の作者であるマンタス・クヴェダラヴィチュスはベルリン国際映画祭に二度参加し、彼の劇映画デビュー作である『パルテノン』はヴェネツィア国際映画祭で上映された。45歳だった。


4月2日

19.34.
本日、4月2日にボリショイ劇場でバレエ『スパルタクス』がロシア文化省発案の「オープン・カーテン」というアクションの幕開けとして上演された。同企画の目的は「軍を支援し、ドンバスからの避難民を支援しているロシアの観客のサポート」である。「オープン・カーテン」プロジェクトでは、ロシアの劇場(一覧はまだ発表されていない)が若手、ボランティア、ベテラン組織のメンバーや子供の多い家庭、またドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の住民のために作品を上演する。ロシアのボリショイ劇場はこのアクションの一環として、4月にドネツク、ルガンスク、そしてウクライナからの避難民たちを『ドン・キホーテ』に招待する。これについて、劇場総裁ヴラジミル・ウリンは報道陣にコメント。TASS通信によると、ボリショイ劇場は「バレエ『スパルタクス』の収入はウクライナでの特別作戦の犠牲者家族に寄付」される。


4月1日

23.30.
〔国際芸術祭〕オランダ・フェスティバル2022が、2022年6月のアムステルダムにおけるジュリアン・ローズフェルトのインスタレーション作品《Euphoria》の中止を公表。このマルチジャンル・プロジェクトのワールドプレミア公演はオランダ・フェスティバルの75周年記念プログラムの一つだった。ベルリン在住のローズフェルトは近年、キエフのウクライナ人撮影チームと共にプロジェクトを手がけていた。
以下のように発表された。「現在の深刻な悲劇的状況は、プロジェクトの継続を許しませんでした。インスタレーション作品は膨大な準備が必要で、6月までには間に合いません。ウクライナでの出来事の少し前に撮影は中断されました。2023年のオランダ・フェスティバルで《Euphoria》の発表を目指します」。
《Euphoria》は現代社会における抑えがたい消費についてのマルチジャンル・プロジェクトである。当初の構想では、アムステルダムの中央市場を1時間半歩き回り、ビデオ・インスタレーションの要素を取り入れたパフォーマンスを行なうものだった。プロジェクトは17日間にわたって連日上演される予定だった。《Euphoria》には、俳優、ダンサー、150名から成るブルックリン青年合唱団、国際的に有名なジャズドラマー(テリ・リン・キャリントン、スティーヴ・ガッドも含まれていた)からなる国際パフォーマーチームが参加していた。
オランダ・フェスティバル2022は6月3日から26日にかけてアムステルダムで開催され、9本の世界初演作品と10本のオランダ初演作品を含む100本以上の作品が上演される。

18.30. 
〔リトアニア人女優の〕インガボルガ・ダプクナイテがロシアを離れた。この決断について同女優はリトアニアのテレビ番組LRT.ltのインタビューで述べた。

16.30.
下院議長のヴャチェスラフ・ヴォロジンは、ウクライナにおけるロシアの行動を批判した、公的資金が用いられている文化、保健等の分野における各組織の責任者らの退任を要求。国会では各大臣がその責任を持つ、と彼は述べた。
「国会はこの問題を取り下げない。国家、ひいては国民の福祉を担い、それを裏切った者たちは、文化・教育・保健など分野の公的機関における責任者という職務からたち去るべきだ」と、ヴォロジンは自身のテレグラムチャンネルで述べた。

13.00.
Artdocfest映画祭のディレクターが、3月31日から4月7日にモスクワで行なわれる予定だったフェスティバルの中止について発言。3月31日、映画監督で映画祭Artdocfest主催者のヴィタリー・マンスキーは、オクチャブリ映画館の付近で開会式前に何者かに赤い塗料をかけられた。これより前、映画館では、地雷を設置したとの電話を受けて、避難勧告が出されていた。このような理由で、Artdocfest映画祭のオープニングは妨害された。
メッセージでは次のように述べられている。「今年、プログラムからは現実の問題に関する映画は実質的にすべて外されました。映画祭のトレーラーや印刷物までも検閲されました。つまりは、オープニングの日までにフェスティバルの全てのプログラムがまるごと検閲されたという訳です。このように、フェスティバルはオープニングを迎える前に破壊されました。そして3月31日にはオープニングの開催がいずれにせよ妨害されたのです。
いまとなっては、フェスティバルの中止が建物の爆破予告の結果なのか、映画界への体制の圧力の結果なのかは重要ではありません。ロシアで生じていることの総体によって、フェスティバルは破壊されたのです。この間の出来事で、私たちがロシアでArtdocfest映画祭を守るために受け入れた条件は無意味だったと確信しました」。

12.30. 
レオニド・ロベルマン〔下記作品プロデューサー〕は本誌に、3月25日から27日のモスクワ博物館におけるドミトリー・クルィモフ演出『ボリス』を中止したことについてコメント。
「モスクワ博物館での上演が〔今後〕あるかどうかわかりませんが、他会場では、私たちが決めさえすれば、必ず実施されます。モスクワ博物館は3月の公演をたしかに中止し、会場を別のイベントに使うことにしたのです。あそこは国家機関であり、誰かに従属しています。会場が決まり次第、公演を行います」。

11.00.
2013年にロシア国籍を取得したフランス人俳優、ジェラール・ドパルデューがウクライナでの軍事行動を非難。同俳優はAFP通信に対し、パリで行われる3日間のイベントの収入を全てウクライナ人被害者救済の基金に寄付すると発言した。

00.30. 
メトロポリタン歌劇場は今後アンナ・ネトレプコとは協働しない。これについて、劇場ディレクターのピーター・ゲルブはニューヨーク・タイムズのインタビューに対して次のように述べている。「私たちは立場を変えるつもりはありません。アンナがプーチンと長期的に完全に距離をおいたことを示せば、話し合うことができるでしょう」。


3月31日

21.30.
映画監督で、映画祭Artdocfestの主催者であるヴィタリー・マンスキーが、オクチャブリ映画館の近くで開会式前に何者かに赤い塗料をかけられる。ロシア通信社(RIA)ノーヴォスチによれば、これ以前に映画館では避難勧告が出されていた。このように、Artdocfest映画祭のオープニングは妨害された。

19.00. 
ディズニーは、4月7日からロシアの全ての映画館での作品貸出を停止する。映画配給者会報〔Бюллетень Кинопрокатчиков, БК〕が、これに関して独自の情報源をもとに報じている。БКはまた、映画館チェーン「カロ」ではロシア人のビデオブロガー〔Youtubeなどで映像を作り公開している人、Vlogger〕による映像の上映を始めた。4月4日にはアレクサンドル・グドコフとガリク・ハルラモフによるバラエティーショー「チキンカレーの地下室」のプレミア上映が行われる。さらに、来場者たちは春にはロシアの映画館で『ブーマー』と『ブーマー2』(監督ピョートル・ブスロフ、それぞれ2003年、2006年に公開。〔大人気を博したロシアのギャング映画〕)を見ることができる。

18.45.
ゴールデン・マスク賞の審査員は、ドミトリー・ベリャヌシキン演出、イヴァン・ヴェリカノフ指揮の『フィガロの結婚』の審査のため、プーシキン記念ニジニ・ノヴゴロド・オペラ・バレエ劇場に特別派遣された。イヴァン・ヴェリカノフは、彼の公での発言を理由にモスクワのノーヴァヤ・オペラ劇場でのゴールデン・マスク賞の出演を拒否されている。

18.30.
ノヴォシビルスク・バレエ・オペラ国立劇場が6月2日に予定されていたアンナ・ネトレプコのコンサートをキャンセル。劇場のサイトは、これに関して次のように公表。
「昨日、同アーティストは我が国の政府の行為を批判する声明を公開しました。ヨーロッパに住み、ヨーロッパの舞台に出演することは、彼女にとって祖国の運命よりも大事だということです。いまは、より快適な生活のために信念を放棄して良い時ではありません。いまは選択をすべき時なのです」。

16.30.
4月に開催予定だった国際学芸文学市(ярмарка интеллектуальной литературы)『non/fictio№24』が2022年12月に持ち越された。
〔本の見本市の〕公式のメッセージでは「現在、紙不足、印刷所への補充品や消耗品、印刷期間の増大、物流、金利や融資利率の問題、その他の組織的な問題により、製本工業全体が深刻な困難に直面しています。同様に、国外作家たちの本の版権取下げに関する問題も、多くのロシア人出版者や彼らの国外の同僚たちが春の国際学芸文学市『non/fictio№24』への参加を断念しなければならなかった原因となりました」。

15.00.
ロシア人オペラ歌手、アンナ・ネトレプコがウクライナ領におけるロシアの行動への非難を表明。
弁護士のクリスティアン・シェルツを通じて水曜日に伝えられたその声明によると、ネトレプコは「このこと(特別作戦ーーテアトル誌補足)による犠牲者とその家族に関する彼女の考え」を伝えている。同時に彼女自身は「政党のメンバー」でも、「ロシアの指導者の誰かと結びついた」人間でもなく、現職のロシア国家の長であるウラジミル・プーチンとは「人生で数回しかあったことがない」と言明している。この声明は彼女のSNSに英語で公開された。

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第5週

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第5週

На фото – сцена из спектакля “Считалка” © Александр Куликов

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。
訳者による割注は〔〕で記している。
戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。
人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第5週

Театр.誌原文(第5週)

(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)

▶︎公開:4月3日14:50
▶︎更新:4月5日20:59


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。



3月30日

20.00.
演出家のキリル・セレブレンニコフはロシアでの罪科が取り下げられた後、パリへと移動。フランス人映画学者ジョエル・シャプロンが自身のSNSでこれを報せた。
「今日、3月29日に私がバスティーユ広場で撮った写真です」と彼は自身のページに書き、セレブレンニコフのTシャツに「テレビの電源は切っている」と書かれたTシャツを着たセレブレンニコフ の写真を添えて投稿した。

17.40. 
文化創造大統領基金は「自身の愛国心と国への忠誠」ゆえに制裁を加えられた文化関係者の支援に10億ルーブルを支出。ロシア連邦大統領府副長官のセルゲイ・キリエンコが記者団に述べた。これらの資金は「ロシアの文化的アイデンティティおよび伝統的な精神的道徳の価値と結びついた文化プロジェクト支援のため」に使われる、と彼は述べた(タス通信)。分配の申請は4月から5月に検討されている。

17.00.
チュルパン・ハマトヴァはソブレメンニク劇場との労働関係を自ら希望して打ち切った。これについて同劇場ディレクターのタチヤナ・バラノヴァがロシア通信社(RIA)に語った。

現在、チュルパン・ハマトヴァはソブレメンニク劇場において『朝晩』(「彼女」役、演出はヴラジミル・ヴァルナヴァ)と『敵、ある愛の物語』(マーシャ役、演出はエヴゲニー・アリエ)に出演している。
これ以前、チュルパン・ハマトヴァはエカテリナ・ゴルデエヴァからのインタビューで国を離れ、ラトビアに出たと語っていた。3月21日にはラトヴィア人演出家アルヴィス・ヘルマニスが彼が主宰する新リガ劇場で演じるよう声をかけている。


3月29日

15.30.
モスクワのオレグ・タバコフ劇場の屋舎に、巨大なZの文字を掲げることが決定される。設置の様子を撮影した動画をジャーナリストのロマン・スペルがSNSに投稿。後に〔同劇場〕芸術監督のヴラジミル・マシコフは国営放送で、Zの設置について説明した。「本日、私たちの劇場の屋舎に、母国、わが軍、大統領、ナチストやバンデロフツィ〔ウクライナ民族主義の一つバンデラ主義者を指す〕なき子どもたちの生活を支持するため、このシンボルを掲げた」。マシコフは特別作戦の参加者たちに「私たちはあなたがた〔の帰り〕を待ち望んでいます。あなたたちを本当に誇りに思います」とも述べた。
 https://vk.com/video-164944669_456239711 (設置映像、本誌VKから)

14.24.
トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の団員たちが、同オーケストラの音楽監督、主席指揮者だったトゥガン・ソヒエフを支持する声明を発表。3月頭、トゥールーズ市はソヒエフに、ロシアがウクライナで行っている軍事作戦に対する自身の立ち位置を、公に明らかにするように求めた。この要求への応答で、トゥガン・ソヒエフはフランスの音楽家・ロシアの音楽家の狭間でこの選択をすることはできないため、モスクワのボリショイ劇場音楽監督と首席指揮者およびトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団音楽監督を辞任することに決めたと述べた。

13:45.
パリ郊外のアルフォールヴィルにあるThetre Studioでアントン・チェーホフのテキストを題材にしたマラソン上演が行われている。3か月間にわたって、劇場ではロシアの文豪の作品15本が上演される。このフェスティバルは、フランスで40年以上チェーホフを上演し続けているフランス人演出家、俳優のクリスチャン ・ベネデッティが企画した。


3月28日

11.30.
演出家のセルゲイ・レヴィツキーが「勤務調査を行なうため」、東シベリア文化国立大学の職を一時的に離任させられた。
学長のエレナ・ペロヴァが署名した指示書によると、調査の理由は「SNS上でのロシア連邦に対する彼のネガティブな発言」だった。
「今日、授業がある予定だったので大学にいった。人事課に呼び出され、このような〔投稿には画像添付あり〕文書に署名をするよう言われた。長いこと写真を撮らせてもらえなかった。要は、この調査が終わるまでの給与補償もなく離任させられたということだ。学生の元へ行き、このことを話すと、彼らは泣いた。学科長が来て、学生たちにこれは一時的な離任であることを告げつつも、私に仕事への感謝を述べ、それが別れの挨拶となった」とレヴィツキーは自身のSNSページでそのときの状況を伝えている。
なお、セルゲイ・レヴィツキーは3月22日にブリヤート共和国文化大臣から、ベストゥジェフ記念ロシア国立ドラマ劇場(在ウラン・ウデ)の芸術監督を解任されている。


3月27日

20:00.
世界演劇デーを記念して、ベルリンのドイツ劇場(Deutsches Theater)がウクライナのための特別アクションを実施。パヴェル・アリエ、アナスタシヤ・コソディ、エヴゲニヤ・ベラルセツらウクライナ作家の作品のリーディング公演や、キエフの劇団Pro English Theatreの作品『新世界秩序』(ハロルド・ピンター)の映像上演、マリナ・シュバルト、サシャ・ヂャリシェンコ、タチヤナ・ナドリンスカヤなどのアーティストが参加するコンサートなどがプログラムにはいっている。


3月26日

17:00.
バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団とテオドール・クルレンツィスは、3月27日にはじまる春のヨーロッパツアーを前に共同声明を発表。
楽団の公式サイトの声明では、ロシアとウクライナへの停戦呼びかけとして、ウクライナ・ドイツ・ロシアに関連するプログラムが瞬く間に合意されたと述べられている。当初予定されていたマルコ・ニコディエヴィチとヨハン・ブラームスの楽曲の代わりに、オレクサンドル・シェチンスキー、ヨルグ・ヴィトマン、ドミトリー・ショスタコヴィチの楽曲が演奏される。
テオドール・クルレンツィスとオーケストラの楽団運営部は、彼らの音楽的協働は共通の価値と信念の上に成り立っていることを確認した。「指揮者とバーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団の音楽家たちは、平和への共通の呼びかけをはっきりと支持します。楽団は首席指揮者にこれ以上の声明やロシアでの芸術活動の拒否を期待していません」
また、バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団ディレクターのカイ・グニフケは次のように述べている。「私たちは、〈中略〉自らの家を失い、生きることに不安を抱いている人々との連帯を表明します。しかし私たちはロシアで生活し、働いている芸術家たちを一律に非難すること、彼らとの協力を機械的に断ち切ることはできません」
テオドール・クルレンツィスが指揮するバーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団のコンサートは、3月27日にケルン、3月29日にバルセロナ、3月30日にマドリード、4月1日にドルトムント、4月2日にハンブルク、4月4日にウィーン、4月6日にフライブルク、4月7日と8日にシュトゥットガルトで公演予定。


3月25日

20:30.
大統領賞芸術・文化部門受賞者らとの会合でヴラジミル・プーチンがマリインスキー劇場とボリショイ劇場の一括管理の構想に関して発言。
大統領によると、革命前までロシアにあった帝室劇場管理局がこうした提携の例になる。彼はまた、マリインスキー劇場とボリショイ劇場の統合はまだ最終的な決定ではないと述べた。
ヴァレリー・ゲルギエフはウクライナの軍事行動に対する国外の反応が最初に向けられた人物の一人である。2月25日にニューヨークのカーネギー・ホールはコンサートへのゲルギエフの出演を拒否。3月1日にヴァレリー・ゲルギエフはミュンヘン ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者と芸術監督を解任されている。

13:00.
ベルギー王立劇場(モネ劇場)はロシア作品の拒否をしないと告知。ハンガリー人演出家ダヴィッド・マルトン演出のチャイコフスキー『スペードの女王』のプレミア上演で幕をあける次シーズンのプログラムは変更しない。また上演予定には、チャイコフスキー『エヴゲニー・オネーギン』、ショスタコヴィチ『鼻』も含まれている。劇場ディレクターのペーター・ドゥ・カルウェによれば「私たちは芸術に従事するためにここにいるのです。ロシア作品のレパートリーを禁止することはできないし、つくり続け、上演し続けなければならない」。


3月24日

21:00.
夏の芸術祭「アクセス・ポイント」がSNSで中止を通知。

15:20. 
コミ・ペルミャツキ劇場(クディムカル、ペルミ州)の俳優で、テレビドラマシリーズ「テリトリア」で知られるクセニヤ・オチノヴァが3月24日朝に警察に拘束され、現地時間の17時(モスクワ時間の15時)に釈放された。劇場は夜のリハーサルで彼女に会えることを願っている、と発表。ペルミのマスメディアによると、前日、同劇場主任演出家のユリヤ・べリャエヴァもロシア軍の信用失墜の罪で拘束された。彼女はリハーサル中に連行され、最初は地方分署で、その後ペルミ州署で取り調べを受けた。数時間の尋問後、ベリャエヴァは解放され、劇場に戻された。演出家が拘束された理由はVKontacte〔ロシアのSNSサービス〕の個人ページへの投稿だった。