凡例
タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。
訳者による割注は〔〕で記している。
戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。
人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。
ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第7週
Театр.誌原文(第7週)
(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)
▶︎公開:4月22日01:30
▶︎更新:4月26日00:41
2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。
*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。
4月13日
22.29.
ミュージック・ライフ誌〔Музыкальная жизнь〕によると、文化会館「ラススヴェト〔夜明け〕」で行なわれたピアニストのアレクセイ・リュビモフと歌手ヤナ・イヴァニロヴァのコンサートに警察が来て、建物に爆破予告がされたと伝えた。しかし、これによって音楽家がシューベルトの即興曲の演奏を中断することはなかった。観客も逃げ出さなかった。この晩のプログラムにはウクライナの現代作曲家ヴァレンチン・シリヴェストロフの連作歌曲《ステップ》も含まれていた。
https://vk.com/video-164944669_456239714
15.00.
ムヌシンスク・ドラマ劇場がウクライナでの特別作戦を支持するビデオ「ZV」を公開。
14.00.
ノヴォシビルスク州立人形劇場がロシア連邦大統領とロシア軍を支持するビデオを公開。
11.00.
英露オペラ・バレエ・チャリティ基金(Mariinsky Theatre Trust)が活動を停止。ヴァレリー・ゲルギエフによって30年前に設立された同組織は、イギリスにおけるロシアのバレエ・舞台作品の発展のための資金運用を担っていた。基金のサイトには「マリインスキー劇場の基金は閉鎖しました」と掲載されており、理由の説明は一切ない。
4月12日
10.00.
ドラマ芸術学院と統合されたメイエルホリド・センターから三人の職員が職を辞したことが本日明らかになった。マーケティング部長のオレグ・ソコロフ、マーケティング部マネージャーのソファ・クルグリコヴァ、PRマネージャーのヴァレリヤ・ゴルベヴァは、統合された劇場のディレクターであるオリガ・ソコロヴァとの方針の不一致による辞職に関して、声明を発表。彼らは声明文をSNS上で公開した。
メイエルホリド・センターは、エレナ・コヴァリスカヤがウクライナでの軍事行動開始への抗議としてディレクターの職を辞し、芸術監督のドミトリー・ヴォルコストレロフが理由の説明なく解雇された後、3月1日にドラマ芸術学院に統合されていた。
4月11日
20.00.
ウィーン・コンサートハウスにおけるテオドール・クルレンツィス、musicAeterna、ピアニストのアレクサンドル・カントロフのチャリティ・コンサートがキャンセルされた、とSlipped Discが報じた。これは、musicAeternaのスポンサーがVTB銀行〔制裁対象に含まれているロシアのメガバンク〕であることが判明し、在オーストリアウクライナ大使アレクサンドル・シェルバが要求したためである。4月12日のコンサートの全収入は、ウクライナの被害者の救済に充てられる予定だった。同会場におけるチャリティ目的ではない直前の二つのコンサートは予定通り行なわれた。
18.21.
テオドール・クルレンツィスが立ち上げたmusicAeterna合唱団が、4月20日にサンクト・ペテルブルクのドム・ラジオでチャリティ・コンサートを実施することをアナウンス。ヴィタリー・ポロンスキー指揮のもと、合唱団は受難週〔4月10日から4月16日、復活祭前日までの一週間を指す〕に東西のキリスト教の音楽を組み合わせたプログラムを演奏する。チケット売り上げはすべてロシア赤十字社に寄付される。
15.00.
ノヴォシビルスク州文化大臣のナタリヤ・ヤロスラフツェヴァが離職。これについて、4月11日に同州知事が運営会議で発表した。知事によれば、これは彼らの総意である。ヤラスラフツェヴァは2008年から2013年、そして2020年から2022年にかけて在任。ノヴォシビルスクでは最近、3月31日にノヴォシビルスク・バレエ・オペラ国立劇場が、ウクライナでの出来事についての発言を理由にアンナ・ネトレプコのコンサートをキャンセル。3月16日にノヴォシビルスクの第一劇場ディレクターのユリヤ・チュリロヴァが解任。3月12日にノヴォシビルスク青年劇場グローブスが他劇場と同様、イヴァン・ヴィルィパエフの作品の直近の上演をキャンセル。3月6日にトマス・ザンデルリングがノヴォシビルスク交響楽団の芸術監督と主席指揮者を退任。
10.00.
演出家のセルゲイ・レヴィツキーが自身のSNSで、ウラン・ウデのロシア内務省支局から召喚状を受け取ったと公表。レヴィツキーは「行政上の法律違反に関する人物」として警察に呼び出されている。先の3月22日にはブリヤート共和国文化省が、セルゲイ・レヴィツキー氏をベストゥジェフ記念ロシア国立ドラマ劇場(在ウラン・ウデ)の芸術監督から解任している。3月28日にレヴィツキー氏は「勤務調査を行なうため」東シベリア文化国立大学の職を一時的に解かれた。4月2日には、演劇批評家協会がセルゲイ・レヴィツキー氏を支持するオープンレターをサイトに公開した。
4月10日
23.00.
ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでローレンス・オリヴィエ賞の授賞式が行なわれた。多くの出席者、受賞者がウクライナ情勢について言及した。また、アルバート・ホールの舞台には、この夜〔ウクライナの〕ヘルソン出身のオペラ歌手クセニヤ・ニコラエヴァが招かれ、ウクライナ国歌を歌った。
4月9日
14.45.
ナポリのベッリーニ劇場はウクライナ・クラシック・バレエ団が出演する『白鳥の湖』の上演中止を発表。同バレエ団は〔4月9日〕現在、イタリア巡業中である。〔イタリアの情報サイト〕Fanpageでは、4月25日は『白鳥の湖』に代わりアダンの『ジゼル』が上演されると伝えられた。TASS通信によれば、ロニーゴとトリエステの劇場でも同様の決定がされた。フェラーラの市立劇場〔Teatro Comunale〕では『白鳥の湖』の代わりに世界の様々なバレエ作品の抜粋が上演される。〔フェラーラの〕劇場サイトで、演目変更の決定は、ウクライナ政府が自国のアーティストたちにいかなるロシアの作品の上演も禁止したことに関係したものだと記されている。
ポータルサイトTriest Primaは、ウクライナ・クラシック・バレエ団のヨーロッパツアーのディレクター、ナタリヤ・イオルダノヴァの言葉を引用している。「芸術、音楽、文化に政治が介入し、私たちや他のアーティストたちがロシアの作品を上演することを禁止しました。私たちに与えられた状況は大変辛く、痛みを伴っています。大変残念ですが、イタリアでのチャイコフスキーの『白鳥の湖』は、これ以上の上演を中止せざるありません」。
4月8日
19.00.
ゴールデン・マスク賞演劇祭は、ロシア文化省がルガンスク共和国、ドネツク共和国からの避難民支援のために企画した慈善イベント「オープン・カーテン」に加わる。これについて演劇祭はSNSで発表した。イベントに参加する最初のゴールデン・マスク演劇祭の演目は、カザン青年観客劇場の『僕の村は戦場だった』(アントン・フョードロフ演出)。これは、アンドレイ・タルコフスキーの同名映画に基づいた作品で「戦争への静かなる追憶と、時間と記憶についての心からの対話」である。上演前にゴールデン・マスク賞演劇祭総裁のイーゴリ・コストレフスキーは観客に対して以下のように述べた。「慈悲と寄り添いーーこれが私たちの文化と芸術の本質的価値です。困難を理解すること、これは私たち全員が共有すべきものです。そのため、私たちの義務は、いま家から遠く離れ、大変な状況にあるすべての人々を支えることなのです。今夜〔の上演〕が私たちに団結を感じさせ、こうした人々への支援を表明する一助となることを心より願っています」。
『僕の村は戦場だった』のチケットのうち40枚は「ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国からの避難民」の為のキャンペーン企画者に渡された。ゴールデン・マスク賞ディレクターのマリヤ・レビャキナによれば、4月12日に上演されるエカテリンブルクの音楽コメディ劇場による『Lend Me a Tenor』(演出アントン・ムジカンツキー)も同イベントに参加する。この作品では62枚のチケットが配布される。
「オープン・カーテン」キャンペーンは4月2日に始まった。ボリショイ劇場の『スパルタクス』の収入はウクライナで犠牲になった軍人の家族の支援のために寄付された。この活動にはヴァフタンゴフ劇場、マールイ・ドラマ劇場/ヨーロッパ劇場、アレクサンドリンスキー劇場、サチリコン劇場、ロシア・アカデミー青年劇場、モスクワ芸術座、ボリショイ・ドラマ劇場、ネイションズ劇場が参加する。
11.00.
劇場ファサードに特別作戦のシンボルを掲げた劇場に、トルストイ記念ブリャンスク・ドラマ劇場、ウドムルト共和国チャイコフスキー記念オペラ・バレエ劇場、オフロプコフ記念イルクーツク・アカデミー・ドラマ劇場、カルーガ州立ドラマ劇場、プーシキン記念クルスク・ドラマ劇場、アムトバエフ記念メンゼリスク・タタルスタン・ドラマ劇場、オイウンスキー記念サハ・アカデミー劇場、チンチュリン記念タタルスタン・ドラマ・コメディ劇場、ウリヤノフスク州立ドラマ劇場が加わった。7.00.
4月29日にオムスク国立ドラマ劇場が慈善作品『クレチンスキーの結婚』(アレクサンドル・クジン演出)を上演。「この作品のチケット売り上げは、全ロシア非政府組織「ロシア赤十字社」オムスク地方支部に寄付されます。ドンバスからロシアへの移住者、避難者の援助のためです」と劇場の広報部は伝えている。
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