現代ロシアのファッション−−FashionWeek RUSSIA

2013年冬に行われたFashionWeek RUSSIA 2014SSのレポートを、チェマダンの友人が寄せてくれました。
クレムリンの横にある『マネージ』という大きな展示会場を舞台に、2013年10月25〜31日にわたって行われたFashionWeekは、日本と同じくメルセデス・ベンツが主催でした。(編集部)

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現代のヴィジュアル文化の現象としてのファッションは、今を生きる人間の抱く問いとその模索を反映している。ファッションは、社会文化的諸コードが置き換えられたものとして、また、社会的な価値総体のあらわれとして捉えることができる。ロシアのファッションの2013年の展開や総括を述べるにあたっては、その前の十年という歴史的コンテクストについて語らざるをえない。90年代までは鉄のカーテンでロシアは閉じられ、お金があっても人々はデザイナーの商品を買うことができなかった。お店にそういうものは置かれていなかったのだ。鉄のカーテンがなくなって、モスクワには世界ブランドのお店がオープンし、そのため、オシャレとは、洋服タンスに高価なブランド製品があることだった。当時のロシアのファッションにおいてロシア人デザイナーの影響はきわめて小さかったが、国際的なブランドへの関心は大きかった。知名度のあるロシア人デザイナーの中ではヴャチェスラフ・ザイツェフが挙げられるが、彼はソヴィエト時代から仕事をはじめ、そのコレクションは現在に至るまでロシアのファッション・ウィークで発表されている。21世紀の初め頃にはすでに、ロシアでは若手デザイナーたちが登場したが、彼らはただ単に同時代の若者のファッションをしっかりとリサーチしていただけでなく、潜在的な購買層の中のどんな欲望がコマーシャル・ベースに載せられるかも理解していた。たとえば、ヴィカ・ガジンスカヤ、アリョーナ・アフマドゥリナ、ユリヤ・カルマノヴィチなどに代表されるそうしたロシア人デザイナーは、すでに国際的な知名度を得ており、彼女たちのコレクション・ラインはロシア国外でも手に入れることができる。
fw3_by Ахмадулинаアフマドゥリナ(photo by Irina Ivannikova)

2013年を総括する際に多くの人が指摘するのは、ロシアの若手デザイナーのコレクションがより面白いものになり、将来性のあるものとなったということだ。たとえば、ロシアのファッション界でよく知られた、ロシア版『ロフィシェル』の編集者エヴェリナ・フロムチェンコは、マリヤ・ゴールベヴァ、オーリャ・シーホヴァ、ヤニーナ・ヴェフテヴァといった名前を挙げている。
fw4 by Голубеваゴールベヴァ(photo by Irina Ivannikova)

ロシアでメジャーなインターネット・ポータルサイトBe-inによれば、2013年のコレクションで素晴らしかったのは、アンドレイ・アルチョーモフ《Walk of Shame》、モードヌィ・ハウス[”FASHION HOUSE”]《タチヤナ・パルフェノヴァ》の《White》ライン、Homo Consommatus、Ria Keburia、Bessarionといったブランドだった。《Walk of Shame》のSSコレクションは、ファッション・ウィークとは別に、現代美術館という通常とは異なる空間で行われたし、また、Homo Consommatusのショーの模様は、グリッチ(デジタル・ノイズ)の効果音と相俟って、カオティックにモンタージュされた映像としてアップされている。

Homo Consommatus Spring Summer 2014 from Homo Consommatus on Vimeo.

有望な若手デザイナーとしてBe-inが推しているのは、LES’ by Lesia Paramonova、Anton Lisin、Natali Leskova、DNK、Turbo Yuliaだ。モスクワファッション・ウィークのレディース・コレクションに関していえば、目についたのは、女性らしいイメージとロマンティックなイメージであり、アヴァンギャルドで実験的なショーでさえ、女性らしさとセクシャルなイメージを強調していた。メンズ・コレクションのほうには、あまり関心が払われていない。このことは端的に、社会における男女の立場や役割に関する考えを反映している。ゲイ・プロパガンダ禁止法の成立で、ロシアのファッションには中性的なものへあからさまなアトリビュートはなくなった。それと同時に明らかなのは、過去への眼差しがなくなっていること、そして、現代ロシアのファッションのイメージの中に、オリジナリティと新機軸とがあらわれていることである。
fw5 by PirosmaniPIROSMANI(photo by Irina Ivannikova)

(文&写真 IRINA IVANNIKOVA)
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