ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)20ヶ月目

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)20ヶ月目

Театр.誌原文(20ヶ月目)

(翻訳:伊藤愉)

▶︎公開:2024年2月22日2:10
▶︎更新:


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。


編集部は週ごとのタイムラインを月ごとのタイムラインに切り替えることに決めた。だが、私たちは近いうちにこうしたタイムラインを公開する必要がまったくなくなることを望んでおり、それを信じている。


10月23日

13:36.
モスクワ市裁判所では演出家ジェーニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの身柄拘束に関するモスクワのハモヴニチェスキー裁判所の判決に対しての控訴審が実施されるはずだった。2023年9月6日に彼女らの拘束は11月4日まで延長された。モスクワ市裁判所のマリヤ・ドヴジェンコ判事は、弁護士のセルゲイ・グルズデフから控訴状への追加資料が本日届き、その写しが審理の参加者たち全員に渡されていないため、審理を10月25日14時に変更することを述べた。
演出家ジェーニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクは、ペトリイチュク作でベルコヴィチが演出した芝居『美しき鷹フィニスト』におけるテロリズムの正当化の罪に問われている。2023年5月5日以降、ベルコヴィチとペトリイチュクは留置所にいて、205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件された。


10月21日

19:30.
リトアニアのポータル・サイトLrytas.ltはリマス・トゥミナスのインタビューを公開。その中で同演出家は10月6日にテルアビブに戻り、10月7日のイスラエル国内におけるハマスの攻撃と戦争勃発ののち、近親者たちの説得やゲシェル劇場の同僚たちの助言にもかかわらず、市内に残ることに決めたと語った。彼は〔エドモンド・〕ロスタンの『シラノ・ド・ベルジュラック』に携わっており、ゲシェル劇場ではリハーサルがほとんど毎日行なわれている。さらに4月末にゴルドーニの『おかしな出来事』の初演を迎えたヴェネチアからの戻ったあと、『シラノ』のリハーサルと並行して、彼は『ファウスト』の改作にも取り組んでいる。同作は彼が2019年に中国で演出したものだが、医師がそうした長距離のフライトを禁止したために、俳優たちのほうが彼の元にやってきたのだった。トゥミナスはまた、エピダウロスから、ほか6人の著名な演出家とともに、同地で2024年にギリシャ古典劇の任意のテキストに基づいた作品をつくるよう招待を受けたことも語った。自身が創設したヴィリニュス小劇場(VMT)を解雇された同演出家は祖国リトアニアでの劇場との協働の可能性についても次のように語った。「ヴィリニュス小劇場の俳優たちは私を恋しがっている、もう一度だけでも仕事をしたいと。まだ〔私が〕戻ってくるのを待ってくれている。しかし私は、自分で作った劇場では不法入国者だというのだ。ドアから締め出されている以上、私も窓によじ登ることはしないだろう。リトアニアのそのほかの劇場は、喜んで私を招いてくれるのだと思うが、彼らもまた現在の政権を恐れている。まあ、いつかは政府も目をさますだろう。もしかしたらアンタナス・スケマ(Антанас Шкема)のテキストに基づいた作品を作ることができるかもしれない。長らくこのことは考えているんだ」。

15:30.
11月18日、陸軍劇場でドンバスでの事件を扱った演劇コンサート『勝利への道』が上演される。この作品もまた文化創造大統領基金(ПФКИ)の助成金によって創作された。創作者は、ロック・グループ「ズヴェロボイ」と演出家ヴラド・マレンコ(エセーニン博物館とモスクワ詩人劇場の芸術監督、第一チャンネル(TV)のMC)である。作品内では、ドンバスや戦争区域を幾度となく訪れているロック・グループの歌に加えて、ルガンスクの詩人エレーナ・ザスラフスカヤの詩がうたわれ、戦争の記録映像が演出に添えられる。出演者はアナスタシヤ・シェフチェンコ(映画女優およびモスクワ・ミュージカル劇場モノトーンの女優)、セルゲイ・ショロフ、ロマン・ソロキン(ヴラド・マレンコのモスクワ詩人劇場の俳優)。

14:30.
10月21日と22日、ゴーリキー記念クリミア・ドラマ劇場で、文化省と文化創造大統領基金(ПФКИ)の支援のもとロシア演劇人同盟が主催した〔戯曲〕コンクール「新しい時代/新しい主人公たち」賞の受賞者および全ロ劇作家協会がロシア国防省と共催で実施したコンクール「ヒーロー 2022年」のファイナリストであるミハイル・ウムノフ作『コール・ライト〔Позывной „Свет“〕』の初演が行なわれる。
劇場のアナウンスでは次のように語られている。「非日常的で、鋭くアクチュアルなテーマを取り上げたこの作品には熱情やスローガンはなく、そこにあるのは深い人間性と身を切るような切実さだ。『コール・ライト』の物語の舞台となるのは、現在のモスクワと特別軍事作戦区域である。主人公である才能ある芸術家アレクセイは、偉大なロシアの歴史に育まれ、心の声に応えて義勇兵となった真の国民である」。
作品の演出家はウクライナ功労芸術家セルゲイ・ユシュク。舞台美術はウクライナ功労美術家のヴラジミル・ノヴィコフである。


10月20日

16:00
「ゴールデン・マスク」は2024年の候補者を発表し、管理機関としての活動を終えた。
専門家会議の活動報告とともに、独立非営利団体「ゴールデン・マスク演劇祭」チームは、管理機関としての活動を完遂したことを発表した。演劇祭チームは、20年にわたるその活動を総括して次のように発表している。「活動期間を通じて、演劇祭はロシア演劇界の客観的な全体像を描き出そうと努めてきました。様々なジャンル、方向性の演劇があり、古典的な演劇や革新的な演劇、幻想的な演劇やドキュメンタリー演劇など、実に様々なものが上演されてきました。「ゴールデン・マスク」賞は、討論や議論の中で生まれてきた独立した専門的評価の結果でした。授賞は議論を呼びましたが、主要な演劇賞の、「プロによるプロの」評価を示す権威と意義を常に保ってきました。
演劇祭は観客や専門家たちにとって、国内の舞台上で生み出されたものの中でもっとも優れたもの、もっとも意義のあるものを目にすることを可能にする幸福な機会でした。それは創造的な力を稼働させる一種の促進剤のようなものでした。重要な動向を汲み上げながら、「ゴールデン・マスク」それ自体が重要な変化の源泉であり原動力となり、首都の劇場にも地方部のカンパニーにも、著名な巨匠にも大胆な革新者たちにも等しく発言権を与えてきました。そしていま独立非営利団体「ゴールデン・マスク演劇祭」チームにとってそうした段階は完遂されました」。
2023年末までロシアの各都市でプログラムは進行し、同プログラムの演目はペルミ、サンクトペテルブルグ、スルグト、チェレポヴェツ、ノヴォクズネツク、ニジニ・タギルの観客が観ることができる。


10月17日

12:00.
10月17日と18日、マヤコフスキー記念ノリリスク・ザポリャルヌィ劇場はプーシキン記念クラスノヤルスク・ドラマ劇場の舞台で、ザハル・プリレピンのテキストを原作とした主任演出家アンナ・ババノヴァの『義勇軍のロマンス〔Ополченский романс〕』を上演する。
ミハイル・ヤロシ=バルスキーは2014年のウクライナにおける軍事行動を描いたプリレピンの二つの本(『義勇軍のロマンス』と『無縁の騒動ではなく〔Не чужая смута〕』)をモチーフとして戯曲を執筆した。「こうすることで描かれている出来事全体のパースペクティヴが明らかになり、ドンバスの義勇軍というのは、たんに死に迫る危険を前にした自然発生的な、本能的な反応なのではなく、国家の滅亡のときにあって自らの運命を主体的に決めることができる歴史的、文化的に必然な民衆の意志であることがわかる」とノリリスク・ザポリャルヌィ劇場のサイトで彼は語っている。
「ファンタスマゴリー」のジャンルにある同作の登場人物はドンバス義勇兵たちであり、実在のモデルに基づいている。「一見彼らはその辺の若者で、「スーパーヒーロー」でも「サイボーグ」でもない……。そして彼らには「生涯輝く後光の免罪符」もない」と作品の紹介文に書かれている。「しかし戦争の過酷な環境は、彼らの運命をつき破り、彼らの本質を変えながらも、大切なもの、すなわち「友のために命をかける」覚悟は残っている……。それゆえ、避けられない事態に直面しても、平和な生活にある多くの喜びを奪われ、友人を失い、多大な精神的負担を追っている彼らは、なお自由な人々であり続け……「純粋で透明なエネルギーを生み出し、人生を楽しげに見つめる」のである」。


10月15日

21:00.
10月22日にデュッセルドルフのMelanchthonkirche教会でアレクサンドル・マノツコフの室内オペラ『創世記、あるいはカバラット・シャバット』がエミリヤ・キヴェレヴィチの演出で初演を迎える。作曲家本人がSNSで発表した。「これは完全に新作で、私はこの作品をここで書きました。タイトルから明らかなように、ヘブライ語の作品です(中略)。
ドイツにいて仕事を続けられていることにとても感謝しています。一年前にここにきてから、私は二つの室内オペラ(どちらもリハーサル中)、二つのドイツ語の連作歌曲(どちらもリハーサル中)、ドイツ語の正教典礼曲を書きました。そのおかげで現在私の音楽はデュッセルドルフで毎週演奏されています
一方で、私のオペラや演奏会用の曲はロシアで、仮に演奏されるとしても、匿名か偽名を用いることになります。まあそれはきわめて適切だと思います。幸せなことに、私の曲はときおりウクライナの音楽家たちも演奏してくれています(この時は本名で演奏されます)。これはとても喜ばしいことですし、いつかこうしたコラボレーションがもっと増えることを願っています」。
オペラの上演は10月22日に非公式の初演として行なわれ、入場は無料。


10月13日

15:30.
モスクワ国際映画祭Karo.Artで10月15日に予定されていたアレクサンドル・ソクーロフ『Сказка(邦題:独裁者たちのとき)』の上映がロシア文化庁によって禁止される。ソクーロフ自身がSNSで伝えた。
「現在、私たちはその根拠を明らかにしようとしている。人生において大きな問題が差し迫っている、まるで私の仕事がことごとく上映禁止にされたソヴィエト時代のように。私の時間は再び止まってしまった。支援を頼んでいるのではない。以前もそうだったように、誰も私を助けることはできないのだから。
どうやら、今後『独裁者たちのとき』の配給が拒否されるようだ。私の映画の上映は祖国で検閲上禁止となる。私が過去に作った映画作品も暗黙のうちにすべて上映禁止となった。私は単に検閲に抗議しているのではない。私が抗議を表明しているのは、作品が自分の国の人々と自由に触れ合うという憲法上の権利が侵害されることに対してだ」。
『独裁者たちのとき』の封切りは2022年8月7日のロカルノ映画祭だった。ロシアでは、2023年6月にペテルブルグの「セフカベリ・ポルト」で開催された映画祭「イントネーションの一例」で上映された。同作品の中では、スターリン、ヒトラー、ムッソリーニ、チャーチル、ナポレオンらが実際のドキュメンタリー映像とアニメーションを用いて描かれている。


10月11日

12:00.
10月13日、パリ市庁舎(L’Hôtel de Ville)でスヴェトラナ・ペトリイチュク作、ジェニャ・ベルコヴィチ演出の『美しき鷹フィニスト』の上演映像の上映が行われる。上演にはフランス語字幕がつく。上映後には作家ドミトリー・グルホフスキー(ロシア法務省が外国エージェントに指定)、演出家・美術家のマーシャ・マケエフ、女優・作家のマーシャ・メリル、女優のヤーナ・トロヤノヴァ、そして『フィニスト』の翻訳者フランソワ・ニコラが参加するディスカッションが予定されている。
2023年5月5日以降、ベルコヴィチとペトリイチュクは留置所にいて、205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件された。2名が拘束された後、戯曲『美しき鷹フィニスト』の朗読と舞台映像の上映が各国で実施されており、フランスではパリとアビニョンで実施されている。

11:10.
ロシア演劇人同盟はHP上で〔戯曲〕コンクール「新しい時代/新しい主人公たち」賞の受賞者を発表した。受賞した劇作家たちは10月12日に演劇人同盟代表のアレクサンドル・カリャーギンから賞を手渡される。
戯曲コンクール「新しい時代/新しい主人公たち」は、2022年11月に演劇人同盟が発表したもの。「(応募作品の)戯曲は、意味付けされ理解することが必要な時代を描き出していること。その時代とは、恐れをしらぬ、勇敢な、我が国を守る真の英雄を産み出すものである。どの時代とは、様々な問題を明るみにだし、人間の存在という主要な問題への直接的な答えを求め、祖国とは何か、愛国主義とは何か、真の人道的な価値とは何か、社会の道徳的な世界秩序とはいかなるものか、といったことに対して正確な定義を求める時代である」。
選考委員は演劇学者のエカテリーナ・モロゾヴァ、マリーナ・チマシェヴァ、ヤロスラフ・セドフ、ヴァジム・シェルバコフ、タチヤナ・ニコリスカヤ(委員長)である。彼らは204の応募作品の中から3つの戯曲を選んだ。第一席はミハイル・ウムノフ作『コール・ライト〔Позывной „Свет“〕』、第二席はエゴル・チェルラク作『いままで、これから、そしていま〔Доныне, после и теперь〕』、第三席はヴァレリヤ・ヤヌィシェヴァ作『砂時計』(演劇人同盟は作者の居住地は明記せず、名前とテキストのタイトルのみ記している)。彼らはそれぞれ10万、5万、3万ルーブルが授与され、戯曲はリーディング上演が行なわれ、「コンクールで受賞した戯曲上演に手を挙げた劇場には、そのための助成金が支払われる」と報じられている。


10月10日

17:00.
「グランド・ツアー」の一環で、ヴァフタンゴフ劇場はミハイル・ツィトリニャク演出『クローフィッシュの叫び(«Крик Лангусты»)』(ユリヤ・ルトベルグとアンドレイ・イリインの二人芝居)でベルヂャンスクとメリトポリ に巡業に向かった。10月12日と13日に上演される。同演出作品は2022年12月にルガンスクでもツアーを実施していた。劇場ディレクターのキリル・クロークはSNS上でマリウポリを通過した際の「ショック」を記している。マリウポリは「まるでアリ塚のようだった。ロシアは街を再生させている。きっと街は以前よりも良くなるに違いない」と。


10月9日

13:20.
プーチン大統領との会談でロシア文化大臣のオリガ・リュビーモヴァは、連邦所属の劇場が参加する「新しい地域を支援する企画」について報告した。「我が国の21の連邦立劇場は新しい地域の10の劇場と協働します。彼らはすでに1500の衣装、舞台美術、小道具、舞台設備を提供しました。4つの新作上演も行なわれています。私たちの誇るべきオーケストラは、120の素晴らしい楽器と200の新しい衣装を提供しました」。本件は、2023年5月に文化省主導で実施された「共通舞台」プロジェクトに関して述べられたものである。
またリュビーモヴァは「マリウポリとルガンスクで140回のサーカス上演」が実施されたと報告し、「これは70,000人以上の動員を記録しました。サーカスを見たことがない子どもたちもいて、私たちはともに喜び合いました。すでに150回ほどのツアーが実施され、50の地域がこのプロジェクトに参加しています。こうした地域が同地を訪れ、数年に亘ってその場所を離れることができなかったカンパニーメンバーたちをツアーに連れていっています」。〔同発表では〕毎年10,000人の子ども達が併合された地域からロシア各地に招待され(今年は、モスクワ、サンクトペテルブルグ、トゥーラ、カルーガ)、その目的地には劇場も含まれる。
そのほか、同大臣は国外にあるロシア劇場の支援についても語っている。「世界の43の国にあるロシア劇場では、ロシアの古典作品がロシア語で演じられています。これは私たちにとって大いなる誇りであり、アブハジア共和国、ベラルーシ、キルギス、タジキスタン、トゥルクメニスタン、ウズベキスタン、南オセチア共和国にいる私たちの同胞を支援する機会もある。私たちはアレクサンドル・セルゲエヴィチ・プーシキンの記念の年を控えており、また今年はアレクサンドル・ニコラエヴィチ・オストロフスキーの生誕200周年ですので、ともに素材を選定しているところです。彼らはより馴染みがあり、より面白い演出ができるものを考えています。今年はすでに15作品が8ヶ国で上演され、2024年には9ヶ国で30作品、その後はさらに増やしていくことを計画しています」。


10月5日

20:00.
ブリュッセルでロシアとヨーロッパの現代芸術における検閲の問題に関する夕べが開催された。そのなかで、スヴェトラナ・ペトリイチュクの『美しき鷹フィニスト』の朗読が行なわれ、スヴェトラナ・ゴンチャロヴァ、アナスタシア・ファインベルグ、マルガリタ・メレテ、アレクサンドラ・ヴォイネロヴィチが演じた(演出はスヴェトラナ・ゴンチャロヴァ)。また創作の自由と文化における禁止に関するディスカッションも実施された。夕べの企画者は、プロジェクト・チームの«The EU Public Diplomacy — Russia»。
演出家のジェーニャ・ベルコヴィチと劇作家のスヴェトラナ・ペトリイチュクは、Пペトリイチュク原作でベルコヴィチが演出した『美しき鷹フィニスト』におけるテロリズムの正当化を罪に問われている。2023年5月5日以降、ベルコヴィチとペトリイチュクは留置所にいて、205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件された。2名が拘束された後、戯曲『美しき鷹フィニスト』の朗読と舞台映像の上映が各国で実施されている。

12:00.
フセヴォロド・リソフスキーが自身の企画「変圧器」の活動を再開し、連作『あるテーマに対する沈黙』を継続することを表明。ロシア出国後の最初の上演となるのは『それは君ではなかった』である。告知文に記されているように、彼は「2022-2023年にロシア語で書かれた、この時代の重要なテーマに関する詩作を黙読する」ことを提案している。
フセヴォロド・リソフスキーは同企画に関して次のように述べている。「今日ロシアの言葉はシュレーディンガーの猫の状態にある。韻と比喩の行間に形作られる言葉が数多くある一方で、その響きが問題となってもいる。国境の片側では、存在しない言葉「戦争(“война”)」に結びつけて摘発され、それを理由に作者たちは疑いようもなく存在している牢獄に収監される。国境のもう片側では、言葉を音として発することがやはり難しい」。
同演出家によれば、ここ最近、「多くの人々にとって、ロシア語での詩の発表も、ロシア語詩の朗読も、問題があることになったようだ。思考と記述の脱植民地化に関する話題はありふれたものとなっている」。しかし同時に、この一年半には逆説的に、しかし期待された形で、詩の雪崩のような、ロシア語詩の土石流のような効果が生み出されている」。
上演には詩人のポリーナ・バルスコヴァとコンスタンチン・シャヴロフスキーが作成したリブレットが付き、そこにはおよそ30人ほどの書き手の作品が収められている。
『それは君ではなかった』の初演は10月12日にトビリシのErtad barで行なわれる。またアルメニアのニュー・アナロジー美術館での上演とパリでの上演も予定されている。パリでは、演出家のヴァシーリー・ベレジンが出演する。
これ以前、フセヴォロド・リソフスキーの作品『あるテーマに対する沈黙』はテアトル・ドク、テアトル・ポスト、そしてカザンのMOÑ劇場で上演されてきた。2023年3月、リソフスキーは公務執行妨害(行政法第19条3項)の罪で二度の15日間の勾留を受けて以降、ロシアを離れざるをえなくなった。その前にもリソフスキーはブレヒトのアンチ・ファシスト劇『第三帝国の恐怖と貧困』に基づいた路上劇を実施したことにより拘束されていた。


10月4日

21:00.
10月15日から19日にThéâtre Nouvelle Génération(リヨン、フランス)の小舞台で、パフォーマンス系参加型展示《考えつかれ(なかっ)た歴史の美術館》が実施される。キュレーターのニキ・パルホモフスカヤとアルチョム・アルセニャンによるこの企画は、「亡命状態にある芸術家たちーーフランスに住まざるをえなかったロシア語話者の反体制派芸術家たちのインタラクティヴな展示物とパフォーマンス」を統合したものと記されている。
同企画は9名の参加者たち(ヴィカ・プリヴァロヴァ、アーシャ・ヴォロシナ、アレクセイ・ナドジャロフ、シャミリ・シャアエフ、アレクサンドラ・ポリジ、ゲオルギー・ボガチョフ、空間構成のエリダル・カルハリョフ、同展示の音響構成クセニヤ・マロッカンスカヤ、ダニイル・コロンケヴィチ)の数ヶ月に及ぶ共同作業の結果である。
重要なのはこの企画が語りの不可能性を結びついた人々の人生の声や表現で満たされていると言うことです」とアルチョム・アルセニャンはSNSでその企画趣旨を説明している。「ここで登場人物となるのは観客であり、彼らは単に観察者や聴講者としてその場にいるのではなく、展示空間が語るナラティヴを拾い集めていく必要があるのです」。



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