ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第4週

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第4週

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第4週

Театр.誌原文(第4週)

(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)

▶︎公開:3月28日15:15
▶︎更新:3月29日19:01


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。



3月23日 

18.09.
サンクト・ペテルブルクのAlma Mater基金の作品『ユディト』は、2022年ゴールデン・マスク賞におけるモスクワ公演を行なわない。演劇祭の公式サイトが公表。ボリス・パヴロヴィチ演出『ユディト』は劇作家KLIM〔ヴラジミル・クリメンコ〕によってウクライナ語で書かれた戯曲に基づいている。
先日も、モスクワでの2022年ゴールデン・マスク賞で、ペテルブルクからの3作品の上演が中止になっていた。コルネリウス・バルトゥス演出のミュージカル『ミス・サイゴン』(サンクトペテルブルク・ミュージカル・コメディ劇場。同作品はゴールデン・マスク賞審査員に向けてペテルブルグで上演される)、アシャ・ヴォロシナヤ脚本でピョートル・シェレシェフスキー〔演出〕とマルィシツキー小劇場制作の『牢獄のデンマーク』、アナトリー・プラウジン演出『ドネツク 第二広場』(ツェフ劇場と「バルチスキー・ドム」フェスティバル劇場実験舞台の共同作品)。キャンセルはペテルブルグの各劇場自身からなされたもので、彼らは「技術的な理由」で上記の作品を上演できないと知らせてきた、と演劇祭側は語っている。

11.57. 
ロシアのオペラ歌手アイダ・ガリフリナは、今後メトロポリタン歌劇場には出演しない。直近の同劇場のプレミア上演で4月2日に予定されていたモーツァルト『フィガロの結婚』では、スザンナ役をガリフリナに代わり中国人歌手のイン・ファンが演じる。ガリフリナは、国際情勢の悪化後、メトロポリタン歌劇場が関係を絶ったロシア人アーティストの中で最後の一人である。


3月22日

19.00.
プラハの国民劇場はチャイコフスキーのオペラ『チェレヴィチキ〔小さな靴〕』の上演を中止。ウクライナで行なわれているロシアの特別作戦と関連して、劇場は「大ロシア帝国の歴史を支持したくはない」と述べた。この決定に関する情報は、3月22日夕刻にチェコのニュースポータルサイトSeznamZpravyに掲載された。

13.00.
ブリヤート共和国の文化大臣は、セルゲイ・レヴィツキーをベストゥジェフ記念ロシア国立ドラマ劇場(在ウラン・ウデ)の芸術監督から理由の説明なしに解任した。これまで同演出家は体制の行動をSNSで繰り返し批判していた。


3月21日

15.45.
ウィーン国立歌劇場はロシア人アーティストを支援し、彼らとの協働を続ける意向を表明。劇場のSNSに投稿された発表では、とりわけ次のように述べられている。「この間、私たちはロシアのオペラ・バレエ出演者やロシアの演出家との交流を断つよう、幾度となく要求されています。私たちはこれらの要求を断固拒否し、出自だけで人々を「良い」「悪い」と分けることに反対します。今日の出来事によって、ただ国籍を理由に才能ある人々が世界の文化的文脈から消えてしまうことなどあってはなりません」。同時に、このメッセージの中でウィーン国立歌劇場はウクライナ人への厚い支援を表明し、ロシア政府のウクライナでの行動を非難している。

13.30.
ラトヴィア人演出家アルヴィス・ヘルマニスはチュルパン・ハマトヴァを、彼が主宰する新リガ劇場の女優になるよう招待。現地メディアは演出家の言葉を引用している。「まもなく彼女は私たちの作品に参加するでしょう。まずは母国語で」。
これ以前には、チュルパン・ハマトヴァが国を去り、ラトヴィアに出ていたことが判明していた。3月の初めには、アルヴィス・ヘルマニスが『シュクシンの物語』のクレジットから自身の名を削除するよう要求している。同作はネイションズ劇場での彼の初めての作品だった(2作品目は『ゴルバチョフ』。両作品でチュルパン・ハマトヴァは主要な役を演じていた)。

11.40.
ケメロヴォ州の記者でテアトル誌の寄稿者でもあるアンドレイ・ノヴァショフがロシア軍に対する「フェイク」の刑事罰に問われ(ロシア連邦法 第207条3項1号)拘束された。ノヴァショフ氏の拘束についての情報はNet Freedoms Project(Сетевые Свободы)が telegram〔SNS〕チャンネルで、ノヴァショフ氏の弁護に当たっているマリナ・ヤキナ弁護士の言葉を引用して発信。現地メディアも同記者の審問について報道している。
Net Freedom Projectによると、ケメロヴォ州予審委員会は、新刑法に照らし合わせた犯罪の内容を、ジャーナリストであるヴィクトリア・イヴレヴァのテキスト「マリウポリ 封鎖」をシェアしたことだとしている。本刑事事件の判決文には(同文書の写真もテレグラムとマスメディアに公開された)、3月5日から現在に至るまで、VKontakte〔ロシアのSNSサービス〕のページでアンドレイ・ノヴァショフは「意図的に、〈中略〉オープンアクセスの場に投稿した。つまり、信用できる情報を装って、特別軍事作戦が該当国内で展開されている間、市民のインフラ設備を破壊し、ウクライナ市民を殲滅するためにロシア軍が用いられているという、明らかに虚偽の情報を拡散した」と記されている。
予審判事はノヴァショフ氏に対して「軍代表者への謝罪」を命令してたが、同記者はこれを拒否しているとNet Freedom Projectは報じた。チアトル誌は本件を引き続き注視していく。


3月20日

21.30.
女優、Podari Zhizn財団創立者のチュルパン・ハマトヴァはロシアから去ったことを認める。エカテリナ・ゴルデエヴァからのインタビューで語った。現在、彼女はラトビアにいる。

15.00.
ジョージア人作家タムタ・メラシヴィリは独立系演劇プロジェクト『ソソの娘たち』との協働を解消。同プロジェクトは、ジョージア・アブハジア紛争を描いた彼女の作品『数え歌(シタルカ)』を脚色したものだった。演出家のジェニャ・ベルコヴィチが自身のSNSでこのことに関して公表。最終公演は3月22日と23日にバヤルスキエ・パラトィで行なわれる。『数え歌』はテアトル誌の優秀反戦作品に選出されたことも参照。


3月19日

8.24.
ボリショイ劇場は、ニューヨークのメトロポリタン・オペラと共同制作した『サロメ』と『ローエングリン』をレパートリーに残す。これについてTASS通信が劇場総支配人のヴラジミル・ウリンの言葉を引用して報道。
『ローエングリン』の4月公演は、セカンド・キャストを用意するために、他の作品に変更された。オペラで指揮棒を振る予定だったエヴァン・ロジステルの代わりは、アメリカ人指揮者のアシスタントだったアントン・グリシャニンが務める。4月の公演後、舞台装置はアメリカに送られる予定だったが、メトロポリタン・オペラが協働を拒否したのち、ロシアで保管することが決まった。『ローエングリン』の公演は2022年6月から7月に再開予定。
ボリショイ劇場ではサイモン・マクバーニー(英国)演出のオペラ『ホヴァーンシチナ』と振付家アレクセイ・ラトマンスキー演出のバレエ『フーガの技法』のプレミア上演が延期されている。

9.42. 
ノヴォシビルスクのレッド・トーチ・シアターとヴェラ・レドリフ慈善財団は、資金を集めドンパスからの避難者たちに寄付することを発表。このために劇場ホワイエには特製の瓶が設置された。集まった資金は全ロシア非政府組織「ロシア赤十字社」に渡される。


3月18日

19.35.
映画監督のセルゲイ・ロズニツァがロシアの映画祭への参加を理由にウクライナ映画アカデミーから除籍される。
ロズニツァの作品は、フランスのナントで行なわれているロシア映画祭「リヴィウからウラルへ(FESTIVALUNIVERCINÉ ENTRE LVIV ET L’OURAL)」のプログラムに組み込まれていた。ウクライナ映画アカデミーのプレス担当は次のように発言。「セルゲイ・ロズニツァ監督は、自身をコスモポリタン、「世界市民」であると考えていることを一度ならず強調してきました。しかしウクライナが全力で独立を守り抜こうとしている今、一人ひとりのウクライナ人の修辞において主要な概念となるべきは、彼らのナショナル・アイデンティティなのです。ここに、いかなる妥協も中間もありえません。世界の方々には、セルゲイ・ロズニツァ氏をウクライナの文化分野の代表者として認めないようお願いいたします」。

11.00.
ザルツブルグ復活祭音楽祭のディレクター、ニコラウス・バッハラーがオーストリアの新聞Kurierのインタビューで、アンナ・ネトレプコを音楽祭に招待すると発言。「もし個々人に政治的見解の表明を求めるのならば、それは宗教裁判を想起させます。それが許されていいとは思いません!」


3月17日

22.00.
キエフの病院でウクライナ国立歌劇場のアルチョム・ダツィシンが負傷により亡くなった。同僚のタチヤナ・ボロヴィクが自身のSNSで知らせた。アルチョム・ダツィシンは1979年1月26日生まれ。『白鳥の湖』、『くるみ割り人形』、『ジゼル』、『ロミオとジュリエット』などで主要な役を務めた。

20.30.
セルゲイ・ショイグ〔国防相〕が文化大臣オリガ・リュビモヴァに対し「V .A. ゼレンスキーとA. E. ロドニャンスキーをロシア連邦の文化的領域から除外することを審議」するよう要請。書簡の内容は3月17日の公開資料に掲載された。「ロシアのメディア空間の文化面では、ゼレンスキーが参加している映画や番組、アレクサンドル・ロドニャンスキーのプロジェクトが引き続き映し出されているが、それらは国家の指導部が下した決定の実行に寄与するものではない」。

19.19.
ロシア陸軍劇場がロシア軍人を愛国的なビデオクリップで支援。

18.30.
ウクライナ功労芸術家のオクサナ・シヴェツがキエフで亡くなる。1980年から同女優が働いていたキエフ青年劇場のSNSで報じられた。オクサナ・シヴェツが演じた役には、ナターシャ(『三人姉妹』チェーホフ)、エルフ(『風呂』マヤコフスキー)、金髪の女(『良心の独裁者』ミハイル・シャトロフ)、マダム・ジョルジュ(『ひばり』ジャン・アヌイ)がある。

17.00.
ゲオルグ・フリードリヒ・ハース作曲、ロメオ・カステルッチ演出で、ミュンヘンのJa, Maiフェスティバルに参加予定だったオペラ『コマ』のプレミア上演が、2024年に持ち越された。地政学的状況とmusicAeternaオーケストラ〔ペテルブルク〕の参加が不確定のため。楽団の創立者、テオドール・クルレンツィスが同作の音楽監督を務めていた。上演延期の決定にはカステルッチもクルレンツィス自身も同意している、とバイエルン国立歌劇場のインテンダントが発表している(『コマ』はバイエルン国立歌劇場、ミュンヘン・フォルクス・テアター、ミュンヘン・カンマーシュピューレの共同制作)。

14.00.
エルミタージュ美術館館長のミハイル・ピオトロフスキーが世界の美術館館長連盟ビゾ・グループに宛てた書簡を公開。〔ビゾ・グループ(Bizot group)は1992年発足。2002年に「世界の美術館の意義と価値に関する宣言」を発表。ルーヴル美術館、オルセー美術館、メトロポリタン美術館、大英博物館、プラド美術館などが加盟〕
このミハイル・ピオトロフスキーの書簡は、エルミタージュ美術館、プーシキン美術館、クレムリン美術館、トレチヤコフ美術館といったロシアの各美術館館長のビゾ・グループ会員資格の停止のニュースを受けて書かれた。書簡の全文を以下に公開する。
「親愛なるマシューとビゾ・グループ会員の皆様
お手紙ありがとうございます。
ロシアの各美術館も参加した1992年のグループの発足は、国際的なアパルトヘイト克服の重要なシンボルであり、我々の開放性を示すものでした。こうした開放性は、付け加えると、常に国の内外から批判されてきました。今日、この開放性が私たちに背を向けています。その輪は閉じられてしまいました。
私は武力で問題を解決することに反対で、戦争と革命が嫌いです。しかし、この職業は文化の運命と社会における癒しの役割について考えることを必要とします。私は、文化の架け橋が爆破されるのは最後であるべきだと、これまでも述べてきましたし、それを繰り返します。私は冷戦期に私の父やソ連や西側諸国の彼の仲間たちがどのようにそうした架け橋を守り抜いていたかをよく覚えています。今日、私たちがそれらを守れることを証明しなければなりません。
私やロシアの同僚には重要な課題があります。それは、コレクションを保存することであり、そのコレクションの一部は私たちのポリシーである開放性に明確に基づき、国外にあります。国際的な美術館同士の〔コレクションの〕遣取の運命は、概してこの問題がいかに解決されるかにかかっています。そうした遣取を簡便化するために私たちのグループは作られたのですから。私たちが常に友好的に展示品を分かち合ってきたビゾ・グループの同僚たちが理解してくださることを望んでいます。
私たちは「アポカリプス〔ヨハネ黙示録〕」をメインにした、予言のようなデューラーの展示で今年をスタートしました。ヨハネ黙示録の騎士たちは既に私たちと共にいますーー疫病の騎士、戦争の騎士、飢餓の騎士です。しかし私たちは、それが悪魔への決定的な勝利と「新しいエルサレム〔聖書〕」の開門へと続くことを知っています。
エルミタージュであなた方のどなたとでも、オンラインで(オフラインの方が良いですが)お会いできたら嬉しいです」。
エルミタージュのサイトによれば、ビゾ・グループは主要な美術館の館長たちが、展示の遣取の手順と手続きを協議するため定期的に会合する独自のシステムである。同グループは展示品を互いに提供するための規約を策定し、更新している。

9.23.
フランスメディアの情報によると、マリインスキー劇場の若手ダンサーのブラジル人ヴィクトル・カイシェタが劇場を離れ、オランダ国立バレエ団(Dutch National Ballet)に移籍することを決定。マリインスキー劇場の公式サイトにはこの遺跡に関する情報は掲載されていない。

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第3週

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第3週

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。
訳者による割注は〔〕で記している。
戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。
人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第3週

Театр.誌原文(第3週)

(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)

▶︎公開:3月25日18:10
▶︎更新:3月26日00:52、3月27日12:03


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。



3月16日

19:39.
プリマ・バレリーナのオリガ・スミルノヴァが、オランダ国立バレエ団(Dutch National Ballet)に加入するためボリショイ劇場バレエ団を脱退。

14.53.
ウクライナ情勢を受け、ベルリン国際映画祭の主催者らはロシア政府を支持しているロシアの組織、代表団、人物らを映画祭のプログラムから除外する。一方で、同映画祭はその発足理念に基づき、文化作品全てに対するボイコットには反対を表明している。これに関しては、映画祭の公式声明に述べられている。


3月15日

22.00.
ゴールデン・マスク賞でいくつかの上演が中止に。フヴォロストフスキー記念クラスノヤスルク国立バレエ・オペラ劇場が4月に予定していた2作品の上演は自身の劇場で行われるが、モスクワでは上演されない。「残念なことですが、この数週間にクラスノヤルスク-モスクワ間の航空券と貨物輸送の価格が大幅に上がりました。この値上げにより、フヴォロストフスキー記念クラスノヤスルク国立バレエ・オペラ劇場の4月頭のツアーは不可能となってしまいました。〈中略〉クラスノヤルスクには演劇祭の審査員が派遣されます」と演劇祭のSNSで公式アナウンス。セルゲイ・ボブロフ演出のオペラ『ボガティリ〔勇士たち〕』はゴールデン・マスク賞で6部門にノミネート予定、またバレエ『レニングラード・シンフォニー(Lamento/ラクリモーサ)』(演出セルゲイ・ボブロフ、振付オレシャ・アルドニナ/ナタリヤ・ボブロヴァ)は3部門にノミネートされている。
その他、ペテルブルクからも2作品の上演が中止に。演出家ピョートル・シェレシェフスキーとマルィシツキー小劇場によるアシャ・ヴォロシナヤ作『牢獄のデンマーク』(5部門でノミネート)と、コンクールの枠外で上演されるはずだったアナトリー・プラウジン演出『ドネツク 第二広場』(ツェフ劇場と「バルチスキー・ドム」フェスティバル劇場実験舞台の共同作品)をモスクワの観客は見ることができない。〔『ドネツク第二広場』を含めた〕ドキュメンタリー三部作の残りの作品『オデュッセイヤ』とゴールデン・マスク賞で4部門にノミネートされた『ガス・セクター』はスケジュール通りに上演される。

18.00. 
ロシア下院で「文化の意義と価値:社会的関心、専門家の意見、国家の役割」というテーマで文化委員会拡大会議が行なわれた。ドミトリー・ペフツォフ、デニス・マイダノフ、エレナ・ヤムポリスカヤ、アレクサンドル・ショロホフなどが出席。会議参加者の意見によれば、ロシアには「意義と価値の輸入代替化」(ヤムポリスカヤ)が必須であり、これは「より熱心に、より積極的に取り組まれるべき」(ペフツォフ)である。大統領参事官のヴラジミル・トルストイは「自国の文化において西部戦線〔第二次世界大戦の枢軸国側からは東部戦線〕を繰り広げる必要はない」、「大統領には方針があり、我々は大統領のチームとして、彼の方針を支える」とコメントしている。トルストイに続き、ショロポフは「国の安全に関しての問題が生じた場合には、検閲に関する課題は速やかかつ簡潔に解決される」と説明した。文化副大臣のアーラ・マニロヴァはロシア映画産業への追加予算と支援を約束し、2030年までの映画業界発展の構想もできていると述べた。


3月14日

20.09.
イタリアで、ロシア文化の孤立に反対する請願が行なわれる。
TASS通信によれば、オンライン請願の発起人であるイタリアの活動家たちは、ウクライナにおける特殊作戦開始後、イタリアでは「多くのロシア文化の学者や代表者たちの解雇が生じた」と指摘している。現時点で、change.orgの請願に集まった署名は19,000を超える。 
請願書には次のように述べられている。「私たちの懸念は、ある民族、とりわけ文化的に重要な人物たちへの差別などが、長期的に取り返しのつかない結果をもたらしてしまうということです。民族の人間性を否定することは、歴史的に専制主義的政体を形作り、しばしば制御できない暴力をもたらしてきたプロセスです」。

17.30.
パノフ記念アルハンゲリスク青年劇場は、自身が主催者である「ヨーロッパの春」国際舞台芸術祭の開催を、2023年まで延期決定を発表。「今は演劇祭を行なう時機ではない」ため。

11.15.
ウクライナの演出家アンドリー・ジョルダクはインターネット・メディアGordonのインタビューで、ロシアで演出した演劇作品・オペラ作品のクレジットから自身の名を削除すると表明。また彼は「全ての文化的世界」は、ロシアの文化関係者たちと協働してはならないと意見を述べている。


3月13日

15.30.
ボリショイ劇場で、匿名の爆破予告があったことを受け、点検がおこなわれた。
「予告は12時頃に来ました。全ての建物内の点検が終わりましたので、上演の中止はありません」とボリショイ劇場広報部はテアトル誌に語った。
現在、本館ではバレエ『バヤデール』、新館では『サルタン王の物語』、小舞台では『ファルスタッフ、または3つのいたずら』が上演されている。

8.45.
イギリス・オーケストラ協会(Association of British Orchestras)は政治情勢の緊迫化によるレパートリーに変更は加えないとする声明を発表。英国のオーケストラは、引き続きロシア人作曲家の作品を演奏し続ける。
声明の中で同協会は、ロシアの作品は歴史的な音楽的規範の一部であるため、「全面的なボイコット」は支持できないと語った。
イギリス・オーケストラ協会には、イングリッシュ・ナショナル・オペラやロイヤル・オペラ・ハウスを含む、国内のアカデミー団体の大部分が参加している。


3月12日

19.35. 
劇作家のイヴァン・ヴィルィパエフが著作権料を「ウクライナを支援する基金」に寄付すると発表した後、多数の劇場が近日中の同作家の上演を中止。上演演目からヴィルィパエフの作品を消した劇場には、ネイションズ劇場、ボリショイ・ドラマ劇場、ヴォロネジ小劇場、ノヴォシビルスクの「グローブス」劇場、そしてヴィクトル・ルィジャコフ演出『Line of the sun』を上演に小屋貸ししていたモスクワ・プーシキン劇場がある。

09.00. 
ロシア文化省はイタリア側から中断された、ロシア・イタリア美術館交流年の復活を期待していると発表。
イタリア文化省は3月9日に、2021年10月にミラノで始まった美術館交流年に関連する全ての催事を取りやめるよう指示を発布。交流年の多様なプログラムでは、60以上のイベントが企画されており、特にドストエフスキー生誕200周年を記念したイタリアでの展覧会などが含まれていた。
一方で、ローマのMaxxi(イタリア国立21世紀美術館)では、140点のウクライナの現代作家たちの作品が展示される「ウクライナ:Short Stories」が始まった。イタリアの報道によれば、この収入はユニセフと赤十字社に渡される。
それに対し〔ロシア側からは〕、ロシア通信(RIA)によると、国立エルミタージュ美術館は展覧会用に貸し出した絵画25点を3月末までに返却するよう、ミラノの2つの美術館に要求しているという。


3月11日

21.45.
ペルミ国立オペラ・バレエ劇場から外国人アーティスト3名が脱退。プリンシパルのマルコ・ゴンザガ(ブラジル)、ソリストのラスムス・アルグレン(フィンランド)、コールドバレエの香川智音(日本)。これについて劇場広報部は、アーティストらの脱退については認めつつも、コメントは控えたとTASS通信が報じている。

20.52.
4月の頭に予定されていたヴァフタンゴフ劇場のイスラエルツアーは、チケットが完売しているにも関わらず、組織側によって中止される。TASS通信が同劇場ディレクターのキリル・クロクの発言を引用し、この決定は「地政学的状況」が原因であると伝えた。ヴァフタンゴフ劇場は、4月6日と7日にテルアヒブでリマス・トゥミナス演出の『戦争と平和』を上演するはずだった。これ以前、ラトビアとエストニアへの同劇場のツアー公演キャンセルが発表されている。

20.00.
モスクワ市文化局は、管轄下の各劇場にFacebookとInstagramのページを削除するよう指示を発した。

19.00.
ヤラスラヴリのフョードル・ヴォルコフ記念劇場がイヴァン・ヴィルィパエフの戯曲『Line of the sun』の上演を中止すると発表。彼の戯曲が上演されているロシアの各劇場に宛てられた同劇作家の書簡が理由としている。書簡においてイヴァン・ヴィルィパエフは「ウクライナを支援する基金」に作家報酬を寄付すると述べていた。劇場側は劇作家の姿勢への不同意を示し、劇作家が「一面的な政治的態度を押し付け、観客は自身の意思と関係なく何らかのアクションに巻き込まれた」と指摘している。

18.00.
ゴールデン・マスク賞でミュージカル『ミス・サイゴン』の上演が中止。演出家はコーネリアス・バルトゥス(Cornelius Baltus)。「残念ながら、サンクトペテルブルク・ミュージカル・コメディ劇場『ミス・サイゴン』はゴールデン・マスク賞演劇祭でモスクワにはいきません。作品はモスクワでも、ペテルブルクでもこの先の数ヶ月は上演されません」と、演劇祭のSNSで告知された。サンクトペテルブルク・ミュージカル・コメディ劇場はこの中止を、出演者の一名が参加不可能となったためだと認めている。4つの部門にノミネート(「最優秀作品賞」、「照明デザイン賞」、「最優秀女優賞」、「最優秀男優賞」)されていたミュージカル『ミス・サイゴン』は、ノミネート外だったグリゴリー・ディチャトコフスキー演出『マイ・フェア・レディ』に変更される。中止されたクロード=ミシェル・シェーンベルク作曲の『ミス・サイゴン』はブロードウェイの正統派ミュージカルで、戦時下で繰り広げられる、アメリカ人兵士とベトナム人女性の愛の悲劇である。

15.30.
ウェールズの首都カーディフで、チャイコフスキーの音楽がプログラムに含まれていたコンサートが中止。カーディフ交響管弦楽団は交響曲第2番(《小ロシア》)と序曲《1812年》を演奏する予定だった。
「カーディフ交響管弦楽団はセント・デーヴィス・ホールの同意を得て、序曲《1812年》を含む事前に公表されていたプログラムは現在演奏するには適当ではないと判断しました。管弦楽団は、聴衆の方々のご賛同と、改定後のプログラムを楽しんでいただけることを望みます」と管弦楽団のウェブサイトに掲載。

14.30. 
ヴァレリー・ゲルギエフが不参加となったミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートで、ロシア人作曲家たちの音楽が演奏される。3月17日、18日、20日のコンサートにはゲルギエフの代わりに、指揮者のマンフリート・ホーネックとアンドリス・ネルソンスが出演。同管弦楽団はプロコフィエフの交響曲第5番とラフマリノフのピアノ協奏曲第3番を演奏した。現時点では、誰がゲルギエフ氏の代わりにミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団を常任で率いるかについては不明。

13.30. 
ニュースサイトColta.ruがRoscomnadzor〔ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁〕から、サイトがブロックされうると警告される。

9.50.
ロシア文化省は、国外との協働を中断しない。「ロシア文化省は、諸外国との協働の制限を管轄組織に発布していない」と文化省広報部は述べた。

9.00.
ヨナス・カウフマン〔ドイツ・オペラ歌手〕が制裁下のロシア人アーティストたちの境遇を危惧。同オペラ歌手は、ロシアの文化を滅ぼしてはならないと考えている。Corriere della Sera誌のインタビューでカウフマンは「彼らを非難する前に、彼らの立場になる」べきだと述べた。


3月10日

14.10.
TRワルシャワ劇場の『3STRS』〔原作チェーホフ「三人姉妹」〕の製作チームは、演出家のリュック・パーセヴァル氏と共に、ウクライナの人々との結束の意味を込めてチェーホフの原作テキストに変更を加えることを決定。ヒロインたちはモスクワの代わりにキエフを「素晴らしい生活の象徴」として想起する、と劇場のサイトに掲載。TRワルシャワ劇場は、自身の劇場とクラクフのスターリー・シアターの舞台で、新しいバージョンで公演する。

11.55.
モスクワのブリュソフ通りにあるメイエルホリドの家博物館が閉鎖。3月2日に館長のナタリヤ・マケロヴァは理由説明なしに解任されていた。同博物館はバフルーシン記念演劇博物館の支部で、バフルーシン記念演劇博物館のウェブサイトおよびSNSに閉鎖の情報は掲載されていない。
テアトル誌がメイエルホリドの家博物館の閉鎖について質問したところ、バフルーシン記念博物館のプレス担当は以下のように回答した。「閉鎖はちょっとした理由によるものです。近いうちに開館できることを願っています」。3月2日には、マケロヴァ氏と共に、もう一つのバフルーシン記念博物館支部であるシェプキンの家博物館館長ナタリヤ・ピヴォヴァロヴァも解雇されている。

9.48.
イギリスでE.サパエフ記念マリースキー国立オペラ・バレエ劇場〔ロシア連邦マリ=エル共和国〕のツアー公演が中断される。全46回公演中6公演のみ上演された。これについて共和国文化大臣のコンスタンチン・イヴァノフが発表した。マリースキー劇場のオペラ団とオーケストラはこれ以前にイギリス各都市でのツアーに出発していた。コンサートは4月14日まで行われる予定だった。

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第2週

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タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。
訳者による割注は〔〕で記している。
戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。
人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第2週

Театр.誌原文(第2週)

(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)

▶︎公開:3月23日18:30
▶︎更新:3月23日23:20、3月24日22:30


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。


残念ながら、ウクライナでの状況は収まらず、私たちはこの困難な時代に劇場や文化がいかに対峙しているかを引き続き注視していく。ウクライナでの軍事行動に関連する先週の出来事については、こちらのリンクからご覧ください。


3月9日

18.36.
エルモロヴァ劇場が、タルガト・バタロフ演出のディストピア諷刺劇『(非)理想的なチェ』(アレクサンドル・ツィプキン作)のプレミア上演を延期。3月11日に予定されていたプレミア上演は4月に延期された。これについての情報は、エルモロヴァ劇場のサイトに掲載された。「アレクサンドル・ツィプキン作、タルガト・バタロフ演出作品『(非)理想的なチェ』の公開準備はできています。リハーサルは終了し、皆が初日を待っています。しかし、プレミア公演の日程変更が決定されました。この措置は戯曲のジャンルを考慮したものです。戯曲にあるような諷刺的なディストピア劇を発表する可能性をいま現在見い出すことができません」。


3月8日

17.02.
世界的に有名なチェリストのヨーヨー・マは、ワシントンのロシア大使館前で平和を訴えて演奏を行ったとClassicalMusicNews.Ruが報道。同アーティストによる単独アクションは、カーネギー・ホールでの自身のコンサートの前に行われた。これ以前、同音楽家はウクライナ情勢について、ロシア大統領ヴラジミル・プーチンに宛てて、平和への訴えとともにSNS上で率直に発言していた。

11.50.
劇作家で演出家のイヴァン・ヴィルィパエフが自身のオフィシャルサイトで、彼の戯曲を上演するロシアの国公立劇場宛ての書簡を公開。モスクワ芸術座、ボリショイ・ドラマ劇場、ネイションズ劇場、ソブレメンニク劇場、メイエルホリド・センター、その他数十の地域の劇場に宛てたもの。書簡では次のように述べられている。「私はあなたたちから受け取る予定だったお金を、ウクライナを支援する基金へと送ることを決断しました」。「もちろん、(これを強調しておきたいのですが)このお金は平和的目的にのみ用いられ、いかなる場合でも戦争目的として用いられることはありません」。同劇作家は、資金があてられる具体的な目的について各劇場に知らせることを約束している。

9.00.
ポーランドのラジオ局TokFMとその他のマスメディアによれば、ポーランドの劇場と交響管弦楽団はレパートリーからチェーホフの戯曲を扱った作品、及びチャイコフスキー、ショスタコヴィチ、スクリャビン、プロコフィエフ、ストラヴィンスキーの作品を除外する。禁止作家のリストは拡充される可能性がある。
ポーランド国立歌劇場(ワルシャワ大劇場)は先日、マリウシ・トレリンスキ演出、ロシア人バス・バリトン歌手エヴゲニー・ニキチンがメインキャストで出演予定だった『ボリス・ゴドゥノフ』上演をキャンセルしている。プレミア上演は4月8日に行われる予定だった。また、ブィドコシュチュのOpera Novaで秋シーズンの頭に予定されていた『エヴゲニー・オネーギン』も中止となった。その他、ベートーヴェン・フェスティバルからプログラムのショスタコヴィチ《交響曲第13番(バービー・ヤール)》、スクリャービン、プロコフィエフ、ストラヴィンスキーの作品も除外される。


3月7日

23.20. 
マスメディアの報道によると、イギリス人作家のジョアン・ローリングが、ウクライナの子どもたちを支援するために100万ポンドを寄付。祖母がオデッサ出身のレオナルド・ディカプリオもまた歴史的な故郷を支援し、ウクライナに1000万ドル寄付している。

22.50. 
バルセロナのリセウ歌劇場は、公式サイトで通知したとおり、劇場175周年式典のプログラムを、アンナ・ネトレプコを理由に変更。ロシア人歌手の代役は、オペラ『マクベス』、『トゥーランドット』、『ラ・ボエーム』はソンドラ・ラドヴァノフスキー(カナダ)、イレーネ・テオリン(スウェーデン)、リセット・オロペサ(アメリカ合衆国)が務める。

16.00.
2月にプレミア上演を迎えたアナスタシア・パトライの『メモリア(Memoria)』は、統合されたメイエルホリド・センターとドラマ芸術学院のレパートリーから一時的に除外される。テアトル誌が広報部に問い合わせたところ、上演中止は「制作陣の一部がモスクワにいない」ためとの回答。

13.30. 
演劇批評家のユリヤ・オセエヴァが3月6日に10日間の拘留となったことが判明。
これに関して、ユリヤ・クレイマンが自身のFacebookに投稿している。「友人の演劇批評家、心理学者、文学教師のユリヤ・オセエヴァが昨日、集会で拘束されました。夕方も夜も拘束され、朝には「交通妨害」で10日間拘禁の判決が下されました」。

12.00. 
ロシア下院議員のスルタン・ハムザエフはウクライナ領における軍事行動中に国を離れた俳優のロシア入国を禁止することを提案。


3月6日

19.00. 
トマス・ザンデルリングがノヴォシビルスク交響楽団の芸術監督と首席指揮者を辞任。その声明の一部がSlipped discで公開されている。「ノヴォシビルスクで生まれ、オーケストラとの強い結びつきを感じていた私にとって、この決断はとても辛いものでした」。トマス・ザンデルリングは2017年からノヴォシビルスク・オーケストラを率いていた。

17.40. 
トゥガン・ソヒエフは、ウクライナ情勢への対応を表明し、ボリショイ劇場の音楽監督と首席指揮者およびトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の音楽監督の職を辞することを決定したとの声明を発表。

16.45. 
プラトノフ国際芸術祭の創設者で芸術監督のミハイル・ブィチコフは、12年務めたそのポストを辞任することを自身のFacebookで公表。

15.00. 
ゴールデン・マスク賞演劇祭はSNSで、小劇場部門にノミネートされていた『悲しき神々の委員会』の上演中止を通知。演劇祭組織委員会によると、ペテルブルグの劇団テアトル・ポストは、「運営上の理由」でモスクワで3月10日11日に予定されていた上演を行なうことができない。演出家のドミトリー・ヴォルコストレロフはこの状況を受けてのコメントを拒否した。モスクワ市文化局の決定により、3月1日にヴォルコストレロフはメイエルホリド・センターの芸術監督の職を解任されている。
これ以前、ゴールデン・マスク賞演劇祭では、ペテルブルグのカールソン・ハウス劇場による『金の鶏』の上演が、マクシム・イサエフの激しい発言を理由に同じく中止されている。


3月5日

19.00. 
ウクライナ情勢を背景に、エクス=アン=プロヴァンスの国際フェスティバル〔エクス=アン=プロヴァンス音楽祭はオペラを中心に行われる音楽の国際フェスティバル、Festival d’Aix-en-Provence〕はロシア政府の行動を公に支持しているロシアの文化組織、及びアーティストとの協働を中断するとの声明。これについて、催事のプレス担当が告知。フェスティバルプログラムに伝統的に含まれているロシア人作曲家の各オペラは、これまで通りに演奏される。

17.00. 
オレグ・タバコフ劇場がSNSにて、3月4日に上演された「水兵の沈黙」のチケット収入はロシア赤十字に寄付されると発表。また、劇場は他の文化関係者たちにもチャリティ活動への参加を提案した。
先日、劇場芸術監督のヴラジミル・マシコフが、ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国の独立を承認する大統領の決定を支持し、「平和な生活への希望」と表現した。この発言により、「水兵の沈黙」は公演中止の危機にあった。人権擁護運動家で、戯曲原作者アレクサンドル・ガリチの息子でテキストの著作権保持者グリゴリー・ミフノフ=ヴァイテンコはヴラジミル・マシコフの態度に対し、断固たる反対を表明していた。

16:35. 
スロノフ記念サラトフ国立ドラマ劇場は、この現代において軍事行動は論外であると俳優から意見表明があったことを受け、セルゲイ・ラザレフのコンサートを中止した。3月3日に、サビノフ記念サラトフ国立音楽院の学生たちの名義で、署名サイトchenge.orgに「ロシアの文化人に支援を」というサラトフ州文化大臣のナタリヤ・シェルカノヴァ宛の請願が出されていた。テキストでは特に次のように述べられている。「音楽への愛に加え、私たちを結びつけているのは国家の歴史・文化・精神性です。〈中略〉私たちは、文化を代表するものとして、欧州連合とアメリカ合衆国がロシアの音楽家たちの権利を世界レベルで制限しているという事実に動揺しています。役職から退け、コンサートをキャンセルし、迫害しています。このような目に遭っている偉大な文化人の中には、ヴァレリー・アビサロヴィチ・ゲルギエフ、アンナ・ユリエヴナ・ネトレプコ、デニス・レオニドヴィチ・マツエフもいます。また私たちは、ウクライナの非ナチ化とドンバスの安全保障のための大規模作戦の開始と共に、一部のショー・ビジネスの代表者たちが私たちの社会に有害な影響を与える、非愛国的な発言をし始めたことにも、不安を抱いています。祖国への、私たち民族への献身と愛はそのような人々にとっては何の意味もないのです。これを踏まえ、2022年3月7日のサラトフ州領内でのセルゲイ・ラザレフの出演は容認し難いものと考えます」。
本日3月5日に、ラザレフのコンサートが予定されていたスロノフ記念サラトフ国立ドラマ劇場のウェブサイトにて、同劇場ディレクターのヴラジミル・ペトレンコの署名入りの文書が公開された。「私たちは、いわゆるショー・ビジネスと呼ばれている者たちのツアー公演実施に関する人々の見解、特に音楽院の生徒たちの見解について耳を傾けます。サラトフで上演予定だったラザレフ氏のコンサートについては実施されません。これは受け入れがたいものです。ロシア連邦の他地域がこの決定を支持してくれることを確信しています。なにより、チケットを購入した多くのサラトフ市民たちは既にこの出演者の立ち位置を理由にはやくもチケットを手放し始めています」。
これ以前、アルハンゲリスクでも、マクシム・ガルキンがウクライナにおける軍事行動開始について遺憾の意を示したことで、同氏のコンサートが秋に延期になったことが明らかになっている。



3月4日

20:00. 
ヴィリニュス国立小劇場〔リトアニア〕は、その創設者であるリマス・トゥミナスとの労働契約を破棄したと発表。これはリトアニア文化大臣のシモナス・カイリスが2月24日に発した以下の最後通告への応答として下された決断である。「国立小劇場ディレクターに、トゥミナス氏を明白かつ明瞭に解雇するか、またはディレクターのあなた自身の退職届けを私のテーブルに置いてもらうか、明日お待ちしていることをお伝えします。申し訳ありませんが、敬愛なる演出家は私にとって、他人の地に押し入る酔っ払いのロシア兵と何の差異もありません」。

19.27.
レグナム(REGNUM)通信社は、150人ほどのロシア文化人が署名したプーチン大統領の行為を支持する書簡を公開。署名者の中には、ニコライ・ブルリャエフ、ニコライ・レベデフ、アレクサンドル・シロフ、アレクサンドル・ミハイロフ、ヴァシリー・ボチカリョフ、ドミトリー・ペフツォフ、ヴィクトル・ラコフ、ヴラジスラフ・マレンコなどがいる。

19.15.
Apriori Arts通信社によれば、ロイヤル・オペラ・ハウス(コヴェント・ガーデン)は指揮者のパヴェル・ソロキンとの間で結ばれていた2021-2022シーズンの契約を破棄。同ロシア人音楽家は5月に、撮影して全世界の映画館に生配信されるTheatreHDのプログラムも含むバレエ『白鳥の湖』の指揮をする予定だった。パヴェル・ソロキンはロイヤル・バレエ団の定期招聘指揮者であり、2007年より協働関係が続いていた。

19.00.
スウェーデン当局はウクライナでの出来事を受け、ロシアとベラルーシの国立文化機関との関係を断つよう呼びかけ。ただし、文化人がロシア政府の行動に賛同していない場合は、個別の関係は維持しうるとする。

17.27.
ボリショイ劇場は4月のオペラ『ローエングリン』プレミア上演を変更。この代わりに4月6、7、9、10日は『カルメン』を上演する。この変更に関する発表は劇場の公式サイトとSNSホームページで告知された。2月24日に初演をむかえたフランソワ・ジラール演出の『ローエングリン』はボリショイ劇場とメトロポリタン歌劇場の共同制作作品で、プレミア上演には多くの海外アーティストが出演した。メトロポリタン歌劇場はこれ以前、「ウクライナでの軍事作戦が止まないうちは」ロシア人アーティストおよび文化施設との関係を中断すると発表していた。

11:32.
デイヴィッド・マクヴィカー演出によるヴェルディのオペラ『ドン・カルロス』のプレミア上演前に、音楽監督ヤニック・ネゼ=セガンが指揮するメトロポリタン歌劇場のオーケストラと合唱団がウクライナ国歌を演奏。会場では戦死したすべてのウクライナ人に1分間の黙祷が捧げられた。
その他、劇場は近く予定していたアンナ・ネトレプコの出演をすべて中止した。メトロポリタン歌劇場総裁のピーター・ゲリブは、ネトレプコがウクライナでの軍事作戦に関するロシア大統領への「公的な支持の否認」を拒否したと伝えた。これに関して、同劇場のFacebookページで公表されている。

10:59.
ワルシャワのポーランド国立歌劇場(ワルシャワ大劇場)は4月8日に予定されていたマリウシ・トレリンスキの『ボリス・ゴドゥノフ』プレミア上演をキャンセルしたと劇場サイトで発表。メイン・パートをロシアのバス・バリトン歌手エヴゲニー・ニキチンが演じるはずだった。

10:04.
パリ国立オペラはロシアの文化従事者との協働を停止することを、劇場公式サイトで発表。劇場芸術監督のアレクサンドル・ネフは「体制支持を公言している」ロシアの文化施設や演者たちとの協働関係を中止すると公表した。


3月3日

17.47.
タシケントにあるマルク・ヴァイルのイルホム劇場が、2022年6月にメイエルホリド・センターで開催予定だった第4回現代演劇国際フェスティバル”NONAME”への参加を拒否。3月3日にFacebookの劇場公式ページで公開された書簡によれば、劇場の成員一同は、エレナ・コヴァリスカヤとドミトリー・ヴォルコストレロフへの連帯表明として、この決断を下した。両氏はメイエルホリド・センターを去り(コヴァリスカヤは自発的、ヴォルコストレロフは解雇)、その後、同劇場はドラマ芸術学院と統合された。
書簡では以下のように述べられている。「イルホム劇場一同は、メイエルホリド・センターにおける、これらの人事異動と組織改変を、伝統ある劇場における理念的変更とみなしています。メイエルホリド・センターの様々なプログラムの出発点であった精神的リーダーたちを欠くこの変更は、この劇場の活動方針を根本的に変えうる、と私たちは考えています。
私たち劇場一同は、エレナ・コヴァリスカヤ氏とドミトリー・ヴォルコストレロフ氏のプロフェッショナルで市民的な立場を全面的に支持することを表明します。これらの理由から、イリホム劇場の団員は第4回現代演劇国際フェスティバル”NONAME-2022″への参加を拒否する決定をしました」。

17.29.
ヤロスラブリ州に到着したルガンスクおよびドネツク両人民共和国の住民は、ヤロスラブリのロシア国立フョードル・ヴォルコフドラマ劇場の上演を無料で観劇できると、地方行政府広報部が発表。劇場のウェブサイト、SNSではこの情報は公開されていない。

15:03.
ペルミ市立劇場シアター・シアター〔以下、TT〕が、観客への支援として3月中の上演をすべて単一の値下げ価格で販売すると公表。「株式市場、お店、銀行で何が起きようと、ТТの3月のすべてのチケットは、予告通り固定して、300ルーブルです」と劇場はそのSNSで告知した。この行動は高評価を受け、3日間で10,000枚以上のチケットを売り上げ、TTはさらに8上演をスケジュールに追加した。この成功を受け、チケット購入時の値下げ(50%割引)をペルミ国立オペラ・バレエ劇場も導入した。

12:56.
ドレスデンのザクセン国立歌劇場(ゼンパー・オーパー)はロシアの演者たちとの協働を継続すると発表。ドイツ通信社(DPA)は同劇場ディレクターのピーター・タイラーの発言を元に報道。タイラーは、ゼンパー・オーパーでは数多くのロシア、ウクライナ、その周辺国の演者たちが働いている。彼らとの関係を断ち切るべきでないとの意見を述べた。

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第1週

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第1週

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

【概要】はこちら

 

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第1週

Театр.誌原文(第1週)

(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)

▶︎公開:3月19日23:00、
▶︎更新:3月20日15:11、3月20日21:24、3月21日13:55、3月22日15:20


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。


3月3日

19.20.
ロシアの映画館が閉鎖の危機に瀕している。
本日、ロシア映画館オーナー協会〔RUSSIAN ASSOCIATION OF THEATER OWNERS〕は、ハリウッドのスタジオからのボイコットや上映のための機材納入停止を理由に、おそらく今年中にはロシアでの映画上映が終了するだろうと警告する文書を発表。

19.00.
M. シェープキンの家博物館館長のナタリヤ・ピヴォヴァロヴァ氏およびV. メイエルホリドの家博物館館長のナタリヤ・マケロヴァ氏が、理由の説明なしに解任される。

18.00.
ヴラジミル・ポタニンがニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館、及び同財団を辞任。
大富豪〔ポタニン氏〕は自身の意志で評議員のポストを去った。美術館の声明では、「ヴラジミル・ポタニン氏は2022年3月3日に評議会に対し、自身の決断を通達した。この決断は即座に承認された」と述べられている。

17.30.
ヴァフタンゴフ劇場のエストニア、ラトビアツアーがキャンセル。2022年の春と秋に同劇場はバルト地方で『戦争と平和』、『私たちの教室』〔タデウシュ・スロボジャネク作〕、『リューシャ 愛の告白』〔リュドゥミラ・グルチェンコ『拍手』、『リューシャ、ストップ!』が原作の作品〕の上演をする予定だった。
一方、4月に予定されているイスラエルツアーは行われる。また、ハンガリーツアーについては、劇場ディレクターであるキリル・クロクによれば「この問題の原因は一つで、ロシアの劇団が行くからではなく、飛行制限が課されているからです」。

17.00.
昨日ペテルブルグで抗議活動中に拘束された女優のアリサ・オレイニクが内務省から釈放。彼女は15,000ルーブルの罰金を言い渡された。
これについて同女優はFacebookで以下のように投稿している。「7人の女性と一緒にいました。うち一人(本当に近くを通りがかっただけの学生)は釈放されて、私ともう一人別の女性は、15,000ルーブルの罰金。他の4人は、7!!!!日間!!!〔の勾留〕」。
「抗議に参加した私たちは、大人しく立っていただけで、叫んでもいませんし、本当にそこにいただけだと言っておきたいです。護送車に押し込まれて、悲しくなったのは、そこにいた多くの人たちが他の人たちのことを非難しはじめたことです。私たちのせいで苦しんでいると。あの人たちは誰のことも気にかけず、いま起こっていることを気に病んだりすることもなく、歩いているのです。つまり私たちは少数派なんです。ロシア国民はどうやらいないようです。いまや行政違反ではなく、刑法に問われるようになるらしいですし。わからないけど……
みんな、どうか気をつけてください。本当にありがとう」。

16.00.
エルミタージュ・アムステルダムはサンクト・ペテルブルグのエルミタージュ美術館と関係を解消する。
エルミタージュ・アムステルダムは、幹部と監査委員会が30年にわたる両美術館間の協力関係を停止すると発表。3月4日からエルミタージュ・アムステルダムはロシアと完全に「絶交」する。
美術館の広報部によれば「私たちは政治的中立を守ろうと務めました。ですが先日のウクライナ領へのロシア軍の侵攻は、その中立はもはや成立しないことを意味しています」。
一方で、エルミタージュ・アムステルダムは両館の関係が修復されうる展望に関しても言及しつつ、しかしそれは、もしロシアにおいて「変化が起こった」場合のみにおいて可能であるとしている。

13.30.
チムル・ザンギエフがミラノのスカラ座でヴァレリー・ゲルギエフの代役を務める。
当初、ヴァレリー・ゲルギエフはスカラ座で3月5日から15日に予定されていたオペラ『スペードの女王』の指揮をするはずだった。劇場管理部は協働関係の解消を迫り、ゲルギエフがウクライナにおけるロシアの「特別作戦」について自身の立ち位置を明確化するよう要求していたが、同指揮者はこの要求について応答しなかった。
本日、〔スカラ座〕管理部はゲルギエフの代役を、スタニスラフスキー・ネミロヴィチ=ダンチェンコ音楽劇場(モスクワ)の指揮者であるチムル・ザンギエフが務めることに決定した。

12.00.
フランチェスコ・マナコルダがV—A—C財団を脱退。これについてインテルファクス通信がGES-2プレス・リリースを引用して報じた。
「大変残念ながら、目下の出来事は仕事の環境も個人の環境も本質的に変えてしまいました。このため、私が誇れたはずの献身性でもって仕事を続けることはできないという結論に達しました」と自身の退任についてマナコルダは説明した。「この決断に大きな苦しみと遺憾の念を覚えています」。
フランチェスコ・マナコルダはテート・リバプールの前アートディレクターであり、モスクワ近代美術館での企画展”General Rehearsal”の共同キュレーターを務めた。2017年9月よりV—A—C財団のアートディレクターに就任。
V—A—Cからは先日、モスクワに最近〔2021年12月〕オープンしたGES-2の建設とその活動のディレクションを担っていたジェネラル・ディレクターのテレザ・マヴィカが脱退している。また、2月27日に、GES-2はウクライナの出来事を理由に、全ての展示とプロジェクトの停止を決定している。

10.00.
クリエイティブ産業センター「ファブリカ」が、この間の出来事に関連して文化機関から解任された、もしくは自発的に辞職したキュレーター、アーティスト、アート・マネージャー向けの公開イベント(レクチャー、ディスカッション、映画上映等)の企画を公募。
事情により複雑な生活状況におかれながらも、自身の作品/プロジェクトを独立したプラットフォームで発表し、検討することを望む現代アートシーンの関係者は誰でも参加することができる。
ファブリカは実施するための会場とイベントに必要な技術備品の提供、情報発信のサポート、作者への報酬(7,000ルーブル)の用意がある。


3月2日

23.00.
ダンス・オープン・フェスティバルは今シーズンの国際プログラムの中止を発表。ピーピング・トム(ベルギー)、モンテカルロバレエ団(ドイツ)、ドルトムントバレエ団(ドイツ)はペテルブルグに来訪しない。

22.00.
テアトル誌編集部に演出家エイムンタス・ニャクロシュスの妻で〔舞台〕美術家のナヂェジダ・グリチャエヴァからの手紙が届く。

21.00.
ペテルブルグのゴスチヌィ・ドボール付近における平和的抗議活動で女優のアリサ・オレイニクが拘束される。「というわけで、捕まりました」。拘束直前に自身のFacebook上に投稿したビデオで述べている。後に、同じくFacebookで、第7支署に収監されたことを記している。

20.00.
エストニアのロシア劇場(ヴェネ・シアター)がエストニア住民に対し、Facebookで呼びかけ。
「私たちは芸術、文化、科学、文学、ジャーナリズム、テレビ、ラジオの従事者たち、また反戦の呼びかけに署名した数百万人のロシアの人々の視座を支持します。〈中略〉私たちの支援と同情の言葉は、ウクライナの文化関係者たちへと向けられています。ウクライナには、私たちの劇場も幾度となくツアーを行ない、私たちのメンバーの多くが親戚、友人や同級生を持っています。〈中略〉3月27日の世界演劇の日に、ロシア劇場で国内の優秀演劇功労者への授賞式典が行なわれるというのは、どういった巡り合わせなのでしょうか。このことには深い象徴的な意味があるのかもしれません。今日、エストニアに住むあらゆる民族の連帯がかつてなく重要です。普段用いている言語に関わらず、演劇関係者たちはロシア劇場に集い、団結を示すことができるのです」。

18.30.
ライン・ドイツ・オペラは、ドミトリー・ベルトマン演出のオペラ『アンドレア・シェニエ』(ウンベルト・ジョルダーノ作)のプレミア公演を中止。この決定は劇場総裁のクリストフ・マイヤーによるもの。プレミア公演は5月14日に予定されていた。
「この断り方は大変遺憾ですが、今の状況では他の選択肢はありません。特に強調したいのは、今回の決定が演出家ドミトリー・ベルトマンに向けられたものではないことです。むしろ、彼の名前と切りはなすことのできないロシア国家との協働を一時的に延期しているのです」とマイヤー氏は述べた。

15.00.
我々は文化の領域において密告の慣習が再び始まっていることを認める必要がある。ゴロド812誌の報じたところによると、ロシア国立図書館〔ペテルブルグ〕の管理部門が発布した通知で、所属員や来館者の中の秘密扇動やアジテーションをする者がいたら職員はその旨を報告するよう求められていた。テロ組織の活動を未然に防ぐために必要だと説明されている。通知では、「平和な市民に対してテロリズム的破壊工作を持ち込むことで、サンクト・ペテルブルグにおけるネオナチ的風潮の活性化が起こりうる」と述べられている。文書には図書館長のヴラジミル・グロンスキーが署名している。

14.30.
ロシアの主要な劇場の指導者らの呼びかけに1000名以上の署名が集まる。署名者にはマリナ・アンドレイキナ、ソフィヤ・アプフェリバウム、ニキータ・ベテフチン、アナトリー・ベールイ、ドミトリー・ヴォルコストレロフ、アントン・ゲチマン、カマ・ギンカス、エヴゲニー・グリシュコヴェツ、ミハイル・ドゥルネンコフ、ジノヴィー・マルゴリン、エヴゲニー・マルチェッリ、ヴラジミル・ミルゾエフ、アンドレイ・プリコテンコ、ヴェニアミン・スメホフ、アンナ・シャラショヴァ、イルテ・ヴェンガリテ、ゲンリエッタ・ヤノフスカヤなどがいる。

13.00.
メイエルホリド・センターのPR担当部門に所属するソファ・クルグリコヴァが自身のSNSで、劇場の新しいディレクターのオリガ・ソコロヴァからの最初の指示について投稿。
「私はソファ・クルグリコヴァといいます。メイエルホリド・センターのInstagram(@meyerholdcentre)を担当しています。今日私は、ドラマ芸術学院と統合されたメイエルホリド・センターの新ディレクター、オリガ・ソコロヴァの指示で、ウクライナでの「特別作戦」への抵抗を表したポストを削除しました。ごめんなさい。私たちのレジデンスアーティスト、残ったメイエルホリド・センターの職員たちのためにやりました」と投稿で述べている。
昨日3月1日にモスクワ市長の公式サイトにてメイエルホリド・センターとドラマ芸術学院の統合に関する情報が公開されていた。またこれ以前に、演出家ドミトリー・ヴォルコストレロフがメイエルホリド・センターの芸術監督の職を退いたことも明らかになっている。この決定はモスクワ市文化局により下されたもの。2月24日にはエレナ・コヴァリスカヤがメイエルホリド・センターのディレクター職を辞している。ウクライナ領内での戦時行動が行われている中で職業的責務を継続することは不可能とした上での辞職と述べている。統合された劇場の新ディレクターにはオリガ・ソコロヴァが就任した。

11.00.
アルヴィス・ヘルマニスは3月4日にネイションズ劇場で上演予定の『シュクシンの物語』から自身の名前を削除するよう要求。これについて演出家は自身のFacebookに投稿。

10.00.
指揮者のヴァシリー・ペトレンコがロシア国立交響楽団の芸術監督を辞任。同指揮者の公式サイトにて情報が公開された。
「ウクライナで繰り広げられている悲劇は、もはや今世紀の最も大きなモラルの崩壊、人道的破滅の一つです。〈中略〉この悲惨な出来事への応答として、平和が戻らないうちは、これ以降のロシア国立交響楽団芸術監督の職務を含め、ロシアでの活動を停止することを決断しました」とヴァシリー・ペトレンコは記している。

2.00.
ワルシャワ大劇場がマリウシュ・トレリンスキ演出のオペラ『ボリス・ゴドゥノフ』(ムソルグスキー作)の4月の上演を取り消すと劇場のホームページで告知。同作にはロシア人のエヴゲニー・ニキチンとマクシム・パステルが出演していた。「この作品が、平和な状態で実現するために戻ってこられることを信じています」と劇場サイトでは伝えられている。

1.30.
アンナ・ネトレプコがスカラ座でのオペラ『アドリアーナ・ルクヴルール』出演を辞退。同劇場の広報部によれば「アンナ・ネトレプコは一時的に活動を止め、今後予定されている全てのプロジェクトから離脱しました。このため、彼女は3月9日〔の公演に〕は出演しません」。一方、ネトレプコの夫であるヨシフ・エイヴァゾフの名は未だオペラ『アドリアーナ・ルクヴルール』のポスターに掲載されている。
先日、ウクライナ情勢の緊迫化と演者の政治的見解を理由に、アンナ・ネトレプコとヨシフ・エイヴァゾフ両名のオーフス・コンサートホール(デンマーク)への出演がキャンセルされたことについて明らかになっていた。


3月1日

21.05.
アレクセイ・ヴェネディクトフ〔独立ラジオ局「モスクワのこだま」局長〕が、「モスクワのこだま」の放送を停止されたと伝える。

19.00.
演劇批評家、演劇学者のアリョナ・カラシは自身のFacebookに舞台芸術大学(GITIS)を辞職すると投稿。同氏はロシア演劇史学科の上席講師で、2020年まで演劇学学部で演習を担当していた。
「私は、かつて兄弟であったウクライナに対するロシアの「軍事的行動」を絶対に容認しないことをここに宣言します。同時に、四半世紀にわたって誇りを持って教鞭を取ってきたGITISとの関係を完全に断ちます」。

18.40.
各種メディアが、3月1日にバイエルン国立歌劇場を解任された指揮者のゲルギエフと歌手のアンナ・ネトレプコが、7月1から10日にクリン〔モスクワ州〕で開催される第7回チャイコフスキー国際フェスティバルに招待されたと報道。

18.00.
現代美術センターのGES-2のキュレーター、ニキータ・ラスカゾフとエカテリーナ・クルペンニコヴァが抗議の意思表示として自発的に辞職したことが本日判明。
V-A-C財団の音楽プログラム担当キュレーター、ニキータ・ラスカゾフは現状について次のようにコメント。「私はGES-2の仕事を辞めます。自身と施設を引き離す能力は極めて重要です。この施設は自分自身を見つめ、現実にある場所や人々との結びつきを損ないつつある施設の目的や手法から自立して行動することを許してくれました。施設の一員として、人々を集め、好奇心があり革新の力が感じ取れるアーティスト達を支援するために、機会や資金を配分することがまだできていたときには、その結びつきを保とうと努めていました。〈中略〉
ここでの仕事の5年間に出会ってきた人々は、私を変えてくれ、私がどのように、なんのために働きたいのかをより明確にしてくれました。すべてのプロジェクトの抜本的な見直しが必要ですが、この施設はそれを行なうことができないのです。沈黙を選択した場所に私が残り続ける限り、私の個人的な立場は何の価値もないのです」。
これ以前にGES-2からは、《サンタバーバラ/ラグナル・キャルタンソンの生きている彫刻 》企画展キュレーターのエカテリーナ・クルペンニコヴァが、施設の沈黙への抗議として辞職している。
現時点でGES-2のSNSでは、人事異動及びその他展示会場のニュースに関する投稿へのコメント欄が閉じられている。

17.00.
ここ数日間でゴールデン・マスク賞のプログラムに変更が加えられた。2月28日にカールソン・ハウス劇場(ペテルブルク)『金の鶏の物語』の2ステージ目がキャンセルされ、3月1日にはニジニ・ノヴゴロド・オペラ・バレエ劇場の『フィガロの結婚』は指揮者の出演が取り消しになった。テアトル誌は、検閲とも受け取れるこうした制限の発案者となった人物は誰なのかを調査した。(別記事参照http://oteatre.info/na-zolotoj-maske-otmenyayut-spektakli-i-zamenyayut-ispolnitelej/)

16.30.
〔映画監督の〕エミール・クストリッツァはロシア陸軍劇場の芸術監督にならず。先日、国防省はクルトリッツァが同劇場を率いると伝えたが、ロシア陸軍劇場広報部はこれについて発言していなかった。
「私はロシア陸軍劇場で作品を作るというアイデアは断っていませんし、モスクワで合意したことは何も否定していません。これが正式にはどのような形になるのか、主任演出家なのか、演出家なのか、私は知らない。我々はまだ契約書にサインしていない」とクストリッツァは述べている。彼は、”director”という単語の誤訳によりロシアのマスメディアに混乱が生じたのだろうと付け加えた。

16.00.
演出家のドミトリー・ヴォルコストレロフがメイエルホリド・センターの芸術監督を辞職したと判明。本決定はモスクワ市文化局による。詳細は当サイトの個別ニュース(в отдельной новости)を参照のこと。

13.00.
ヴャチェスラフ・ヴォロジン〔ロシア連邦下院議長〕が自身のテレグラムで、1932年のゴーリキーの有名なパンフレット「誰とともに歩むのか、文化の指導者たちよ」(1932年)風に投稿。ロシア連邦下院議長は、本日、ウクライナの現状に対して公の場で自身の立場を「月曜日までに表明しなかった」という理由でミュンヘン市長の決定に従いミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者を解任されたヴァレリー・ゲルギエフを擁護。
ミュンヘン市長のレトリックを非難したロシア人官僚は次のように補足し、自身の声明を結んでいる。
「今日こそ判断の時だ。それぞれが理解すべきは、国を挙げて団結し、挑戦に打ち勝つか、あるいは自分たちを見失うかということだ。この点で、国外のやり方や基準の崇拝者、それは芸術監督であれ、演出家であれ、俳優であれ、女優であれ、ロシア国内で働いているショー・ビジネスの代表者たちは、ミュンヘン市長が言ったように、ウクライナの状況に関して「月曜日までに立場をはっきりと決める」べきなのだろう」。

12.00.
ヴァレリー・ゲルギエフがミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、及び芸術監督を解任される。
この解任はミュンヘン市長ディーター・ライテルの決定による。
これ以前にゲルギエフはウクライナ領土における軍事紛争に関して公に立場を表明するよう求められていた。ライター市長は、ゲルギエフがプーチン大統領に対する肯定的評価を見直すよう期待していた。「これに応じなかった以上、残されたことはただ一つ、すみやかな離別です。その他のことに関しては、できる限り迅速に精査していく」とライター市長は述べた。

10.00.
モスクワの劇場、演劇芸術スタジオが劇場創立記念日のイベントを行なわないことを決定。同劇場のサイトでは次のように公表される。
「親愛なる観客、友人の皆さん!
3月1日、私たちは毎年、館の記念日を祝い、お客様をお迎えし、抱擁しあい、笑い合っていました。しかし、今年はそのようなお祝いはできません……
全ての人に平和と、光と、善きことと、愛がありますよう。
あなたたちのスタジオより」
ゴーゴリ・センターもこの前日、同様に劇場創立記念日のイベントを取りやめている。

1.39.
TASS通信がギリシャ文化スポーツ省公式SNSを引用して報じたところによれば、同省大臣リナ・メンドニは2月28日(月)に、ロシアの文化機関とのいかなる実施、協働、企画、協議も中止するよう指示。また「ガラ・オペラ」の企画、3月6日(日)に予定されていたボリショイ劇場のバレエ『白鳥の湖』のモスクワからの生中継(於アテネ・コンサートホール)も取り止め。

0.40.
ロサンゼルスのハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムにて、ベネディクト・カンバーバッジがウクライナ情勢に注意を払うよう呼びかけ。


2月28日

23.30.
指揮者のイヴァン・ヴェリカノフが自身のFacebookにて、公の発言原因を理由に、3月1日のモスクワでのゴールデン・マスク賞への出演を拒否されたと伝える。
「25日、ニジニ・ノヴゴロド・オペラ劇場での本番前に行なった私の短い反戦スピーチとベートーヴェン《歓喜の歌》のテーマ演奏との関連を手短にお知らせします。私は明日(3月1日)、モスクワにおけるゴールデン・マスク賞演劇祭での『フィガロの結婚』の指揮を降ろされました。
私を擁護しようとしてくださった方々への感謝と私の出演変更に同意しなかった同僚の皆さんへの敬意を述べさせていただきます。作品と参加者の皆さん全員(明日、譜面台の前に立つファビオ・マストランジェロも含めて)のご成功をお祈りします!」
3月1日にノーヴァヤ・オペラ劇場で上演予定だったニジニ・ノヴゴロド・オペラ・バレエ劇場の作品『フィガロの結婚』は、ヴェリカノフ(音楽監督)と演出のドミトリー・ベリャヌシュキンの共同製作である。『フィガロの結婚』は、ヴェリカノフ氏の指揮者賞を含む、7つの賞でゴールデン・マスク賞にノミネートされている。

22.00.
マールイ・ドラマ劇場/ヨーロッパ劇場の芸術監督レフ・ドージンがウクライナの出来事に関するオープンレターを公表。同氏は以前にもプーチン大統領に対し、個人的な書簡を送っていた。

19.00.
ボリショイ劇場は、3月8日に予定されていたプラシド・ドミンゴのコンサート「春・愛・オペラ」の中止を発表。劇場のウェブサイトおよびSNSで、コンサート中止の理由は公表されていない。

17.30.
2022年のゴールデン・マスク賞国際プログラムでのモスクワ公演を、幾人かの著名なヨーロッパ演出家たち、クリスチャン・ルパ〔ポーランド〕、クシシュトフ・ワリコフスキ〔ポーランド〕、コーネル・ムンドルツォ〔ハンガリー〕らが即座に拒否。

16.00.
ヴェネツィア・ビエンナーレのロシア・パビリオンのチームが2022年の参加をキャンセル。パビリオンの公式Instagramの投稿では、「私たちはプロジェクトにおける最終的な意見は、芸術家とキュレーターにあると考えています。いましがた、キリル・サフチェンコフ、アレクサンドラ・スハレヴァ、ライムンダス・マラシャウスカスは、第59回現代美術ビエンナーレへのロシア・パビリオンに出展はできないと言明しました。ロシア・パビリオンは2022年ヴェネツィア現代美術ビエンナーレには参加しません」と述べられている。
この声明への応答として、ヴェネツィアビエンナーレのInstagramには、展示のオーガナイザーらがロシアパビリオンチーム決定に理解を示して応じると発表された。
「私たちはこの勇気ある高潔な行動に心からの連帯を表し、ウクライナの全住人を襲った悲劇を劇的に象徴するこの決断に至った動機を支持します」。
これ以前、プラハカドリエンナーレでロシアからの参加者たちがボイコットされたことも参照されたい。

15.45.
芸術文化教育機関協会がドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の承認を支持する声明を公開。声明には、ロシア国立舞台芸術大学(GITIS)学長グリゴリー・ザスラフスキー、全ロシア国立映画大学(VGIK)学長ヴラジミル・マルィシェヴァ、シューキン演劇大学学長エヴゲニー・クニャゼフ、グネーシン・ロシア音楽アカデミー学長アレクサンドル・ルィジンスキー、チャイコフスキー・モスクワ音楽院学長アレクサンドル・ソコロヴァの署名も。
テアトル誌は協会の言葉や句読点のミスも含めて修正を加えず、一言一句原本通りに、声明の一部を以下に抜粋する。「芸術文化高等教育機関協会はドネツク人民共和国・ルガンスク人民共和国の承認に関する決定に理解を表します。これら共和国での人々の生活における悲劇と不確実性に終止符を打たねばならなかったことは明らかです。ロシアの歴史において、ウクライナ人を含む兄弟たる民族たちに対して助けが必須だったことは一度ではありません。平和的な人々の犠牲に私たちは心を痛めています。国家間の状態が急速に緊迫化し、国外からはロシア社会を分断し、パニックを引き起こし、いま生じている出来事の意味を歪曲しようと積極的に働きかけてきていることを協会は指摘しておきます。ロシアに対して情報戦が繰り広げられている今この時、教員たちに、学生が信頼している人たち、明確かつ誠実にいま起こっていることの特性を解き明かすことができる人たちに、どのような責任があるのかを理解することが極めて重要なのです……」

15.24.
ゴーゴリ・センターは劇場創立記念イベントの中止を発表。SNSで以下の様に公表。
「私たちは3月2日の劇場創立記念日のイベントを中止します。劇場創立記念日コンクールに寄せて送ってくださった皆さんからのお便りを受け取りました。本当に素晴らしいものばかりで、もちろん全て読みました。すべてのメッセージに対して、必ずお返事を書きます。
あなたたちのゴーゴリ・センターより」
この投稿に、ユーリー・レヴィタンスキーに捧げられた演劇作品『僕は戦争に加わらない』の断片映像が添えられている。『そこにいたことが何だというのか…(Ну что с того, что я там был…)』(1948)の詩を読んでいるのは俳優のフィリップ・アヴデーエフ。
一月前、劇場は感染拡大により2月2日から3月2日にイベントを延期していた。

10.33.
イギリス・ガーディアン紙が、クラスノヤスルク国立バレエ・オペラ劇場バレエ団のツアー公演が途中で中断されたと報道。ノーサンプトン、ウルヴァーハンプトン、ピーターバラでの出演が取り消された。報道によれば、ノーサンプトンのロイヤル&ダーンゲート劇場の近くでは、出演拒否を強いられたアーティストたちへの同情を人々が表しているという。クラスノヤルスク国立バレエ・オペラ劇場の公式サイトには、ツアー公演の中断に関する情報は出ていない。

5.09.
ニューヨークのメトロポリタン歌劇場はロシア政府と関連のあるアーティスト、文化施設との作品制作を中止。メトロポリタン歌劇場総裁のピーター・ゲリブの声明文で語られている。彼の言葉によれば、制限は「ウクライナでの軍事作戦が止まらないうちは」継続される。
また通知の中ではとりわけ、「ロシアとアメリカ合衆国におけるアーティストや諸機関同士の永きにわたって存在している温かな友好的、文化的な繋がりを、私たちがどれだけ強く信じていたとしても、ロシア大統領を支持したり、その援助を受けているアーティストや機関との協働を続けることはできない」と述べられている。


2月27日 

23.02.
ウクライナ文化情報政策省のウェブサイトで「ロシア連邦への文化的制裁の要求」が公表される。ヴラド・トロイツキー、ナタリヤ・ヴォロジビト、オクサナ・ルィニフ、オレグ・センツォフらが署名した文書には、ロシアに対する文化的ボイコットや国際プロジェクトへのロシア人の参加禁止が記されている。要求には、ロシア連邦が関係するプロジェクトの中止、大規模な国際催事(フェスティバル、本の見本市など)へのロシア人の参加中止、国外のロシア文化機関の活動停止、「ウラジミル・プーチン体制への支持を公言しているアーティストや芸術家」との協働拒否などが含まれる。

21.00.
本日、技術者劇団Akheの創設者の一人であり、「ゴールデン・マスク」賞コンクール・プログラム(人形劇部門でノミネート)としてタガンカ劇場(モスクワ)で上演された『金の鶏』の演出家、マクシム・イサエフがロシア政府にウクライナでの軍事行動をやめるように呼びかけ。

18.30.
プラハ・カドリエンナーレがロシアからの参加者をボイコット。
〔Prague Quadrennial:チェコ・プラハで行なわれる劇場建築、舞台美術など、パフォーミングアーツに特化したデザインの国際フェスティバル〕
フェスティバル公式の発表では、「ATI(Arts and Theatre Institute)およびプラハ・カドリエンナーレは、ウクライナにおけるロシア軍の侵攻に態度を表明することを決定しました。2023年、フェスティバル実行委員会はロシアの参加申請を却下します」と記されている。

17.30.
ロシア人演出家・劇作家のエカテリナ・アヴグステニャクが逮捕される。これについて彼女は17時30分に自身のFacebookに投稿。数時間後に釈放された。

13.36.
スタニスラフスキー・ネミロヴィチ=ダンチェンコ音楽劇場(モスクワ)バレエ団の芸術監督でフランス人バレエマスターのローラン・イレールが劇場からの離脱を決定。
「私たちの劇場バレエ団の芸術監督のポストを辞任することは、ローラン・イレール個人の決断です。残念ではありますが、数年にわたる彼の実り多き仕事に感謝しています」と劇場広報部はコメント。
これより前、フランスのAgence France-Presse(フランス・メディア・エージェンシー)に、イレールは「複雑な状況を鑑み、職を辞してモスクワを去る」と述べていた。


2月26日

20.45.
モスクワ芸術座、ボリショイ・ドラマ・シアター(ペテルブルク)、ゴーゴリ・センター(モスクワ)、ロシア・アカデミー青年劇場(モスクワ)、アレクサンドリンスキー劇場(ペテルブルク)が劇場ロゴに〔平和の象徴である〕鳩の形象を加える。

13.13.
ヴラジミル・マシコフのウクライナに関する発言により、オレグ・タバコフ劇場のレパートリー演目から『水兵の沈黙』が削除される可能性。原作者アレクサンドル・ガリチャの息子で、戯曲の著作権を所有している人権擁護運動家のグリゴリー・ミフノフ=ヴァイテンコは、同俳優の立場に断固として同意せず。ヴラジミル・マシコフは前日深夜、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立性を承認する大統領の決定を支持し、それを「平和な生活への希望である」と表現した。3月4日に上演される『水兵の沈黙』のチケット収入について、同俳優は両共和国の住民に譲渡すると決めていた。
ミフノフ=ヴァイテンコはソベセドニク出版との対談の中で現状について以下の様にコメント。「相対的に誠実な人間として、まず最初にあの発言は確かにマシコフによって出されたものであるということ、そしてあれが彼の立ち位置なのだということを確認しなければなりません。彼が多忙であることは承知しており、誰かが彼の代わりにページを更新していることだってありえるからです。これについては確かめる必要があります。しかし、もしあの情報が事実であるならば、私は今後『水兵の沈黙』があの劇場の舞台で上演されることは、断固として受け入れません。もし劇場が私の要求を無視するのであれば、違約金が課されるでしょう。それは劇場を経済的に追い詰めることになります」。

7.24.
ボランティア団体、財団、NPO団体がヴラジミル・プーチ大統領に対する声明を公開。80名以上が署名。


2月25

23.28.
ロイヤル・オペラ・ハウス(コベント・ガーデン王立劇場)がウクライナ情勢を背景として、ボリショイ劇場のツアーをキャンセル。TASS通信はこれについて劇場スポークスマンの言葉を引用して報じる。「ロイヤル・オペラ・ハウスでのボリショイ劇場バレエ団の夏季ツアーは、調整の最終段階に入っていました。残念ながら、昨今の状況において、このツアーは行なうことができません」。

23.00.
モスクワ市立オレグ・タバコフ劇場の俳優、芸術監督であるヴラジミル・マシコフがドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の承認を支持。これについて彼は自身のInstagramアカウントに投稿。

20.30.
国際現代アートフェスティバル「テリトリア」がウクライナでの情勢、及び文化的連係の維持について表明。フェスティバルの公式SNSに投稿が公開され、アンナ・アバリヒナ、ドミトリー・ヴォルコストレロフ、ロマン・ドルジャンスキー、ティモフェイ・クリャービン、アレクセイ・ノヴォセロフ、エカテリナ・ヤキモヴァ、フェステバルスタッフ一同が署名。

18.05.
トヴェルスキー裁判所での審理の結果、2月24日の単独ピケットを行なった演劇プロデューサー・演出家・劇作家のユーリー・シェフヴァトフは、15+15日の勾留判決。違反条例は以下の2つ――条例20条2項 (「集会・ミーティング・デモ・行進・ピケッティングの組織または開催に関する手順の違反」)及び19条3項(「警察、軍、軍務従事者、連邦保安局、当局関係者の合法的命令への抵抗」)。シェフヴァトフによれば、彼は拘束時に殴打されている。これについてユーリー・シェフヴァトフは自身のFacebookに投稿。

17.23.
ラトヴィア文化大臣ナウリス・プントゥリスがロシア文化省との協力協定を一方的に解消。これに関して、彼は自身のFacebookにて公表した。

16.00.
リトアニア文化大臣シモナス・カイリスの厳しい声明を受けて、リマス・トゥミナスがヴァフタンガフ劇場を解任されたとメディアが報道。本件に関してトゥミナスは公式声明で肯定せず。

14.30.
マヤコフスキー劇場芸術監督のミンダウガス・カルバウスキスがFacebookに「俺もやめる!」と投稿。

13.00.
ボリショイ劇場とマリインスキー劇場は期間未定でアレクセイ・ラトマンスキーのプレミア公演を延期。モスクワではバレエ『フーガの技法』、ペテルブルクではバレエ『ファラオの娘』が延期される。振付家は、レジデンスアーティストとしてアメリカン・バレエ・シアターと共同制作しているニューヨークに出国した。
「その時が来たら、この作品を完成させるためにモスクワに戻って来られることを望んでいます」――ボリショイ劇場SNSでのアレクセイ・ラトマンスキーの発言から。

12.10.
ラトヴィア国立オペラが公式サイトにて、ウクライナにおけるロシアの特別作戦に対して公に非難したアーティストのみと協働すると発表。2月25日以降、各上演前にウクライナ国歌が演奏される。

10.30.
演劇批評家協会が国際演劇批評家協会ウクライナ支部会員へのオープンレターを公開。

1.36.
ニューヨークのカーネギー・ホールで指揮者のヴァレリー・ゲルギエフとピアニストのデニス・マツエフの出演が拒否される。
「カーネギー・ホールとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、ヤニック・ネゼ=セガンが2月25日、26日、27日の三つのコンサートでヴァレリー・ゲルギエフの代わりにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の指導者を務めることを共同でアナウンス」とカーネギー・ホールのウェブサイトに掲載。
デニス・マツエフの代わりを務めるピアニストの名は追って公表される。


2月24日

23.00.
ロシアのシェイクスピア研究者たちがウクライナ情勢について声明を公開。芸術学博士のアレクセイ・バルトシェヴィチ、文学准博士のヴラジミル・マカロフ、ドミトリー・イヴァノフ、哲学准博士のボリス・ガイジン、芸術学博士のナタリヤ・スコロホドや他多数が署名をしている。

22.40.
劇作家、演出家、俳優のエヴゲニー・グリシュコヴェツが自身のブログでウクライナ情勢についてのメッセージを公開。

22.00.
指揮者のヴラジミル・ユロフスキーが週末のベルリン放送交響楽団のプログラム変更について公表。Music Life誌の報道によれば、チャイコフスキーの《スラヴ行進曲》の代わりに、ミハイル・ヴェルビツキ(1815-1870)作曲のウクライナ国家《Ще не вмерла Україна(ウクライナは未だ滅びず)》および同作曲家の交響曲序曲第一番が演奏される。

21.40.
作曲家のアレクサンドル・マノツコフがモスクワ警察メシャンスキー署から釈放。彼に対して申し立てられた告訴は、近日メシャンスキー裁判所で審議される。

20.30.
演劇プロデューサー、演出家、劇作家のユーリー・シェフヴァトフが単独の反戦ピケットにより拘束されたことが判明。〔現在〕内務省トヴェルスカヤ支部にいる。シェフヴァトフの妻、劇作家のスヴェトラナ・ペトリーチュクによれば、彼は殴られ、警察署に一晩留置された。彼は条例20条2項「集会・ミーティング・デモ・行進・ピケッティングの組織または開催に関する手順の違反」の咎で提訴。この違反により1-2万ルーブルの罰金、もしくは40時間以内の強制労働が課せられる。

19:54.
モスクワで無許可の反戦集会に参加したため、作曲家のアレクサンドル・マノツコフが拘束。先立って2月24日昼に、アレクサンドル・マノツコフは Facebookの自身のページで次のように投稿していた。「15時にプーシキン広場に行く。もう待てない。#явыхожу(私は声をあげる)」。
作曲家は〔現在〕モスクワ市メシャンスキー地区ロシア内務省支部にいる。2月24日、モスクワ時間19時54分時点で、38の都市で497人以上が拘束された。

19:53.
〔マリインスキー劇場の〕プリマ・バレリーナ、ディアナ・ヴィシニョーヴァがウクライナでの出来事に対して自身の態度を表明。

18:51.
ジャーナリストのミハイル・ズィガリがロシア国民に向けて次のように呼びかける。「これは私たちの恥だ。しかし残念ながら、私たちの子どもたち、幼いロシア人、まだ生まれてもいないロシア人たちもその責任を負わなければならない」。請願書には俳優のチュルパン・ハマトヴァ、俳優のアナトリー・ベールイ、演出家のヴラジミル・ミルゾエフ、劇作家のイヴァン・ヴィルィパエフや、その他数十名のロシア文化関係者が署名している。

15:49.
若手劇作家フェスティバル「リュビーモフカ」がウクライナでの出来事に関して、その立場を表明。声明全文はフェスティバルのSNSを参照されたい。

15:10.
Театр.doc(テアトル・ドク)がすべての観客と作者に呼びかけ。「私達は信じています。演劇は人々を和解させることのできる芸術であり、ドキュメンタリーとは他者の中に人間を見出す可能性であると」、「それぞれの人間の個性、経験、記憶、運命はかけがえのないものです。人間とは、かけがえのないものなのです」。

15:01.
スカラ座首脳部はロシア人指揮者のヴァレリー・ゲルギエフに対し、ウクライナを巡る状況について立場を明確にするよう要求。応じない場合、3月5日から13日に上演予定のオペラ『スペードの女王』への出演を見送ると警告。
本件についてイタリアANSA誌が以下の様に報じている。「私たちスカラ座ではヴァレリー・ゲルギエフ氏が指揮をする『スペードの女王』が上演されている。氏はヴラジーミル・プーチン ロシア連邦大統領との親密さを公にしており、私たちは氏が自身の立場をはっきりと明確にし、(ウクライナへの)侵攻反対を表明しなくてはならないと考える。そうでなければ、彼との協働関係の中止に踏み切ることになる」。

14:30.
エレーナ・コヴァリスカヤはFacebookでウクライナで起こっていることへの抗議の意思表示として、メイエルホリド・センターのディレクターを辞任することを表明。

13:35.
演劇プロデューサーのレオニード・ロベルマンがフェイスブックにて、ドミトリー・クルィモフ演出『ボリス』のポーランドツアーキャンセルを発表。テアトル誌はポストの全文を以下に引用する。
「親愛なるレオニード、残念ながら、目下の政治的状況をふまえ、私たちの招聘(『ボリス』のツアー)および2022年のフェスティバルで予定されていた協働を中止せざるを得ないことをお知らせいたします……
この2年間、私たちは国際演劇祭『Kontakt』(於トルン市、ポーランド)のプログラムへの『ボリス』の参加について話し合いを続けてきました。先方は私たちが来ることを本当に望んでいた! 彼らはこのツアーが成立するように可能、不可能を問わずあらゆることをやってくれました。クルィモフはじめ我々に関係するあらゆることを本当に大切に思っています。
ああ!……2月24日は私たちのプランを丸ごと消し去ってしまいました。それだけでなく、遠い未来のプランも。今となっては、3月の公演が行なえるかどうかもわかりません。というのも、我々がイスラエルから招聘したアレクサンドル・デミードフが3月に本当に飛び立てるのかどうかも、そもそも3月に他のことが「飛べる」のかどうかもわからないのです。現状わかっているのはただ一つ――今月、予定されている『ボリス』が上演されるということです。今まで、上演に足を運んでくれるよう観客の人たちにお声がけしたことはありませんが、今回ばかりはお願いします。いらしてください! この作品は私たち自身についてです! 今現在についてです! 前にも後にも二度とない現在についてなのです!」

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)概要

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)概要

На фото – сцена из спектакля Театра Вахтангова “Война и мир” © Александра Торгушникова

【概要】

これは、2022年2月24日のウクライナ侵攻以後、ロシア演劇界の動向を記録したロシアの演劇雑誌テアトル(Театр)の記事の翻訳である。

https://oteatre.info/hronika-teatr-vvv/

その他、必要な情報、補足等があれば「翻訳」を越えて書き加えることもある(その際は明記する)。また、テアトル誌の誌面には、演劇以外の文化情報も記載されているが、文化全般の情報に関して網羅的に記されているわけではない。

3月4日、ウクライナにおけるロシア軍の行動に関して「フェイク情報」を拡散した個人・団体に実刑を科す法案(便宜上「フェイク禁止法」と記す)がプーチン大統領によって承認された。これにより、ロシアにおける言論活動は一変し、ウクライナ情勢に関する情報はかき消された。テアトル誌のタイムラインも同様で、3月4日を境にその内容は大きく変わり、それ以前の記事を削除修正するとともに、それ以降の情報も踏み込んだ記述は避けられている(たとえば、「ある演劇関係者が反戦表明をしたために職を追われた」という記述は、単に「その職をやめた」という記述になったりしている)。ここで翻訳しているものも、基本的には3月5日以降の記載内容である。それ以前の削除された内容、修正される前の内容は含んでいない。それゆえ、このタイムラインを読む際に注意すべきは、その裏にはもう一つの文脈がたしかにある、ということを意識することだろう。

一方で、すべてを一つのコンテクストに結びつけないように注意する必要もある。憶測や思い込みで事実以上のことを判断する危険性はいまさら繰り返すまでもない。これらは矛盾することのように思えるかもしれないが、われわれの世界はすべてが明確な答えで構成されているわけではない。それでも、ロシア国内でも声をあげている、あげようとしている文化関係者がいること、そしてまた、声をあげることがいかに難しいか、ということを考える必要はある。

今回の翻訳にあたって、テアトル誌編集長マリーナ・ダヴィドヴァ氏の許諾を得た。彼女からは「曖昧な」記述には理由があり、その背景にあるものを読み取って欲しい、と依頼された。ダヴィドヴァ氏は、今回のウクライナ侵攻に際し、演劇界で最も早く反戦の声をあげた人物である。彼女の呼びかけには3月4日時点で1000を超える署名が集まっていたが、それも3月5日には閉じられた。一方、ロシアで最も歴史のある演劇雑誌テアトルの編集長として発言力のあった彼女は、それ以降、自宅アパートのドアに体制支持を意味する文字 Z を大きく書かれるなど直接的な脅迫を受け、3月19日現在、身の危険からリトアニアに避難している。彼女は、出国の際に国境で連邦保安局の尋問を受けたこと、自宅が三つの監視カメラで盗撮されていた事実が判明したことなど、その経緯を生々しく記してもいる。そうしたものも機会があったら紹介したい。

曖昧な記述にとどまらざるを得ないことの苦しみに共感を示しながらも、情報が膨大に生み出され消費されていく状況にあらがい、この間の記録として文字を留めておくことの意義を信じたい。

なお、このタイムラインはチェマダン編集部の伊藤愉(明治大学)と、3月上旬にアレクサンドリンスキー劇場(ペテルブルグ)での文化庁在外研修派遣から緊急一時帰国した守山真利恵の2名が作成している。

*更新は随時行なう。適宜修正を加える可能性もある。

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

目次(2025年11月19日現在再構築中

第1週タイムライン

第2週タイムライン

第3週タイムライン

第4週タイムライン

第5週タイムライン

第6週タイムライン

第7週タイムライン

第8週タイムライン

第9週タイムライン

第10週タイムライン

第11週タイムライン

第12週タイムライン

第13週タイムライン

4ヶ月目タイムライン

5ヶ月目タイムライン

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