ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)概要


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【概要】

これは、2022年2月24日のウクライナ侵攻以後、ロシア演劇界の動向を記録したロシアの演劇雑誌テアトル(Театр)の記事の翻訳である。

http://oteatre.info/hronika-teatr-vvv/

その他、必要な情報、補足等があれば「翻訳」を越えて書き加えることもある(その際は明記する)。また、テアトル誌の誌面には、演劇以外の文化情報も記載されているが、文化全般の情報に関して網羅的に記されているわけではない。

3月4日、ウクライナにおけるロシア軍の行動に関して「フェイク情報」を拡散した個人・団体に実刑を科す法案(便宜上「フェイク禁止法」と記す)がプーチン大統領によって承認された。これにより、ロシアにおける言論活動は一変し、ウクライナ情勢に関する情報はかき消された。テアトル誌のタイムラインも同様で、3月4日を境にその内容は大きく変わり、それ以前の記事を削除修正するとともに、それ以降の情報も踏み込んだ記述は避けられている(たとえば、「ある演劇関係者が反戦表明をしたために職を追われた」という記述は、単に「その職をやめた」という記述になったりしている)。ここで翻訳しているものも、基本的には3月5日以降の記載内容である。それ以前の削除された内容、修正される前の内容は含んでいない。それゆえ、このタイムラインを読む際に注意すべきは、その裏にはもう一つの文脈がたしかにある、ということを意識することだろう。

一方で、すべてを一つのコンテクストに結びつけないように注意する必要もある。憶測や思い込みで事実以上のことを判断する危険性はいまさら繰り返すまでもない。これらは矛盾することのように思えるかもしれないが、われわれの世界はすべてが明確な答えで構成されているわけではない。それでも、ロシア国内でも声をあげている、あげようとしている文化関係者がいること、そしてまた、声をあげることがいかに難しいか、ということを考える必要はある。

今回の翻訳にあたって、テアトル誌編集長マリーナ・ダヴィドヴァ氏の許諾を得た。彼女からは「曖昧な」記述には理由があり、その背景にあるものを読み取って欲しい、と依頼された。ダヴィドワ氏は、今回のウクライナ侵攻に際し、演劇界で最も早く反戦の声をあげた人物である。彼女の呼びかけには3月4日時点で1000を超える署名が集まっていたが、それも3月5日には閉じられた。一方、ロシアで最も歴史のある演劇雑誌テアトルの編集長として発言力のあった彼女は、それ以降、自宅アパートのドアに体制支持を意味する文字 Z を大きく書かれるなど直接的な脅迫を受け、3月19日現在、身の危険からリトアニアに避難している。彼女は、出国の際に国境で連邦保安局の尋問を受けたこと、自宅が三つの監視カメラで盗撮されていた事実が判明したことなど、その経緯を生々しく記してもいる。そうしたものも機会があったら紹介したい。

曖昧な記述にとどまらざるを得ないことの苦しみに共感を示しながらも、情報が膨大に生み出され消費されていく状況にあらがい、この間の記録として文字を留めておくことの意義を信じたい。

なお、このタイムラインはチェマダン編集部の伊藤愉(明治大学)と、3月上旬にアレクサンドリンスキー劇場(ペテルブルグ)での文化庁在外研修派遣から緊急一時帰国した守山真利恵の2名が作成している。

*更新は随時行なう。適宜修正を加える可能性もある。

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

目次

第1週タイムライン

第2週タイムライン

第3週タイムライン

第4週タイムライン

第5週タイムライン

第6週タイムライン

第7週タイムライン

第8週タイムライン

第9週タイムライン