ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)7ヶ月目

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

【概要】はこちら
【第1週】はこちら
【第2週】はこちら
【第3週】はこちら
【第4週】はこちら
【第5週】はこちら
【第6週】はこちら
【第7週】はこちら
【第8週】はこちら
【第9週】はこちら
【第10週】はこちら
【第11週】はこちら
【第12週】はこちら
【第13週】はこちら
【4ヶ月目】はこちら
【5ヶ月目】はこちら
【6ヶ月目】はこちら

 

 

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)7ヶ月目

Театр.誌原文(7ヶ月目)

(翻訳:伊藤愉)

▶︎公開:9月24日04:32
▶︎更新:10月4日21:45、10月7日01:50、10月7日15:13


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。


編集部は週ごとのタイムラインを月ごとのタイムラインに切り替えることに決めた。だが、私たちは近いうちにこうしたタイムラインを公開する必要がまったくなくなることを望んでおり、それを信じている。


9月23日

14:30.
ロマン・ヴィクチュク劇場では9月24日から10月9日までの全上演が中止された。公式の発表では、これは「技術的理由」によるとのこと。劇場スタッフから寄せられた情報によると、ストロムィンカ 6〔劇場の住所〕の建物には今後二週間召集事務所が設置されるという。また編集部の調べでは、モスクワ博物館の建物の一つが召集事務所として使われることが判明した。


9月20日

22:30.
モスクワ芸術座で、同日亡くなったセルゲイ・プスケパリスを追悼するため1分間の黙祷が捧げられた。俳優、演出家のプスケパリスは以前モスクワ芸術座で活動しており、2011-2013年には芸術監督補佐を務めた。
エゴル・ペレグドフの『シラノ・ド・ベルジュラック』上演後、本舞台で、作品には出演していなかった現在の芸術監督コンスタンチン・ハベンスキーが、セルゲイ・プスケパリスに関する短いスピーチを客席に向けて行なった。その後、場内で演出家を追悼する1分間の黙祷が捧げられた。

15:40.
ヤロスラヴリ州文化局の引用しながらタス通信は、ヴォルコフスキー・フェスティバルはセルゲイ・プスケパリスの死を悼んで拍手なしで続行すると伝えた。でフェスティバルの組織者であるフョードル・ヴォルコフ劇場の芸術監督は、本日、ドンバスに向かうはずだった装甲されたFord Transitで交通事故に遭い、亡くなった。この事故はヤロスラヴリ州のロストフ地区で起こり、プスケパリスが乗っていた車が大型トラックと衝突したものだった。
「劇場は拍手なしでフェスティバルを続行する決定を受け入れた」と当地域文化局の発表をタス通信は引いている。ヴォルコフスキー・フェスティバルは9月17日に始まり、25日まで続く。アントン・フョドロフの『イヴァノヴォ 幼少期』(カザン青年観客劇場)、ダニル・チャシンの『実入り(«доХХХод»)』(スロノフ記念サラトフ・ドラマ劇場)、エヴゲニー・ヴォスクレセンスキーの一人芝居『ゴーゴリ対ゴーゴリ』、そしてリマス・トゥミナス『戦争と平和』(ヴァフタンゴフ劇場)はフェスティバルの最後まで上演される。

12:15. 
国家予算が絡む契約の締結を阻止する法案が国会(下院)に提出された。「国産映画の製作者、配給者、上映者、あるいは映画製作組織を構成するメンバーの少なくとも一人が刑法第20条3.3項(ロシア連邦およびその国民の利益の保護、および国際平和と安全を支える目的であるロシア連邦の軍隊を用いることへの信用失墜を狙った公的な行動、ロシア連邦の国家機関がその権限を行使することへの信用失墜を狙った行為)あるいは第20条3.4項(ロシア連邦、ロシア国民あるいはロシアの法人に対して制限的措置の呼びかけ)に基づく裁判所の行政処分を受けた場合に」その処分と受けると文書には記されている。


9月19日

16:00.
2022年の「バルチースキー・ドム」フェスティバルのプログラムにゴーリキー記念モスクワ芸術座の作品『エセーニンの女性たち』(ザハル・プリレピンのテキストに基づく)が加わる。
2022年の「バルチースキー・ドム」フェスティバルのプログラムからは、先日ヨシフ・ライヘリガウズ『天使たちはタバコを吸いに外に出る』、ドミトリー・クルィモフ『ボリス』、マルファ・ゴルヴィツ『ゴルカ』、ボリス・パヴロヴィチ『ツィオルコフスキー』が除外されていた。
直近では、プログラムからリマス・トゥミナスの『戦争と平和』が消えている。二つのフェスティバル(「バルチースキー・ドム」と「アレクサンドリンスキー」)でのこの作品の上演中止に関して、ヴァフタンゴフ劇場支配人のキリル・クロークは「技術的な問題」と説明している。
中止となった作品の代わりに、プログラムには他の作品が加わり、その中に、ゴーリキー記念モスクワ芸術座のガリーナ・ポリシュク演出『エセーニンの女性たち』が含まれる。


9月18日

15:15.
アーラ・プガチョヴァは彼女自信を外国エージェントに指定するよう求めた。彼女は自身のSNSで「ロシア司法省へのメッセージ」を公開。その中で、とりわけ次のように述べられている。「どうぞ私を我が愛すべき国の外国エージェントリストに入れてください。私は、公正で、誠実で、正直な人間である、真の、清廉潔白なロシアの愛国者である夫と連帯しています」。プガチョヴァの夫であるマクシム・ガルキン*はロシア司法省によって、9月16日に個人としての外国エージェントリストに含められた。
*ロシア連邦の外国エージェントに指定。


9月15日

16:40. 
ロシア・ナショナル・オーケストラ(RNO)は創設者のミハイル・プレトニョフとの契約を解消した。
RNO公式のテレグラムチャンネルで公表された。次のように記されている。「ロシア・ナショナル・オーケストラ芸術監督ミハイル・プレトニョフとの契約は更新されません。オーケストラ経営陣のこうした判断は、芸術監督が実際的に不在の状況では不可能な本オーケストラの発展における長期的な戦略を構築する必要があることに起因する。また彼がオーケストラとの活動の今後のプランや展望について設置者(ロシア文化省)に情報を提供しなかったことも関係している。
2020年末以降、オーケストラと芸術監督との創作における密接な交流は実質的になく、オーケストラとの実際的な創作活動は長期間に亘って招聘指揮者が行なっており、その間、М. В. プレトニョフはほとんどの期間を国外で過ごしていた」。
また、RNOの発表では新しい芸術監督の候補者はまだなく、選定にはしばらくの時間を要すると書かれている。2022年4月1日、文化省はパーヴェル・コガン率いるモスクワ国立交響楽団のディレクター、イリーナ・シゴレヴァをRNOディレクターに任命した(シゴレフは二つの役職を兼任することが予定されている)。
ClassicalMusicNewsが公開したクロアチアのメディアVecernj listでの最近のインタビューで、プレトニョフ はスイスに35年住んでいること(RNOは2023年に33年目を迎える)、オーケストラは現在国外にいる彼のところに来ることができないこと、彼自身もモスクワに行くことができないことを語っている。そのため、彼は新しい団体Rachmaninoff International Orchestraをつくった、と。「私たちはブラチスラヴァに集まりました。私のロシア・ナショナル・オーケストラからは18人の演奏者がやってきました。さらに、ウィーンやブラチスラヴァ、そしてウクライナから演奏者たちが加わりました」とプレトニョフ は説明した。

15:45.  
ヴァフタンゴフ劇場はリマス・トゥミナス演出『戦争と平和』のペテルブルグ上演の中止を発表。劇場サイトには、特に追加のコメントもなく、ヴァフタンゴフ劇場支配人のキリル・クロークがアレクサンドリンスキー劇場支配人セルゲイ・エメリヤノフに宛てた手紙のスキャンデータが掲載されている。手紙では次のように語られている。「残念ですが、以前から予定されていた2022年9月30日、10月1、2日のアレクサンドリンスキー劇場舞台での『戦争と平和』の上演は、技術的理由により上演できなくなったことをお知らせします」。
『戦争と平和』のツアーはペテルブルグでアレクサンドリンスキー劇場と「バルチースキー・ドム」と、同時に行なわれる二つのフェスティバルに参加するはずだった。どちらの劇場・主催者もツアーが行なわれない旨を伝える同一のメッセージを公開した。
これ以前、「バルチースキー・ドム」は予定演目にあったドミトリー・クルィモフ、ヨシフ・ライヘリガウズ、ボリス・パヴロヴィチ、マルファ・ゴルヴィツの上演を中止し、それらを別の作品に差し替えていた。


9月14日

10:00. 
コンスタンチン・ボゴモロフは『理想の夫』から十字架の形象を取りやめることに決めた。
演出家のコンスタンチン・ボゴモロフは自身のSNSページで『理想の夫 喜劇』を修正することを受け入れたと述べた。この削除は、「信仰の象徴」の場面に関係する。演出家自身によれば、「真の信仰家の人々の苦痛」を呼び起こさない判断に「長らく思い至らなかった」という。
ボゴモロフの投稿では次のように述べられている。「すでに10年前の作品ですが、この作品は観客と俳優たちに変わらず愛されています。この10年間世界では多くの変化があった。しかしそれで作品が変わることはありませんでした。しかし私が歩んできた道は、いまでも自分にとって愛すべきこの作品に修正を施す判断に至りました。苦情や声明を書き、芝居を妨害しようとしてきた無知な宗教的「活動家」からの攻撃的なパフォーマンスに動揺したことは一度もありません。こうした人々は真の信仰家たちとは関係がないのです。『理想の夫』が観客から大歓迎されたという壁に直面し、彼らはもう長いこと静かにしています。そして現在、作品は生き続け、それを脅かすものは何もない。個人的な、率直に言えば、長らく考えてきた決断をする時がきたということです。
信仰の象徴に関わるひと時は作品から姿を消します。苦しみと救済の偉大なシンボルに関わる偉大なるひと時でした。今日、異なる形でこのことを理解している私は『理想の夫』に、私の世界観、内省、知や自由や深遠さへの自分の理解と一致しなくなったものを残しておきたくないのです。そしてこうしたひと時が、真の信仰家の人々に痛みや憂慮をもたらしていたかもしれないことを悔やんでいます。叫び声をあげる攻撃的な活動家たちに対してではなく、信仰が個人的な選択であり個人的な道筋であった人々に対して、つまり教養があり、知的で、複雑な人々、現代演劇や現代の文化を愛することは稀だが、キリストが舞台上で演じられる対象となったとき、公然とではなく個人的な、とはいえそれに劣らぬ強い痛みを感じるような人々に対して、そう思うのです」。
『理想の夫 喜劇』は、昨シーズン劇場が何度となく上演の終了をアナウンスしていたが、モスクワ芸術座のレパートリー に残る。現在、ボゴモロフはモスクワ芸術座で『新しい楽的なもの』の稽古を行なっている。これはフセヴォロド・ヴィシネフスキー の戯曲『楽天的悲劇』をモチーフにした作品である。この演出作品はモスクワ芸術座の本舞台で2022-2023年シーズンに初演を迎える。


9月13日

19:09.  
「ロシスカヤ・ガゼータ」は9月12日にウクライナ・ナショナルオペラ劇場のバレエ・ソリストのアレクサンドル・シャポヴァルがドンバスで戦死したと伝えた。
バレエ・マスターで前ボリショイ劇場バレエ部門芸術監督のアレクセイ・ラトマンスキーが自身のSNSページに次のように投稿した。「United Ukrainian Balletが明日の『ジゼル』初演でロンドン・コロシアム劇場への初めての上演を準備していた今日、私たちは、ウクライナ・ナショナル・オペラ劇場のアレクサンドル・シャポヴァルの死を知った。彼もまたキエフ国立バレエ学校の教師だった。私たちのダンサーたちの多くが彼と友人で、彼の元で働き、学んだことがあった。私はサーシャ〔アレクサンドル〕のことをよく覚えている。彼は私がキエフで初めてバレエを上演した際に出演してくれた。安らかに、サーシャ。僕たちは君の思い出の中で踊り続ける」。
アレクサンドル・シャポヴァルはウクライナ人芸術家、ウクライナ・ナショナル・オペラ劇場のバレエ・ソリスト、ウクライナ功労芸術家。

10:35. 
リトアニア・ロシア・ドラマ劇場(LRDT)はヴィリニュス・オールド・シアターに名称を変更する。
劇場の名称変更の命令に署名したのはリトアニアの文化大臣シモナス・カイリスである。この件は、本日リトアニア文化省のサイトで公表された。また、5月には新しい名称を選定するためのワーキング・グループが組まれ、構成メンバーの中には、リトアニア・ロシア・ドラマ劇場や同省から数人ずつ、劇作家のマリュス・イヴァシキャヴィチュス(Марюс Ивашкявичю)、リトアニア音楽・演劇アカデミーの演劇映画学部長エロナ・バイリネネ(Элона Байоринене)、ヴィリニュス大学ロシア文学科主任パーヴェル・ラヴリネツ、ヴィリニュス・ポーランド文化センターディレクターのアルトゥル・リュドコフスキーらがいた。


9月12日

UPD:マリウポリ・ドラマ劇場は、「技術的理由により」モスクワに来ることができない、と発表した。

22:15. 
10月、マリウポリ・ドラマ劇場が、ヴァフタンゴフ劇場総支配人キリル・クロークの招待に応じて、モスクワに来る。これに先立って、クロークはマリウポリの劇場の支援を表明していた。
自分のSNSのページでキリル・クロークは次のように発言している。「マリウポリから来た仲間たちは様々なことを経験してきました。10月にはアルバート通り〔ヴァフタンゴフ劇場が位置する通りの名称〕にやってきて、劇場のホテルに泊まり、芝居に通い、ワークショップに参加します。ヴァフタンゴフ劇場の団員たちはかつて、1941年、ファシストの爆弾がアルバート通りのこの劇場におち、1948年になってようやく再建されるまで、同様の歴史を経験しました。だから、我々にとってドンバスからきた仲間たちに肩を貸し、彼らが孤立しているのではないということを理解してもらうことが重要なのです」。
2022年8月、メディアは今年の11月に向けてマリウポリ・ドラマ劇場がモスクワ・ツアーの準備をしていることを報じ、「ロスコンツェルト」がその企画者だと公表されていた。
今週、マリウポリ・ドラマ劇場に新しい芸術監督のアレクサンドル・ロストフが着任したことが明らかになった。彼はロシア功労芸術家であり30年以上に亘って、スタヴロポリ・レールモントフ・アカデミー劇場で働き、近年はモスクワに住んでいた。
アレクサンドル・ロストフは、劇団員たちの状況に関して、IvanovoNewsで次のように発言している。「私が着任したのはごく最近のことです。当然、数多くの問題に直面しましたが、克服しうるものです。というのも、悲しみを乗り越え、戦闘を乗り越え、地下室や爆撃を乗り越えた人々というのは、〔これまでと〕まったく違う存在になっているからです」。
同劇場の前ディレクター代理・芸術監督代理リュドミラ・コロソヴィチはマリウポリを離れ、7月16日、ウクライナ人詩人で政治犯のヴァシル・ストゥスを扱った作品『国民の叫び』をウジホロドのザカルポツカヤ州音楽ドラマ劇場の舞台で上演している。

16:40. 
今年5月にロシアを離れた演出家ニキータ・ベテフチンはドイツで政治亡命者の資格を得る。自身のSNSページで彼は次のように語っている。
「ドイツ政府は公式に僕を政治的亡命者と認めた。これはつまり、3年間は僕とセミョン(ベテフチンの飼い犬−編集部注)がドイツで、シュトゥットガルトで生活できるということだ。私はベルリン反戦運動のボランティア・グループに、セルゲイ・ネフスキーに、この間僕たちのことを心配してくれたすべての人たちに感謝を伝えたい」。
ロシアにいた際、ベテフチン1ヶ月かけてファサードにZの文字のバナーを掲げた劇場をリストアップし、演劇人たちにそうした劇場と仕事をしないよう呼び掛けた。その後、直前に現代戯曲学院と統合したメイエルホリド・センターでベテフチンの『クリスマス』の上演が中止され、エレクトロ・シアター「スタニスラフスキー」では、彼の作品『ロナルドはおばあちゃんに追いつけない』が中止された。その後、ベテフチンは出国した。

14:30.  
ノヴォシビルスクの「クラスヌイ・ファケル(Red Torch)」劇場はグレブ・チェレパノフの『白い病』(カレル・チャペック作)の初演「凍結」を発表した。
この件は劇場の公式サイトで公表された。今週、「ニュース&アナウンス」ページに観客へのお知らせが掲載された。そのテキストを全文後悔する。
「親愛なる観客の皆さん!
残念ながら、9月24、25日に予定されていた『白い病』の初演は延期となることをお知らせします。本作品は2020年から構想されてきましたが、様々な状況がその時から変わりました。現段階では、作品は「凍結」となっています。
「こうしたことは劇場では起こりえる。つまり、ある素材が特定の時期に突然あまり適さなくなり、それを考慮しないことは不可能であるというように」と演出家のグレブ・チェレパノフは述べています。そのため、私たちは初演を迎えることをしばらく延期することに共同で決めました。しかし私たちはこの作品が、それでもいつか上演されるであろうことを信じていますし、その時は作品にとっても私たちにとってもより適した時期であるはずです。
願わくは、私たち全員にとって唯一の正しく選択しうるこの決定に皆さんが理解を寄せてくれますことを」。
1937年に書かれたカレル・チャペックのSF戯曲は、ある未知の病によるパンデミックと差し迫った戦争を背景にその病の治療法を模索する内容である。


9月11日

11:50. 
モスクワでドネツク国立アカデミー・ブロヴナ音楽ドラマ劇場の作品『I KZOW TRVTH(Я ZНАЮ ПРАVДУ)』が初演を迎える。
9月14日、15日にオレグ・タバコフ・モスクワ演劇学校の舞台で、書籍『ドンバスでの戦争:民衆の記録』の資料に基づいた「この8年間の共和国住民たちの壊れた運命についてのドキュメンタリー・ドラマ」を劇場の俳優たちが上演する。元となった資料集は、230の回想から成り、ドネツクで2017年に出版された。地元メディアによると、『I KZOW TRVTH(Я ZНАЮ ПРАVДУ)』の演出家であるウクライナ功労芸術家のアッラ・ウリヤノヴァは、書籍の資料に劇場自身が集めた証言を追加しているという。ドネツクでの記事によると、上演準備は2018年には行なわれていたが、初演は迎えられていなかったという。
9月17日にはニジニ・ノヴゴロド青年観客劇場の舞台でも『I KZOW TRVTH(Я ZНАЮ ПРАVДУ)』が二回上演される。アナウンスでは次のように書かれている。「舞台は地下の一室。人々はウクライナの武装部隊の集中砲火から身を隠し、生活している。彼らは他人同士で、たまたますれ違っただけであり、彼らを結びつけるのは、安全な場所、テレビ、戦争の話だけだった。語り手たち自身が、戦争のあらゆる苦難を耐えなければならなかったドンバス住民の集合的イメージなのだ」。


9月9日

19:00. 
ミハイル・ドゥルネンコフが「軍の信用失墜」の罪で起訴される。
本日9月9日、劇作家ミハイル・ドゥルネンコフが「ロシア軍の信用失墜」の条文に基づく行政法違反で起訴されたとの情報がネットで報じられた。彼自身は、そのことを報道で知った、と述べている。
刑法第20条3.3項1号(「ロシア連邦およびその国民の利益の保護、および国際平和と安全を支える目的であるロシア連邦の軍隊を用いることへの信用失墜を狙った公的な行動、ロシア連邦の国家機関がその権限を行使することへの信用失墜を狙った行為」)に基づく起訴であり、本件はモスクワのトヴェルスコイ地方裁判所に登録された。
4月19日、ミハイル・ドゥルネンコフはSNSの自身のページで、ウクライナにおけるロシア軍の行為を批判していた。その後、ロシア連邦演劇人同盟代表のアレクサンドル・カリャーギンは公式にミハイル・ドゥルネンコフの発言を批難し、同盟へのドゥルネンコフの所属継続を疑問視した。この間、モスクワ芸術座演劇スタジオ学校はミハイル・ドゥルネンコフとの労働契約を解消している。この出来事の少し前に劇作家はロシアを出国し、オンラインで教鞭をとっていた。
ミハイル・ドゥルネンコフは本誌編集部に対して、本日の行政法違反に関する情報について次のようにコメントした。「公式の通知は何も届いていないが、私はロシアにいないし、気づかなかったのかもしれない。申し立てのためには、ロシアの裁判所の行為に何らかの意味を見出すか、公正さに希望を抱くかでしょう。が、どちらも私には無理である以上、何かをするつもりもありません」。
同様に、本日、テアトル誌の編集長マリーナ・ダヴィドヴァ氏が同条文に基づく行政法違反で起訴されたことが明らかになっている。

18:20. 
現代戯曲学院で劇場団員たちの会合が開かれた。劇場をやめた現代戯曲学院創設者のヨシフ・ライヘリガウズに代わって芸術監督に任命されたドミトリー・アストラハンは2022-2023シーズンのプランを語った。
「私はこの劇場にある最良の部分、劇場の方向性を保つよう努めます。それは、若き作家たちの発掘であり、若き劇作家たちとの協働であり、それによって戯曲が初めて上演されるのがこの場所である、ということです」。劇場はこのようにアストラハンの言葉を引いている。「私はここには保たれるべき一定の方針があることを理解しています。しかし、当然ながら、興味のスペクトルは拡大していきたいのです」。この拡大とは、新しい芸術監督にとっては、古典的なテキストを意味する。
劇場の〔シーズン・〕プランの中には、オストロフスキーの記念日にむけた『美しき男性(Красавец мужчина)』、スホヴォ=コブィリン作『タレルキンの死』、そしてアストラハンとシナリオ作家のオレグ・ダニロフの共作戯曲『ヴォーヴァとマーシャ』の初めての上演が含まれている。その他、ロマン・サムギンの『生存(выживание)』、パーヴェル・リュビムツェフの『チェーリーのおばさん』(ブランドン・トーマス作)、アレクサンドル・ソゾノフの『女性の幸せ』(ミハイル・バルシェフスキー/エカテリーナ・クレトヴァ作)、そしてイヴァン雷帝とアンドレイ・クルプスキーの往復書簡を素材とした作品が予定されている。最後の作品は「合唱やロシア民謡が挿入される社会評論的作品となるはずだ」とタス通信はアストラハンの言葉を伝えている。そして、同通信によると、「劇場では子ども向けの喜劇・笑劇(コメディ・ファルス)の『結婚式とゾンビ』」(この民衆劇はシナリオ作家のヴラジスラヴァ・アマンゲリドィエヴァが執筆)、およびファミリー向け上演としてゴーゴリの『クリスマス・イヴ』が予定されている。
モスクワ文化庁管轄の他の劇場と同じく、現代戯曲学院は9月はじめに、予定されていたドミトリー・クルィモフの作品の上演を中止した。劇場サイトでの公式アナウンスでは、『みながそこにいる。(ВСЕ ТУТ.)』は「技術的理由により」上演できない、と記されている。

17:00. 
2022年の「バルチースキー・ドム」フェスティバルは新しいプログラムを公開した。先日中止となったボリス・パヴロヴィチの『ツィオルコフスキー』に代わって、ヤロスラフスキーのフョードル・ヴォルコフ・ドラマ劇場は『父たちと子たち』(アンジェイ・ブベニ演出)を上演する。ユジノ・サハリンスクの「チェーホフ・センター」は、マルファ・ゴルヴィツの『ゴルカ』に代わり、アレクサンドル・ソゾノフの『火曜日 短い一日』(スヴェトラナ・ペトリーチュク作)をペテルブルグに持ってくる。またフェスティバルの演目予定には、カレリア共和国人形劇場の『査察官』(イーゴリ・カザコフ演出)とモスクワ市立マヤコフスキー劇場の『革新者たち』(ニキータ・コベレフ演出)が加わえられている。2022年の「バルチースキー・ドム」の大トリは、予定されていたドミトリー・クルィモフの『ボリス』に代わって、プスコフ・プーシキン・ドラマ劇場の『モルヒネ』(アントン・フョードロフ演出)が担う。
9月2日に「バルチースキー・ドム」は演目に含まれていた二つの作品、ドミトリー・クルィモフ『ボリス』(アート・パートナー21)とヨシフ・ライヘリガウズの『天使たちはタバコを吸いに外に出る(«Ангелы вышли покурить»)』(現代戯曲学院)の上演中止を発表した。同時に、プログラムからはユジノ・サハリンスクの「チェーホフ・センター」で上演されたマルファ・ゴルヴィツの『ゴルカ』も消されていた。9月9日に、フェスティバルのサイトとSNSで、マルファ・ゴルヴィツとボリス・パヴロヴィチの作品の中止は発表された。

16:40. 
2022年の「バルチースキー・ドム」演劇フェスティバルはプログラムからボリス・パヴロヴィチとマルファ・ゴルヴィツの作品を除外した。「バルチースキー・ドム」のSNSで、次のように発表されている。「親愛なる観客の皆さん! 10月11日の『ツィオルコフスキー』と10月13日の『ゴルカ』は上演されません。チケットはすべて払い戻しとなります」。
9月2日に「バルチースキー・ドム」は演目に含まれていた二つの作品、ドミトリー・クルィモフ『ボリス』(アート・パートナー21)とヨシフ・ライヘリガウズの『天使たちはタバコを吸いに外に出る(«Ангелы вышли покурить»)』(現代戯曲学院)の上演中止を発表した。同時に、プログラムからはユジノ・サハリンスクの「チェーホフ・センター」で上演されたマルファ・ゴルヴィツの『ゴルカ』が消されていたが、この作品の中止に関しては公式発表はなかった。「ゴールデン・マスク賞2022」で舞台美術賞を受賞し、その他に6つの賞にノミネートされていたヤロスラフスキーのヴォルコフ劇場の作品『ツィオルコフスキー』は、そのタイミングではまだ演目予定に残っていた。『ツィオルコフスキー』の演出ボリス・パヴロヴィチは本誌に対し、中止に関する公式の説明はフェスティバルから受けていないと話した。本誌は「バルチースキー・ドム」に質問状を送ったが回答はなかった。

14:34.  
マリーナ・ダヴィドヴァが行政法違反で起訴される。
テアトル誌編集長のマリーナ・ダヴィドヴァがロシア軍の信用失墜に関する行政法違反で起訴された。
8月18日、マリーナ・ダヴィドヴァは、ペトロフカ通りの検察庁への出頭し、行政法違反行為に関する起訴手続きを受けるよう、テレグラムを受け取った。
テアトル誌編集長は編集部にそのテレグラムと2022年8月25日に発せられた行政法違反の起訴状を渡した。
罪状はダヴィドヴァのSNS個人ページへの書き込みに関する刑法第20条3.3項1号(「ロシア連邦およびその国民の利益の保護、および国際平和と安全を支える目的であるロシア連邦の軍隊を用いることへの信用失墜を狙った公的な行動、ロシア連邦の国家機関がその権限を行使することへの信用失墜を狙った行為」)。
なぜ今日になってマリーナ・ダヴィドヴァが基礎に関する情報を公表しようとしたのかについて、彼女は次のように答えている。「なぜかといえば、この情報がいま公表されたからです。このことで騒ぎ立てるつもりもありませんでした。人々の犠牲に比べればくだらないことです。
法廷で何かを証言するつもりはありません。第一に、私はロシアにいないですし、戻ろうとも思っていません。第二に、もう長らく正義というものが何ひとつ存在していないこと。弁護士も助けてくれません。長らくすべてが流されるままで、法律体系も、論理でさえもまったく機能していません。請願書を書いたのは2月24日のことです。つまり、信用失墜とかの法律が出てくる以前の話なんです。法律そのものが憲法と矛盾している。でも、重要なのは、いかなる法律も遡及的には機能しないということです。私の請願書には軍隊の信用失墜のことなど書かれていない、ということでもありません。そこには、「軍隊」という文字など書かれていないのです。そこに書かれていたのは、軍事作戦の開始についての政治的決定に対しての抗議です。この命令は本当に馬鹿げていて、書かれていることはまったくもって無教養そのものです。
例えば、こんな感じで。
「行政法違反の実際が確認されたのは、視覚的情報媒体での録画、およびその他の証言にに基づく2022年8月10日付の検査調書」。
マリーナ・ダヴィドヴァは2010年からテアトル誌の編集長を務める。2022年2月24日、彼女はウクライナでの軍事行動を停止する請願書を公開した。この後、玄関ドアにZと書かれ、多数の脅迫が寄せられたことからロシアを離れてた。
また同日、劇作家ミハイル・ドゥルネンコフも行政法違反で起訴されたことが明らかになった。本誌は、引き続きこの件を追う。


9月6日

15:00. 
ロシア連邦捜査委員会長官のアレクサンドル・バストルィキンはヴァフタンゴフ劇場の第102期のシーズン開幕を宣言した。
「ロシースカヤ・ガゼータ」によると、劇団員の集合日である本日、アレクサンドル・バストルィキンがヴァフタンゴフ劇場を訪問した。
〔シーズンの〕プラン発表前に、彼が最初に言葉を発し、支配人のキリル・クロクが国家メダルとして「ピョートル大帝350年記念」が、劇場団員たちには表彰状が授与されたことを伝えた。
バストルィキンは俳優たちに、重要なのは「教師、上司、司令官」(つまり劇場指導者ということだ)への忠義であり、現在彼らは「祖国にとって必要」であり、「工作員や抵抗勢力にとってではない」と語りかけた。
また捜査委員会の長官は、現在まで語り継がれるヴァフタンゴフ劇場メンバー出会ったヴラジミル・エトゥシ、ヴァシリー・ラノヴォイ、ユーリー・ヤコヴレフらへの記念碑の除幕セレモニーに参加した。そこでも彼は集まった人々に向かって、エトゥシは「戦い、街を解放し、負傷し、それから初めて舞台に戻ってきた」。ヤコヴレフは、避難先の戦時病院で働いていた。そしてラノヴォイは「ファシストの占領とはなんなのか自らの経験から理解した」と。
キリル・クロクは、順番が回ってくると俳優たちに対して「これほど難しい歴史的瞬間に、劇場を見捨てず、国外に出ることもなく、安っぽい政治的振る舞いもしていない」ことを感謝した。
彼は、リマス・トゥミナスが離れたことを大きな試練と呼び、次のように強調した。「彼が発した言葉は辛いが、舞台や客席で生じていることから偉大な巨匠たちを判断してほしい」。
リマス・トゥミナスは5月にウクライナ文化省の代表を装った悪戯電話の挑発の後、ヴァフタンゴフ劇場を離れた。その録画では、バンデラに関する芝居をウクライナで上演するつもりであることが語られていた。後に演出家は、〔この録画の〕作り手たちが意図的に動画を編集し、故ボグダン・ストゥプカと芝居を作る約束をしたことについて語ったトゥミナスの全文を切り取っていると説明していた。

13:59. 
モスクワのトヴェルスコイ裁判所は女優のタチヤナ・ルヂナに対して「ロシア軍の信用失墜」(ロシア連邦刑法第20条3.3項)の罪で、有罪判決を下し、罰金5万ルーブルを科した。
先に裁判所は、本件は「SNSで、進行中の軍事作戦にネガティヴな態度をとることを目的とした書き込みを行なった」ことと関係している、と明記していた。
また、今日はエルモロヴァ劇場の女優クリスチナ・アスムスの裁判も行なわれるはずであった。彼女もまたタチヤナ・ルヂナと同じ条項で告訴されている。クリスチナ・アスムスの審理は9月14日に延期された。
同条項では、これ以前に、エカテリンブルグの「コリャダ=テアトル」の俳優であるオレグ・ヤゴジンが、〔ロック・〕グループ「クララ」出演時の発言(4万ルーブル の罰金)、またベストゥジェフ劇場(ウラン・ウデ)前芸術監督のセルゲイ・レヴィツキーは、SNSへの投稿(2件の行政法違反の総計で8万ルーブルの罰金)により有罪判決を受けている。


9月2日

20:00. 
モスクワでフセヴォロド・リソフスキーが拘束。
今日の夕方、演出家自身がSNSの自身のページに書き込んだ。
ベルトルト・ブレヒト『第三帝国の恐怖と貧困』をもとにしたリソフスキーのオペレッタ『裁判』はプロスペクト・ミーラの地下歩道で行なわれる予定だった。しかし、俳優、観客、リソフスキー自身を含むすべての参加者たちは警察に拘束された。
OVD-info(外国エージェントに指定)によると、拘束された人々はアレクセエフスキー警察署に連行されたが、まだ護送車に閉じ込められているという。アレクセエフスキー警察署では「フォートレス(«Крепость»)*」プランが告知された。
こうした状況は初めてではない。5月9日、アンチ・ファシスト演劇『白墨の十字』の上演時にもリソフスキーは警察に逮捕された。しかし前回は、同日中に調書の作成もなしに解放されていた。

*〔訳注〕「フォートレス:警察が実際的な脅威に備えて、あるいは訓練目的で実施している体制。理論的には、建物の出入り口を完全に封鎖し、職員を動員して防衛を固めるもの。(中略)「フォートレス」プランは緊急措置であるが、治安隊(シロヴィキ)は、弁護人たちが抗議活動での拘束者たちに接触できないように、定期的にこれを用いている」(https://ovd.news/express-news/2022/09/02/v-moskve-zaderzhali-rezhisserov-akterov-i-zriteley-teatra-perehodnogo を参照)

19:35. 
ブロンナヤ劇場はアレクサンドル・モロチニコフの近日中の上演をすべて中止に。〔劇場〕サイトからはチケット購入ページが削除され、俳優たちにも中止に関して劇団管理部から知らせが届いたという。とりわけ、編集部に調べたところでは、中止となったのはモロチニコフ演出の『プラトーノフは悩んでいる( «Платонов болит»)』と『ブーリバ/宴会』である。これらのチケットは販売されておらず、これらの演目に出演予定だった俳優たにも「上演中止」の連絡があった。

12:00. 
2022年の「バルチースキー・ドム〔バルト海の家〕」演劇フェスティバルのプログラムからヨシフ・ライヘリガウズとドミトリー・クルィモフの上演が外された。大会組織がそのサイトとSNSで告知した。「親愛なる観客の皆さん! 第17回国際演劇フェスティバル「バルチースキー・ドム〔バルト海の家〕」のプラグラムは変更されました。『エンジェルたちはタバコを吸いに外に出る(Ангелы вышли покурить)』(10月12日)と『ボリス』(10月14, 15日)の上演はありません。チケット代はすべて払い戻されます」。
オレグ・マスロフ作『天使たちはタバコを吸いに外に出る』はヨシフ・ライヘリガウズが創設した「現代戯曲学院」での芸術監督としての彼の最後の作品となった。6月末にモスクワ文化局はライヘリガウズとの契約を更新せず、そのポストにドミトリー・アストラハンを任命した。
『ボリス』(ドミトリー・クルィモフとレオニード・ロベルマンの共作)はフェスティバルの大トリとなるはずだった。しかし大会プログラムは、クルィモフの作品上演がモスクワのプーシキン劇場、「フォメンコ工房」、「現代戯曲学院」、「ドラマ芸術学院」で中止された後に変更された。
またフェスティバルの上演スケジュールからは、ユジノ・サハリンスクの「チェーホフ・センター」でマルファ・ゴルヴィツがアレクセイ・ジトコフスキーの戯曲に基づいて演出した『ゴルカ(Горка)』も姿を消している。10月13日に観劇されるはずだった。この作品の中止に関しては、運営側は公式にはまだ何も発表していない。
企画側はフェスティバルの改訂版プログラムは9月7日以降に発表されると約束している。

11:06.
モスクワ市の各劇場はドミトリー・クルィモフのすべての作品の上演を中止するよう指示を受けた。これに対応した変更は、プーシキン劇場、「フォメンコ工房」、「現代戯曲学院」、「ドラマ芸術学院」の上演スケジュールにすでに反映されている。

10:00. 
エストニア・ロシア劇場の芸術監督フィリップ・ロシがエストニア演出家・劇作家協会(ELDL))から除名される。
エストニアのニュース・ポータル・サイトERRが報じた。
この決定は「エストニア国家と第二次世界大戦の犠牲者の両方を侮辱した演出家の発言に関連して」なされた。
これは、フィリップ・ロシがSNSに投稿した、エストニアに住むロシア人の状況を第二次世界大戦中のユダヤ人の状況に喩えたものを指している。協会代表のヤヌス・ロフマによると、「ELDLは言論の自由と勇気を支持するが、かつての帝国の一つが自由な人々の生活を無思慮に破壊しているいま、憎しみの煽動や帝国的な奢りに対しては同様に非難する」。
フィリップ・ロシはロシア劇場で2017年から2022年までの5年間に亘って芸術監督を務めた。契約期間は9月5日で満了となる。
ELDLにはエストニアの演出家や劇作家が125人参加している。とりわけ、先日、ロシアを離れてきてメンバーに加わったユリヤ・アウグは、ウクライナでの軍事行動に対する抗議の徴であった。


9月1日

19:00. 
女優のタチヤナ・ルヂナが軍隊に対する信用失墜の罪で起訴される。
タチヤナ・ルヂナはロシア軍の信用失墜に関する行政法違反(刑法第20条3.3項1号)で起訴された。先日告訴されたクリスチナ・アスムスの場合と同じく、モスクワのトヴェルスコイ地方裁判所には事件の資料が提出された。ルヂナはSNSへの投稿で調書が作成されたことが明らかになっている。
彼女の罪状ファイルによると、法廷審問は9月6日12時に予定されている。どのような書き込みや発言で本女優が裁判にかけられるのかは明らかではない。刑法第20条3.3項1号での最大量刑は、5万ルーブルの罰金である。
2014年にタチヤナ・ルヂナはウクライナ住民を支援するロシア映画人・映画ギルド協会のレター「私たちはあなたたちとともにある!(«Мы с Вами!» )」に署名していた。
タチヤナ・ルヂナ — ソヴィエトおよびロシアの映画女優・舞台女優。これまでレンコム劇場やエルモロヴァ・モスクワ・ドラマ劇場に所属、また、オレグ・メニシコフの「演劇組合814」に参加してきた。


8月31日

23:30. 
ヤロスラフスキー・ヴォルコフ劇場はルガンスクで同劇場芸術監督セルゲイ・プスケパリスの二作品を上演する。この上演を企画したのは「ロスコンツェルト」で、観客は無料で観劇できる。
8月27日28日にヴォルコフ劇場はルガンスク・アカデミー・ルスペカエフ・ロシアドラマ劇場で、プスケパリス演出のエヴゲニー・グリシコヴェツ作『天秤座』とイーゴリ・グリンコフ作『来るべき出来事』の二つ喜劇を上演する。劇場サイトでは次のように記されている。「ちょうど1年前、グリンコフ作『来るべき出来事』の初演はドネツク人民共和国で迎えられました! 2021年8月22日にドネツクで、2021年8月23日にはゴルロフカで。8月28日、鉱夫の日の前日には、今年の3月にロシアで初演を迎えた叙情的な喜劇グリシコヴェツ作『天秤座』がルガンスクで初めて上演されました」。
プスケパリスによれば、『来るべき出来事』のドネツク初演の情報は「あらゆるポスターや劇場の宣伝媒体」に掲載されているという。
「我々がルガンスクに持っていった作品、これは極めてわかりやすい形で描かれた思想でありながら、非常に深い内容のものです」と劇場は演出家のコメントを引用している。「この喜劇はただ単にルガンスクの観客を楽しませるためだけのものではありません。我々はやはり自分たちの意見や考え、発想を共有したいのです。笑うということも必要ですが、同時に我々は何か胸に秘めたものも観客に語りかけたいのです」。「来るまでには問題もありましたが、ルガンスクの人々と喜びを分かち合いたいと考えれば、それも大したことではありません。ドンバスの諸劇場とのぜひとも協働していきたいと考えています」とプスケパリスは付け加えている。
2018年の末、ゴーリキー記念モスクワ芸術座の芸術監督にエドゥアルド・ボヤコフが任命され、彼の代理人となったのがセルゲイ・プスケパリスとザハル・プリレピンだった。プスケパリスは ヴォルコフ劇場の代表となった(2019年)あと、この職を退いた。2020年、プリレピン が「真実のために」党を創設し、代表に就任すると、プスケパリスはその副代表となった。

20:50. 
ゴーゴリ劇場の新しい芸術監督アントン・ヤコヴレフは「ゴーゴリ・センター」の解雇された俳優たちに代わって研修生たちを募集している。彼はタス通信でこのことを語り、劇団員たちの召集と計画の公表を9月末に予定していると明言した。
タス通信では、ヤコブレフの発言が引かれている。「これは劇団員の抜本的な刷新です。現在私は30歳以下の研修生を20人ほど募集しています。これは〔演劇大学の〕卒業生であり、すでに俳優として働いているものたちです。彼らは「ゴーゴリ・センター」から残った俳優たちや、ゴーゴリ劇場に改組される前のゴーゴリ・センターを率いていたセルゲイ・」ヤーシンの元にいたアーティストたちと働くことになるでしょう。〔ゴーゴリ・センターから〕残っているのは半分以下です」。「私は自分の家を建てなければなりませんが、ゼロから建てるのは面白いものです」とヤコヴレフは続けた。
「家の建設」についての具体的なプランに関してもゴーゴリ劇場の新しい芸術監督はタス通信に語っている。「小舞台のラボラトリで行なわれる若い演出家たちを使った現代的な作品が、大舞台と並行して上演されます。古典作品も現代戯曲も、ということです。本当に様々な演出家たちのためにこの場所を使いたいのです」。ヤコヴレフ自身はシーズン中に「最低でも一つ」の作品を上演したいと計画している。「私の課題は、劇場をつくることです。私は芸術監督であり、単なる演出家ではありません。この二つは全く違うもの、全く違う職能です。ここで基準となるシステム、一種のレパートリー・システム、こうしたレパートリーのロジックを作り出す「父親」になるのだということをすぐに理解しました」。
6月29日に文化局はゴーゴリ・センターの芸術監督アレクセイ・アグラノヴィチと同ディレクターのアレクセイ・カベショフとの契約を更新しないことが明らかになっていた。ゴーゴリ・センターの職員の多くは即座に辞職願を提出し、ゴーゴリ・センターは活動を停止した。新しい芸術監督にはアントン・ヤコヴレフ、ディレクターにはアレクサンドル・ボチャルニコフが任命され、劇場の正式名称はゴーゴリ劇場へと変更された。7月14日には新しい運営陣は劇場のファサードから「ゴーゴリ・センター」の看板を取り外した。

20:00. 
本誌編集部によると、連邦立劇場の指導者たちはドミトリー・クズネツォフからの、「2014年春から現在に至るまでのドンバスでの出来事をテーマとした」(「ウクライナ軍と民族主義的大隊(нацбатальон)らから自分たちの土地と平和的市民を守るための義勇兵の功績についてなども含む」)新しいレパートリー作品に関する議員要望書を受け取った。
「公正ロシアー真実のために」党代表で、最近結成された文化界における反ロシア活動調査グループ(ГРАД)の事務局長はその要望書の中で、「国が日常的で平和な生活をおくり、軍人たちがその命をかけて祖国を守っている以上」、ロシア軍への「全国的な支援」は不可欠だと述べている。これに関連して、彼はドンバスでの出来事に関するここ最近の作品に関して「そうした作品はあるのか、もしあるとしたらいくつあり、そして実際どのようなテーマなのか」と劇場から返答と、そうした作品の直近の上演日時と「タイトルおよび概要」を求めている。
最近提出されたドミトリー・クズネツォフの議員要望書の中には、ボリショイ劇場支配人のヴラジミル・ウリンに向けて、ウクライナでの軍事活動に対して否定的な反応を示した演出家アレクサンドル・モロチニコフの立場に働きかけ、自らの過ちを認めることを拒んだ場合には、彼を劇場から解雇するよう求めていた。ウリンは、モロチニコフは劇場の団員だったことはなく(そのため彼を「解雇」は出来ない)と説明したが、クズネツォフへの公式の返書の中で、2022-23年シーズンに予定されていた同演出家の初演を中止したと伝えた。

10:25. 
モスクワのエルモロヴァ劇場の女優クリスチナ・アスムスが、「ロシア軍の信用失墜」の罪で起訴される。行政法違反に基づく審理は、9月6日に予定されている。これに関する情報は、審問が行なわれているトヴェルスコイ地方裁判所のオンライン・ファイルに掲載されている。
行政法違反の告訴は以下に記す刑法第20条3.3項1号に基づいている。「ロシア連邦およびその国民の利益の保護、および国際平和と安全を支える目的であるロシア連邦の軍隊を用いることへの信用失墜を狙った公的な行動、また同様の目的にあるロシア連邦の軍隊の活動を阻害することへの公的な呼びかけ、その行為が刑法に触れない限りのロシア連邦の国家機関がロシア領土国外に権限を行使することへの信用失墜を狙った行為」。この同条項から考えうる罰則は、3万ルーブル以上5万ルーブル以下の罰金。
アスムスの起訴は、彼女が2022年2月24日にSNSに投稿したものに関連しているとタス通信はトヴェルスコイ地方裁判所の通知を引用して伝えている。同女優は次のように書いていた。「恐ろしくてつらい。お願いだから、こんなことはやめてください。〈Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁)〉にノーを!!!!!」
同条項では、エカテリンブルグの「コリャダ=テアトル」の俳優であるオレグ・ヤゴジンが、〔ロック・〕グループ「クララ」出演時の発言(4万ルーブル の罰金)、またベストゥジェフ劇場(ウラン・ウデ)前芸術監督のセルゲイ・レヴィツキーは、SNSへの投稿(2件の行政法違反の総計で8万ルーブルの罰金)により有罪判決を受けている。


8月29日

11:15. 
マリウポリ・ドラマ劇場は、ロシアへのツアー公演を予定。タス通信が同劇場支配人代理イリヤ・ソロニンの言葉を引いて伝えている。「11月に劇団員たちはロシア連邦へのツアーを計画しています。ツアーの組織は「ロスコンツェルト」の一環で行なわれます」とソロニンの言葉を代理人が伝えている。
マリウポリ劇場は9月10日にチェーホフ原案の『ヴォードヴィル』で新シーズンを開幕する予定でいる。劇場の建物が壊された後、地元のフィルハーモニーの舞台が劇場に受け渡され、その場所で現在リハーサルがおこなわれている。リハーサルには新しい俳優たちが参加している。劇場は15人の俳優と10人の音楽家を採用した。これは「シーズン開幕の作品には十分な人数だ」とタス通信は伝えている。これ以前に、マリウポリ・ドラマ劇場からは13人のアーティストが退団し、また支配人代行で芸術監督のリュドミラ・コロソヴィチもマリウポリを離れている。7月16日にはウクライナの1960年代詩人で政治犯であるヴァシル・ストゥスについての作品『国民の叫び』の初演がウジホロドのザカルポツカヤ州音楽ドラマ劇場で行なわれた。


8月26日

9:00. 
チュルパン・ハマトヴァとアナトリー・ベールイは9月にイスラエルで公演を行なう。
9月9、11、12、13、14日にべエル・シェバ、ハイファ、テルアビブ、エルサレム、アシュドッドの各都市で音楽詩劇『オルフェウス』の上演が実施される。チュルパン・ハマトヴァは、ハープの音色に合わせて、ユーリー・レヴィタンスキー、ヨシフ・ブロツキー、マリーナ・ツヴェタエヴァの詩やエッセイを朗読する。共演はアレクサンドル・ボルダチョフが務める。企画のテキストには次のように記されている。「舞台、女性、詩、音楽、照明。モノローグ上演。魂の上演。言葉のメロディと音楽の音の中にだけ慰め、希望、自由を見つけ出すことができる、その瞬間に、『オルフェウス』は立ち上がる」。
9月23、24、25日には、ハイファ、アシュドッド、テルアビブでアナトリー・ベールイの一人芝居『私はここにいる』が上演される。演出家と企画者は、国立舞台芸術大学(GITIS)でセルゲイ・ジェノヴァチに学んだ、俳優ミハイル・トルヒンの息子エゴル・トルヒンである。上演では、2022年2月24日以降に執筆された、アーリャ・ハイトリナ、ジェーニャ・ベルコヴィチ、レーナ・ベルソン、ヴァジム・ジュークなどの詩が読み上げられる。
ウクライナでの軍事行動が始まってから、チュルパン・ハマトワはロシアを離れており、その後、演出家アルヴィス・ヘルマニスの招きで、新リガ劇場に加わっている。アナトーリー・ベールイは、モスクワ芸術座を辞職し、ロシアを離れたことが7月に明らかになっていた。


8月25日

16:03. 
ボリショイ劇場でアレクサンドル・モロチニコフのプレミア上演が中止に。新シーズンには、一幕物オペラのラフマニノフ作『フランチェスカ・ダ・リミニ』とツェムリンスキー作『フィレンツェの悲劇』を新舞台で上演するはずだった。ボリショイ劇場がアレクサンドル・モロチニコフの初演を中止した。新シーズンには、一幕物オペラのラフマニノフ作『フランチェスカ・ダ・リミニ』とツェムリンスキー作『フィレンツェの悲劇』を新舞台で上演するはずだった。この断念は、「公正ロシアー真実のために(СРЗП)」党のドミトリー・クズネツォフ下院議員(文化界における反ロシア活動調査グループ(ГРАД)事務局長)の要請に応じて、ボリショイ劇場支配人のヴラジミル・ウリンが発表した。書簡の一部をポータル・サイトのNEWS.ruが引用して伝えている。「2022-2023年のシーズンに予定されていた、ボリショイ劇場での二つの一幕物オペラへのモロチニコフの参加は中止となったことをお知らせします」。
また、ヴラジミル・ウリンは、モロチニコフが「ロシアのボリショイ劇場との雇用関係をいまに至るまで締結していない」と記している。
8月上旬、クズネツォフはボリショイ劇場に、アレクサンドル・モロチニコフとの雇用契約が締結されているかどうか、締結されている場合は、特別作戦に対する演出家の立場が明らかになるまで契約を中断するよう求める要請書を送っていた。2019年、モロチニコフはボリショイ劇場のポクロフスキー小舞台でオペラ『テレフォン・メディウム』、2021年には新舞台でデムツキー作曲のバレエ作品『かもめ』を演出していた。

14:00.  
チュルパン・ハマトヴァ出演の映画『プロストチェロヴェク(Просточеловек)』は、アナウンスされていた日程で公開されず。
「ヤナ・クリモヴァ=ユスポヴァ監督の映画『プロストチェロヴェク』は8月25日時点で、公開されていません。新しい公開日は後日発表されます」と映画会社2020filmsのプレスが発表した。
延期の理由を映画会社は明らかにしていない。また、モスクワ国際映画祭では、8月28日に、この作品の特別上映が行なわれる予定だったが、現在、プログラムにクリモヴァ=ユスポヴァの作品は記されていないことも判明している。
映画『プロストチェロヴェク(Просточеловек)』の主人公、30歳のサーシャは、ヨーロッパに移住する1週間前に、自分を産院に預けた母親が見つかったことを知る。さらに、その女性が重病であり、借金のために彼女のアパートを差し押さえようとしていることが次第に明らかになっていく。サーシャは、移住するか、自分の助けを切望している人を救うために残るか、人生における難しい選択を迫られる。主役を演じるのはゴーゴリ・センターの俳優フィリップ・アヴデーエフ。共演は、チュルパン・ハマトヴァ、アガタ・ムツェニエツェ、エヴゲニヤ・シモノヴァ、セルゲイ・ソツェルドツキー、ユリア・メニショヴァである。
ウクライナでの軍事行動が始まってから、チュルパン・ハマトワはロシアを離れており、その後、演出家アルヴィス・ヘルマニスの招きで、新リガ劇場に加わっている。


8月23日

23.30.
国立舞台芸術大学(GITIS)演劇学学部教員のナタリヤ・ピヴォヴァロヴァが40年勤め上げた大学から解雇された。
8月23日、ナタリヤ・ピヴォヴァロヴァは自身のSNSに次のように投稿した。「ああ、GITISでの長い放浪の旅が終わった。48年の長旅。でも何にでも終わりはある。(中略)今日、退職願を書くように言われて、私は断ったのだけど、それからもう私との契約更新はないと説明された。もう時間割は送られてきていたのに(笑)。なるほど、そうなんでしょう。もう仕事はないってことね」。
ナタリヤ・ピヴォヴァロヴァは1979年にGITISを卒業、1982年から同大学で教鞭をとり、その後、演劇学学部の学部長を務めた。2016年の年末にGITISの新しい学長グリゴリー・ザスラフスキーが演劇学学部とプロデューサー学部を統合しようとし、学生たちの抵抗を呼び起こした。統合は実現しなかったが、ナタリヤ・ピヴォヴァロヴァはいずれにせよ学部長のポストを追われた。近年は、GITISのロシア演劇史学科の准教授を務め、演劇学学部で演習を担当していた。また、彼女は先の3月3日、理由の説明なしにシェプキンの家博物館館長の職を解任されていた。