ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)9ヶ月目

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)9ヶ月目(更新中)

Театр.誌原文(9ヶ月目)

(翻訳:守山真利恵、伊藤愉)

▶︎公開:11月21日14:30
▶︎更新:


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。


編集部は週ごとのタイムラインを月ごとのタイムラインに切り替えることに決めた。だが、私たちは近いうちにこうしたタイムラインを公開する必要がまったくなくなることを望んでおり、それを信じている。


11月7日

10:58. 
ロシア演劇人同盟は戯曲コンクール「新しい時代/新しい主人公たち」の開催を発表した。コンクールではテーマに沿った書き下ろしのテキストを受け付ける。
「(応募作品の)戯曲は、意味付けされ理解することが必要な時代を描き出していること。その時代とは、恐れをしらぬ、勇敢な、我が国を守る真の英雄を産み出すものである。どの時代とは、様々な問題を明るみにだし、人間の存在という主要な問題への直接的な答えを求め、祖国とは何か、愛国主義とは何か、真の人道的な価値とは何か、社会の道徳的な世界秩序とはいかなるものか、といったことに対して正確な定義を求める時代である」。
専門家たちが優先的に評価するのは、「今日の歴史的な出来事および特別軍事作戦におけるロシアの軍人たちの功績、勇敢さ、ヒロイズム」と結びついた戯曲である。
受賞者は「ロシアを代表する演劇学者、劇作家、作家、演出家、俳優」らによって構成される審査員によって選ばれる、と募集要項に記されている。コンクールのロング・リストに入った戯曲はロシア演劇人同盟の戯曲集で刊行される。受賞テキストは観客の前で読まれ、作者はその上演権を半年間委譲することになる。


11月4日

15:10.
ベストジェフスキー劇場(ウラン・ウデ)前芸術監督のセルゲイ・レヴィツキーはムスレポフ記念カザフ青年観客劇場での演出に参加。同青年観客劇場芸術監督のファルハド・モルダガリが自身のSNSで、これは「カザフスタンの演劇界にとって大きな出来事だ」と発表した。
レヴィツキーはウクライナにおける軍事行動についてSNSで鋭く発言した後、ベストジェフスキー劇場芸術監督と、俳優・演出家コースを指導していた東シベリア文化大学の職を解任されていた。SNSの投稿に対してウラン・ウデ裁判所はレヴィツキーに「ロシア軍の信用失墜」に関わる二つ罪(ロシア刑法第20条3.3項)で有罪判決を下している。罰金の総計は8万ルーブル。


10月28日

18:30. 
連邦議会下院〔国家院〕で前線慰問団(фронтовые агитбригады)の創設に関して議論される。RIAノーヴォスチによると、下院監督委員会委員長代理のドミトリー・グセフが主導。報道官は彼の発言を次のように伝えている。「もし公立劇場で働き、公的資金を受け取っているのであれば、慰問団に参加し、前線に向かい、我が国の軍人たちを励ましてしかるべきだ」。同議員はこのための法案を作成することを約束している。
その後、グセフはこれが誤解であると釈明した。「慰問団についての話では全くない」と彼は「国会新聞(«Парламентской газете»)」に語った。「我々はただ国家に相反してひどい発言をしながら、国家予算から給料を受け取っている人物から公的資金を取り上げたいだけだ」。
しかし、このテーマはすでに国家院で論争を呼び起こしている。下院教育委員会メンバーのアナトリー・ヴァッセルマンは、慰問団への参加は、現実に触れ、より説得力を持てるようになるため、俳優たちにとっても有益だろうことを確信しているようだ。自らルガンスクに足を運んだ下院市民社会発展および社会団体・宗教団体関連委員会副代表のニコライ・ブルリャエフ、慰問団のコンサートは激戦地における軍隊の士気を高めることができるため、参加を希望する俳優たちを財政的に支援する意味があると考えている。
下院議員のドミトリー・クズネツォフの考えでは、「心からの愛国者たちを支援するのが重要で、順応主義者たちに偽善を強いるものではない」ため、慰問団への参加はボランティアであり、特権であるべきだとした。下院文化委員会第一副代表のアレクサンドル・ショロホフもまた同じ考えを支持している。

14:55 
モスクワのガガーリンスキー地区裁判所は、アルトゥル・スモリヤニノフをロシア刑法第20条3.3項の罪(ロシア連邦の軍隊を用いることへの信用失墜を狙った公的な行動)で有罪判決を下し、3万ルーブル の罰金を言い渡した。裁判所は本件が起訴された根拠を明示していない。これ以前に、スモリヤニノフはウクライナにおける軍事行動に関して鋭く発言しており、10月13日には同俳優はロシアを離れたことが明らかになっていた。
先に、同条項で有罪判決を受けたのは、女優のタチヤナ・ルヂナがSNSでの投稿に対して(5万ルーブルの罰金)、エカテリンブルグの「コリャダ・テアトル」の俳優オレグ・ヤゴジンがロック・グループ「クララ」出演時の発言に対して(4万ルーブルの罰金)、そしてベストジェフスキー劇場(ウラン・ウデ)前芸術監督のセルゲイ・レヴィツキーがSNSへの投稿に対して(二つの行政法違反の総計で8万ルーブル の罰金)である。同条項での女優のクリスチナ・アスムスに対する起訴は、「犯罪構成要素の欠如と捜査機関の数々の違反のため」取り下げられた。


10月26日

12:00.  
俳優のパーヴェル・ウスチノフが動員される。
エドゥアルド・ボヤコフ創設の「ノーヴィ・テアトル(新しい演劇)」が発表した。この劇場でウスチノフは詩の夕べ「不死の声」(ボヤコフ演出による「戦争について、戦功について、ドンバスについて」)に参加しており、その他『ルビャンスクのメイク係』の上演に参加する予定だった。劇場サイトでの発表では次のように書かれている(そのまま転載する)。
「ノーヴィ・テアトルの俳優であるパーヴェル・ウスチノフは部分動員の対象となり、任務地に向かった。26歳の若者は、過去にロシア国家親衛隊(ロスグヴァルディア)の兵役についていた。彼の経歴には広く反響を呼んだ出来事があった。SNSに「私/私たちはパーヴェル・ウスチノフ」というアイコンが溢れかえった時期のことを多くの人々が覚えているだろう。このドラマチックな出来事の後、彼はゴーリキー記念モスクワ芸術座に勤め、『ラウル』と『桜の園』に出演した。ノーヴィ・テアトル創設後にパーヴェルは劇団メンバーに招かれたが、別の職務、ロシア軍のまさに最前線にあたることになった。
我々はパーヴェルの戻りを待っている。彼を誇りに思っている。そして我々の勝利を信じている」。ノーヴィ・テアトルのHPのニュース欄にはショルコフスコエTVのルポルタージュ映像「部分動員第三週の完了」が掲載されている。
フ・コンタクチェ〔VK.com〕でのノーヴィ・テアトルのページには、ウスチノフ自身のコメントが公開されている。「戦争が僕らの家にやってきてからでは遅い。僕らの後ろには家族が、妻が、親たちが、子どもたちがいて、僕らが何も行動しなければ、彼らは危険に晒されてしまう。それに、僕の兄が徴兵されたとき、僕がそれを避けるようなことがあれば、僕は自分を許せないだろう。僕らはこの国の国民だ。この国も、他の国々も、それぞれの問題を抱えている。領土の統一性は保たれるべきで、もしこのために国が増兵を必要としているのであれば、他に選択肢はないのだろう」。
2019年、舞台芸術高等学院(ВШСИ)の〔俳優・演出家〕コンスタンチン・ライキンのクラスを卒業したパーヴェル・ウスチノフは「モスクワ事件」*の際に逮捕された。トヴェルスコイ裁判所は、彼が抗議運動の際にロシア国家親衛隊員〔機動隊員〕の肩を脱臼させた罪で、3年半の禁固刑を言い渡した。ウスチノフを支持するため、演劇界全体が立ち上がり(アクション「私/私たちはパーヴェル・ウスチノフ」)、ウスチノフは実刑を免れ、1年間の執行猶予と成った。2020年にウスチノフは、当時エドゥアルド・ボヤコフが率いていたゴーリキー記念モスクワ芸術座に入った。ボヤコフが同モスクワ芸術座を離れ、自身の劇団「ノーヴィ・テアトル」を創設した後、ウスチノフは創設メンバーの一人となった。

*モスクワ事件:2019年7月27日に公正な選挙を求めてデモが行われた際の、集団暴動(ロシア刑法212条)および公務執行者への暴行(ロシア刑法318条)に関する刑事事件。



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