ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)9ヶ月目

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)9ヶ月目

Театр.誌原文(9ヶ月目)

(翻訳:伊藤愉)

▶︎公開:11月21日14:30
▶︎更新:12月3日17:20、12月4日3:27


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。


編集部は週ごとのタイムラインを月ごとのタイムラインに切り替えることに決めた。だが、私たちは近いうちにこうしたタイムラインを公開する必要がまったくなくなることを望んでおり、それを信じている。


11月23日

16:00. 
ノヴォシビルスクの「第一劇場」はゲンリフ・サプギルとイーゴリ・ホリンの詩を原作としたポリナ・カルドィモンの『プリンセスと人喰い』上演を休止する。先日、作品に「LGBTプロパガンダ」があると観客からの訴えがあり、同地の文化庁は上演の調査を進めた。専門家委員会の演劇関係者たちと11月17日の上演を観劇したノヴォシビルスク州の文化庁副長官のグリゴリー・ミログロフは作品を肯定的に評価し、同作にプロパガンダの特徴は見ることはなかった。
劇場サイトには、「この状況で作品が不適切であると考えられ」ている以上、「一時的に作品上演を休止する」決定を関係者たちが受け入れたとの声明が公開された。声明では次のように述べられている。「私たちは慎重に劇場を取り巻く言論状況に目を配りました。残念ながら、この上演は幅広い反響を呼び、観客たちから様々な意見が寄せられました。これは私たちが目指したものではありませんでした。私たちは社会における論争の対象になりたくはありません。芸術とは、人々を結びつけ、心地よい感情を与え、重要なことを話すものなのですから」。


11月22日

17:40. 
振付家のイリヤ・ジヴォイの名前がチラシとマリインスキー劇場サイトの作品ページから削除された。バレエ作品『四季』、『プルチネッラ』、『カルタ遊び』、『SOUS LA COUPOLE』、「フラッシュバック」、そしてジヴォイが創作に参加したオペラ『クリスマス・イヴ』、『雪娘』のページから名前が消されている。マリインスキー劇場サイトの振付家の経歴ページには現在ではアクセスできない。
イリヤ・ジヴォイはワガノワ・アカデミー出身、2008年にマリインスキー劇場でダンサーとしてデビューし、2013年から振付家として仕事をしている。2022年2月末に彼は公式に特別軍事作戦への反対を表明し、ロシアを離れた。その後、グルジア、スペイン、スイス、デンマーク、アメリカ合衆国で様々なプロジェクトに参加している。


11月21日

13:15.
ドネツク国立アカデミー・ブロヴナ音楽ドラマ劇場は11月23日にネイションズ劇場の本舞台で上演する。「グランド・ツアー」の企画による本劇場のロシア国内をめぐる大規模ツアーの最終地としての、首都での上演に関する情報は、ロシア演劇人同盟が「パートナーシップの情報」として公開している。ネイションズ劇場のサイトでは、現在「予約不可」と記されている。
ドネツクの劇場は、ウクライナ功労芸術家ヴァシリー・マスリー演出の『ユノーナとアヴォーシ』を上演する。この大規模なショーには70人以上の俳優が出演する。この1時間半のロック・オペラは地方巡業時にはとりわけ次のようにアナウンスされた。
「注目すべきは、本作は極めて時代と共鳴する時期だった「2017年」の〔演出〕作品ということである。作り手が演出に込めた愛国主義と祖国への愛の精神のおかげで、ドネツク人民共和国の住人たちはその歴史とあらすじに奮い立った」(トルストイ記念リペツク・ドラマ劇場のサイトより)。


11月20日

07:43. 
ノヴォシビルスクの「第一劇場」は11月20日に予定されていたポリナ・カルドィモンの『プリンセスと人喰い』の上演を中止した。このお知らせは上演の当日に劇場のSNSで告知された。「舞台の技術的な不調により、本日の『プリンセスと人喰い』の上演は中止されました」と記されている。
作品に「LGBTプロパガンダ」があるとの訴えが相次いだことから、同地の文化庁は上演調査を主導した。11月17日の上演には文化界の専門家が10人ほど招かれ、同庁副長官のグリゴリー・ミログロフも出席した。招待され、本作を評価したうちのひとり、俳優のヴラジミル・レメショノクによると、専門家たちはみな、「これは素晴らしい作品で、苦情は無知な人間から寄せられたのだろう」と指摘していたという。
ゲンリフ・サプギルとイーゴリ・ホリンの詩に基づいた『プリンセスと人喰い』では、すべての役柄が男性俳優によって演じられている。初演の直後に、SNS上にネガティブな反応が現れ、コメントした人々はその演技方法にLGBTプロパガンダを見てとり、ノヴォシビルスク州の文化庁にも苦情が寄せられていた。


11月18日

10:00. 
ノヴォシビルスクの「第一劇場」で上演されたポリナ・カルドィモンの『プリンセスと人喰い』はLGBTプロパガンダの有無を調査された。鑑定は地元の文化庁が主導し、11月17日の上演に文化界の専門家10人ほどが招かれた。上演には同庁副長官のグリゴリー・ミログロフも出席した。専門家のひとりで「クラスヌイ・ファケル」劇場俳優のヴラジミル・レメショノクは我々テアトル誌編集部に自身の見解を共有してくれた。「『プリンセスと人喰い』は幼年時代に関する作品だ。その幼年時代というのが作品の主人公であり精神だ。4人の素晴らしい若手俳優たちが、極めてクリエイティブな成果をもたらす魔法のような演劇性でもって幼年時代のイメージ、その素朴さ、とめどない幻想、その精神の絶対的な純粋さを生み出し、観客に贈っていた。作品は子どもと大人のためのものであり、大人が子どもと、またその逆の子どもが大人ととるコミュニケーションを新しいレベルにまで高めることができるものだった」。ヴラジミル・レメショノクによると、昨日ポリナ・カルドィモンのこの作品を観た専門家たちはみな、「これは素晴らしい作品で、苦情は無知な人間から寄せられたのだろう」と指摘していたという。
ゲンリフ・サプギルとイーゴリ・ホリンの詩に基づいた『プリンセスと人喰い』では、すべての役柄が男性俳優によって演じられている。初演の直後に、SNS上にネガティブな反応が現れ、コメントした人々はその演技方法にLGBTプロパガンダを見てとり、ノヴォシビルスク州の文化庁にも苦情が寄せられていた。


11月16日

14:50.
文化省と映画基金は特別軍事作戦に関するドキュメンタリー映画の配給を開始する。文化大臣のオリガ・リュビモヴァがヴラジミル・プーチンや政府閣僚との会談で発表した。「映画基金の活動の一環で、国家プロジェクト「文化(クリトゥーラ)」のおかげで刷新された映画館での特別軍事作戦に関するドキュメンタリー映画の上映という新しい配給を始めます」とタス通信は文化大臣の言葉を引いている。
自身のテレグラムチャンネルでリュビモヴァはこの件に関してより詳しく語っている。「2019年、映画基金によって「映画配給基金」プロジェクトが始動しました。このプロジェクトは人口50万人以下の土地にあり、国家プロジェクト「文化(クリトゥーラ)」によって刷新された映画館を用いた、地方部への流通およびレパートリー企画を対象としています。2022年からはすべての映画館がこのプログラムに参加できます。先日、私たちは直近の歴史に関するあらすじを持った映画プロジェクトのコンクールを別途実施しました。作者らは、特別軍事作戦、ドンバスの歴史、その防衛者たちのヒロイズムに関する作品が集まった。こうした企画の第一弾はすでに製作に入っている。2023年にも、こうした重点的なテーマに沿った新しい映画作品を支援することが予定されています」。


11月15日

11:30. 
11月10日、サンクトペテルブルグ市長のアレクサンドル・ベグロフはマールイ・ドラマ劇場-ヨーロッパ劇場の女優クセニヤ・ラポポルト、芸術家ポクラス・ラムパス(アルセニー・プィジェンコフ)、中央展示会場「マネージ」の前館長パーヴェル・プリゴラ、エルミタージュ美術館現代美術部門前主任のドミトリー・オゼルコフをペテルブルグ 市の文化芸術評議会から除名する決定に署名した。
ラムパス、ラポポルト、オゼルコフはこれ以前にウクライナにおけるロシアの行動に反対する発言をしていた。


11月14日

22:00. 
劇作家のアレクセイ・ジトコフスキーは、彼の自宅と彼の友人である芸術家で「児童アート・スクール第一」の教員のアルチョム・ムンチャンの自宅が家宅捜索された後、アルチョムが仕事を首になった、とSNSに書いた。アレクセイ・ジトコフスキーによると、アート・スクール校長のイリーナ・チジェフスカヤの説明では、ムンチャンは職場に抽象的な彫刻を設置し、不道徳な振る舞いをとったという。この件を訴え出たウスペンスカヤ氏によると、その彫刻には禁じられている言葉が書かれていたという。
以下はアルチョム・ムンチャンと弁護士がメディア向けに作成した手紙の全文である。
「ニジネヴァルトフスクで、FSB職員によってが自宅と職場の捜索が行われた後、「児童アート・スクール第一」の教員で芸術家のアルチョム・ムンチャンが解雇された。
2022年10月19日、ロシアで禁じられている「右派セクター」の活動への関与に関する不特定多数への取り調べ調査の一環としてFSB職員が劇作家アレクセイ・ジトコフスキーと芸術家アルチョム・ムンチャンのそれぞれの自宅を調査した。後者の調査はアート・スクールの職場も対象となった。いつものように、捜査員たちは通信機器を押収し、アート・スクールのムンチャンの職場では、抽象的な彫刻も押収された。刑事事件として誰かが訴えられているわけではなく、何らかの訴訟手続きの段階にあるわけではない。
しかし、自宅と職場の家宅捜索の後、スクールの管理部はムンチャンにより注意を払い始めた。家宅捜索の数日後、ムンチャンはアート・スクール校長のチジェフスカヤに呼び出され、辞職を求められた。
やりとりはこうしたシチュエーションで定番のものだった。自ら辞職しなさい、でなければ解雇となる。解雇に関してはすでに上層部で決められている。捜索はスクールと全職員に深刻な損害を与えている。
ムンチャンは辞職を拒み、その一週間後に改めて校長に呼ばれた。このときには、ムンチャンの不道徳な振る舞いの有無に関する職務調査の委員会を設置するよう指示があったことが知らされた。調査の理由となったのは、生徒の母親を名乗るオリガ・ウスペンスカヤなる人物からのメールが届いたことだった(そのような親がいることをムンチャンは聞いたことがなく、発信元のメールアドレスは、pravdarub2022@mail.ru というものだった)。
アート・スクール校長のイリーナ・チジェフスカヤの説明によると、ムンチャンは職場に抽象的な彫刻を設置し、不道徳な振る舞いをとったという。この件を訴え出たウスペンスカヤ氏によると、その彫刻には禁じられている言葉が書かれていたという。注意すべきは、職場の捜索があった10月19日に捜査員たちが当の彫刻を押収していたということだ。つまり、ウスペンスカヤの連絡があり、ムンチャンの職場の調査が行われた10月28日にはその場所に彫刻はなく、誰ひとり(ムンチャンを訴えたウスペンスカヤも、委員会も)彫刻を調査することはできなかった。ちなみに、その彫刻はその場所に2021年から置かれていて、FSB職員がアート・スクールを訪れるまで誰一人として関心を示さなかった。
そして2022年11月8日にアート・スクール校長のイリーナ・チジェフスカヤは、不道徳な振る舞いを理由にアルチョム・ムンチャンの解雇命令に署名したのである。
現在、アルチョムは法律家とともに民事訴訟の準備をしており、いかなる不道徳な振る舞いもなく、彫刻にそのような文字も確認できず、常に職場を大切にし、保護者からもスクールの管理者からも注意を受けたことがない以上、自身の復職と違法な解雇命令の取り消しを求めている。アルチョムはこの解雇は政治的な動機によるものだと考えている」。

9:45.
バシキール・アカデミー・ドラマ劇場は小説の作者グゼリ・ヤヒナの反戦的立場を理由に『ズレイハは目を開ける(«Зулейха открывает глаза»)』を中止した。この件は劇場のサイトで発表された。
「マジト・ガフリ記念バシキール・アカデミー・ドラマ劇場は、ロシアがウクライナで遂行しなければならなかった特別軍事作戦を支持している。
演劇はロシア国民を統一する精神的価値を喧伝するものと見做されている。『ズレイハは目を開ける』の作者グゼリ・ヤヒナは、2022年2月24日のニュース24は私をぐちゃぐちゃにした。私の世界は一変したのではなく、端的に崩れ去った」と述べている。しかしこの8年もの間ネオ・ナチストとファシストたちが私たちの兄弟たる人々、私たちにとっては文化関係者たちを殺害してきた世界を受け入れることはできない。いま現在、我々の同僚、我々の共和国の文化施設の職員たちを含む我らが軍人たちはナチズムなき世界を守ろうとしている。
劇場で働いている人々の考えが作家の考えと一致しないことを鑑み、前述の作品をレパートリー から外すことを決定した」。
〔劇場〕主任演出家アイラト・アブシャフマノフ演出の『ズレイハは目を開ける』(グゼリ・ヤヒナの同名の小説が原作)の初演は、2017年11月24日だった。2019年に同演出作品は「ゴールデン・マスク」賞にノミネートされた。


11月13日

12:00. 
演出家のポリナ・カルドィモンは、ノヴォシビルスクの「第一劇場」で彼女が上演した子ども向け作品がLGBTプロパガンダとして告発されているとSNSに投稿した。問題となっている作品はゲンリフ・サプギルとイーゴリ・ホリンの詩に基づいた『プリンセスと人喰い(«Принцесса и людоед»)』で、同作ではすべての役柄が男性俳優によって演じられている。初演は2022年10月29日で、すでにその翌週には、SNS上にネガティブな反応が現れており、コメントした人々はその演技方法にLGBTプロパガンダを見てとった。演出家によると、現地の文化庁にも苦情が寄せられており、11月20日には劇場に上演の今後を決める官吏委員会が訪れるという。
「『プリンセスと人喰い』を6回も上演することができなかった(重要なのは、これは「第一劇場」で、私たちを招いたのはユーリャ・チュリロヴァだということです)」とカラドィモンは書いている。「文字通り数回の上演を終えたあと、文化庁に告げ口があった(州知事までいったらしい)。密告屋たちを激怒させたのは、子ども向けの劇でプリンセスを演じているのが男だったから!!! ヒゲが生えていたって!!! いま文化庁では作品を見て、そこには「LGBTプロパガンダ」があるかないかを確認するために何らかの倫理委員会が召集されている。私は倫理委員会に、男性が女性役を演じていたギリシャ演劇についての本を読むこと、異性装についての本を読むこと、劇場ではバーバ・ヤガーを通常男性俳優が演じていること、「スターリー・ドム」劇場にいって、『叔母たち(“Тетки”)』を最後までみることを強く勧める」。
2022年3月にユリヤ・チュリロヴァはノヴォシビルスクの「第一劇場」の支配人を解任された。この件に関してチュリロヴァは私たち〔テアトル誌〕のサイトでのインタビューで詳しく語っている。『プリンセスと人喰い』は「第一劇場」で彼女自身が最後に企画したプロジェクトのうちの一つだった。


11月11日

11:00.
モスクワでの公演を予定していたマリウポリドラマ劇場だが、技術的理由によりその上演を中止し、クリミアへ巡業に赴く。ロストフ・ナ・ドヌーでの公演、予定されているクラスノダルでの上演に加え、ロシア文化省が組織する「グランド・ツアー」の一環として、シムフェロポリとヤルタへのツアーに出発する。劇場が上演するのは二作品、ヴラジミル・オルロフ作『金色のひよこ』とアントン・チェーホフの一幕もの『熊』、『結婚申し込み』、『創立記念祭』を原作とした『ヴォードヴィル』である。


11月9日

15:20. 
文化大臣のオリガ・リュビモヴァが下院のクエスチョンタイムに登壇。文化省のサイトで記された「前線付近での」慰問団の実施について、とりわけ言葉を費やした。「慰問団に関する作業は万全です」とリュビモヴァの言葉が同省から発表されている。「我々はロシア国防省とともに、ある場所では3人、ある場所では150人が派遣され、ある場所では軍人のリハビリテーションを助け、ある場所では文化人たちが新しい領域(テリトリー)で実際にパフォーマンスを行なうなど、アーティストたちの参加の可能性を探っています」。
俳優であり議員(「新しい人々」派)でもあるドミトリー・ペフツォフは二つの提言をしている。曰く、文化省管轄の専門家会議に「親、教師、児童心理学者、伝統的宗教の代表者、治安・国防関係の職員(シロヴィキ)、情報セキュリティの専門家ら」を加えるべき(「オリガ・リュビモヴァはこの提案を支持している」と同省は発表)で、「特別軍事作戦の参加者たちが前線から帰還した後、無料で初回あるいは二回目の高等教育を受けることができるよう」にすべき。インテルファクス通信はペフツォフの発言を次のように引いている。「こうした人々は、いま現在平穏な街中を散歩している多くの人々と異なり、「自らの死を選び、仲間を助けよ」*ということがわかっており、愛とは何か、自らの命を他の誰かのために差し出すという最上位の愛とは何かということがわかっており、どこに神がいて、どこに悪魔がいるかがわかっている。そしてこうした人々が私たちの未来や私たちの文化を建設していくのだ」。〔*18世紀ロシアの軍人アレクサンドル・スヴォロフの言葉〕
こうした専門家会議の構成に関しては、俳優、演出家、議員のニコライ・ブリャエフが、すでに同じ提案をしている。彼は「公正ロシアー真実のために」派閥の仲間とともに、今年の春夏に、テレビ、演劇、映画の検閲を担う社会評議会創設に関する法案を作成した。この評議会は、議員によれば、「実際に社会からその分野の専門家として認められている人々、次の世代がどうなるか考えている父親や母親たち」が参加すべきであり、それはすなわち教師、医療関係者、警察官、聖職者出会った。(2022日7月25日付けのインターファクスでのインタビューから)。これ以前の10月8日に、ブリャエフは現時点では「文化関係者たちの名誉の規範」を作成していると言明していた。

14:22. 
作者たちが「ウクライナの非ナチ化に関するイマーシヴ・映像演劇」と名付けられたプロジェクト『恭しき人々(«Vежливые Люди»)〔En: Little green men〕』がリペツク、ヴォロネジ、オリョール、カルーガ、トヴェリなどロシアの各都市で上演された。11月24日にはモスクワで上演される。
『恭しき人々』の演出家兼プロデューサーのロマン・ラズムは、特別軍事作戦の参加者で、ルガンスク人民共和国の公職についており、音楽家、脚本家の肩書きがある。「個々の映像は舞台上の場面と交錯し、スクリーンに映っていたその俳優が舞台上にも登場する」とチェルノゼミエ地区のコメルサント紙がその演出について記している。「ウクライナ人たちは客席を人質にとり、”サクラ”の観客たちに制裁を加える。ロシアの特殊部隊(スペツナズ)は建物に仕掛けられた爆弾を処理する。大きな効果を生み出すため、中身が入っていない本物の銃から空包が幾度となく放たれる。その後、ロマン・ラズムは「ノヴォロシア」アンサンブルによるロック調の新しい愛国軍歌を歌う(そしてまた戦車が燃えている。兄弟、俺は武器がない、援護を頼むぜ!)」。登場人物たちは、ロシア特殊部隊の代表者たち、タイトルにある「恭しき人々」、第三帝国の歌を電話口で口ずさみ続ける司令官を長としたアメリカ人監督者たちからの任務を受けるウクライナ軍人たち、爆破された住居で息を引き取りながら、戦争から帰還しウクライナ語でもうファシストはいないと語る父親を思い出している老婆である。
『恭しき人々』は、文化的創意に関わる大統領基金の支援を受けており、本プロジェクトには1000万ルーブル以上が投入されている。基金のサイトで公開されている説明書きでは、「現代性と社会的意義」に関して次のように記されている。「ロシアには愛国主義的傾向の作品を上演する劇場が極めて少ない。愛国主義的なテーマのショー・ブロジェクトはロシアには全くないと言ってよい。私たちの課題は、青年や大人たちが本物の戦闘の雰囲気を感じ、特筆すべき歴史的な特別作戦の再現を体験するような新しい現代的なショーを創造することである。(中略)こうしたプロジェクトを用いて、私たちは子どもたちのなかに「良き芸術的趣味」を育み、演劇、劇作、音楽を理解し評価できる新しい世代の観客を育んでいく。子どもたちそして大人たちはこのプロジェクトに、敵意や攻撃性や怒りといった感情を抱えながら生きていくための自分たちにとっての安全な空間を見つけ出すのである」。


11月7日

10:58. 
ロシア演劇人同盟は戯曲コンクール「新しい時代/新しい主人公たち」の開催を発表した。コンクールではテーマに沿った書き下ろしのテキストを受け付ける。
「(応募作品の)戯曲は、意味付けされ理解することが必要な時代を描き出していること。その時代とは、恐れをしらぬ、勇敢な、我が国を守る真の英雄を産み出すものである。どの時代とは、様々な問題を明るみにだし、人間の存在という主要な問題への直接的な答えを求め、祖国とは何か、愛国主義とは何か、真の人道的な価値とは何か、社会の道徳的な世界秩序とはいかなるものか、といったことに対して正確な定義を求める時代である」。
専門家たちが優先的に評価するのは、「今日の歴史的な出来事および特別軍事作戦におけるロシアの軍人たちの功績、勇敢さ、ヒロイズム」と結びついた戯曲である。
受賞者は「ロシアを代表する演劇学者、劇作家、作家、演出家、俳優」らによって構成される審査員によって選ばれる、と募集要項に記されている。コンクールのロング・リストに入った戯曲はロシア演劇人同盟の戯曲集で刊行される。受賞テキストは観客の前で読まれ、作者はその上演権を半年間委譲することになる。


11月4日

15:10.
ベストゥジェフ劇場(ウラン・ウデ)前芸術監督のセルゲイ・レヴィツキーはムスレポフ記念カザフ青年観客劇場での演出に参加。同青年観客劇場芸術監督のファルハド・モルダガリが自身のSNSで、これは「カザフスタンの演劇界にとって大きな出来事だ」と発表した。
レヴィツキーはウクライナにおける軍事行動についてSNSで鋭く発言した後、ベストゥジェフ劇場芸術監督と、俳優・演出家コースを指導していた東シベリア文化大学の職を解任されていた。SNSの投稿に対してウラン・ウデ裁判所はレヴィツキーに「ロシア軍の信用失墜」に関わる二つ罪(ロシア刑法第20条3.3項)で有罪判決を下している。罰金の総計は8万ルーブル。


10月28日

18:30. 
連邦議会下院〔国家院〕で前線慰問団(фронтовые агитбригады)の創設に関して議論される。RIAノーヴォスチによると、下院監督委員会委員長代理のドミトリー・グセフが主導。報道官は彼の発言を次のように伝えている。「もし公立劇場で働き、公的資金を受け取っているのであれば、慰問団に参加し、前線に向かい、我が国の軍人たちを励ましてしかるべきだ」。同議員はこのための法案を作成することを約束している。
その後、グセフはこれが誤解であると釈明した。「慰問団についての話では全くない」と彼は「国会新聞(«Парламентской газете»)」に語った。「我々はただ国家に相反してひどい発言をしながら、国家予算から給料を受け取っている人物から公的資金を取り上げたいだけだ」。
しかし、このテーマはすでに国家院で論争を呼び起こしている。下院教育委員会メンバーのアナトリー・ヴァッセルマンは、慰問団への参加は、現実に触れ、より説得力を持てるようになるため、俳優たちにとっても有益だろうことを確信しているようだ。自らルガンスクに足を運んだ下院市民社会発展および社会団体・宗教団体関連委員会副代表のニコライ・ブルリャエフ、慰問団のコンサートは激戦地における軍隊の士気を高めることができるため、参加を希望する俳優たちを財政的に支援する意味があると考えている。
下院議員のドミトリー・クズネツォフの考えでは、「心からの愛国者たちを支援するのが重要で、順応主義者たちに偽善を強いるものではない」ため、慰問団への参加はボランティアであり、特権であるべきだとした。下院文化委員会第一副代表のアレクサンドル・ショロホフもまた同じ考えを支持している。

14:55 
モスクワのガガーリンスキー地区裁判所は、アルトゥル・スモリヤニノフをロシア刑法第20条3.3項の罪(ロシア連邦の軍隊を用いることへの信用失墜を狙った公的な行動)で有罪判決を下し、3万ルーブル の罰金を言い渡した。裁判所は本件が起訴された根拠を明示していない。これ以前に、スモリヤニノフはウクライナにおける軍事行動に関して鋭く発言しており、10月13日には同俳優はロシアを離れたことが明らかになっていた。
先に、同条項で有罪判決を受けたのは、女優のタチヤナ・ルヂナがSNSでの投稿に対して(5万ルーブルの罰金)、エカテリンブルグの「コリャダ・テアトル」の俳優オレグ・ヤゴジンがロック・グループ「クララ」出演時の発言に対して(4万ルーブルの罰金)、そしてベストゥジェフ劇場(ウラン・ウデ)前芸術監督のセルゲイ・レヴィツキーがSNSへの投稿に対して(二つの行政法違反の総計で8万ルーブル の罰金)である。同条項での女優のクリスチナ・アスムスに対する起訴は、「犯罪構成要素の欠如と捜査機関の数々の違反のため」取り下げられた。


10月26日

12:00.  
俳優のパーヴェル・ウスチノフが動員される。
エドゥアルド・ボヤコフ創設の「ノーヴィ・テアトル(新しい演劇)」が発表した。この劇場でウスチノフは詩の夕べ「不死の声」(ボヤコフ演出による「戦争について、戦功について、ドンバスについて」)に参加しており、その他『ルビャンスクのメイク係』の上演に参加する予定だった。劇場サイトでの発表では次のように書かれている(そのまま転載する)。
「ノーヴィ・テアトルの俳優であるパーヴェル・ウスチノフは部分動員の対象となり、任務地に向かった。26歳の若者は、過去にロシア国家親衛隊(ロスグヴァルディア)の兵役についていた。彼の経歴には広く反響を呼んだ出来事があった。SNSに「私/私たちはパーヴェル・ウスチノフ」というアイコンが溢れかえった時期のことを多くの人々が覚えているだろう。このドラマチックな出来事の後、彼はゴーリキー記念モスクワ芸術座に勤め、『ラウル』と『桜の園』に出演した。ノーヴィ・テアトル創設後にパーヴェルは劇団メンバーに招かれたが、別の職務、ロシア軍のまさに最前線にあたることになった。
我々はパーヴェルの戻りを待っている。彼を誇りに思っている。そして我々の勝利を信じている」。ノーヴィ・テアトルのHPのニュース欄にはショルコフスコエTVのルポルタージュ映像「部分動員第三週の完了」が掲載されている。
フ・コンタクチェ〔VK.com〕でのノーヴィ・テアトルのページには、ウスチノフ自身のコメントが公開されている。「戦争が僕らの家にやってきてからでは遅い。僕らの後ろには家族が、妻が、親たちが、子どもたちがいて、僕らが何も行動しなければ、彼らは危険に晒されてしまう。それに、僕の兄が徴兵されたとき、僕がそれを避けるようなことがあれば、僕は自分を許せないだろう。僕らはこの国の国民だ。この国も、他の国々も、それぞれの問題を抱えている。領土の統一性は保たれるべきで、もしこのために国が増兵を必要としているのであれば、他に選択肢はないのだろう」。
2019年、舞台芸術高等学院(ВШСИ)の〔俳優・演出家〕コンスタンチン・ライキンのクラスを卒業したパーヴェル・ウスチノフは「モスクワ事件」*の際に逮捕された。トヴェルスコイ裁判所は、彼が抗議運動の際にロシア国家親衛隊員〔機動隊員〕の肩を脱臼させた罪で、3年半の禁固刑を言い渡した。ウスチノフを支持するため、演劇界全体が立ち上がり(アクション「私/私たちはパーヴェル・ウスチノフ」)、ウスチノフは実刑を免れ、1年間の執行猶予と成った。2020年にウスチノフは、当時エドゥアルド・ボヤコフが率いていたゴーリキー記念モスクワ芸術座に入った。ボヤコフが同モスクワ芸術座を離れ、自身の劇団「ノーヴィ・テアトル」を創設した後、ウスチノフは創設メンバーの一人となった。

*モスクワ事件:2019年7月27日に公正な選挙を求めてデモが行われた際の、集団暴動(ロシア刑法212条)および公務執行者への暴行(ロシア刑法318条)に関する刑事事件。



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