ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)19ヶ月目

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

【概要】はこちら
【第1週】はこちら
【第2週】はこちら
【第3週】はこちら
【第4週】はこちら
【第5週】はこちら
【第6週】はこちら
【第7週】はこちら
【第8週】はこちら
【第9週】はこちら
【第10週】はこちら
【第11週】はこちら
【第12週】はこちら
【第13週】はこちら
【4ヶ月目】はこちら
【5ヶ月目】はこちら
【6ヶ月目】はこちら
【7ヶ月目】はこちら
【8ヶ月目】はこちら
【9ヶ月目】はこちら
【10ヶ月目】はこちら
【11ヶ月目】はこちら
【12ヶ月目】はこちら
【13ヶ月目】はこちら
【14ヶ月目】はこちら
【15ヶ月目】はこちら
【16ヶ月目】はこちら
【17ヶ月目】はこちら
【18ヶ月目】はこちら

 

 

ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)19ヶ月目

Театр.誌原文(19ヶ月目)

(翻訳:伊藤愉)

▶︎公開:2024年1月22日22:00
▶︎更新:


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。


編集部は週ごとのタイムラインを月ごとのタイムラインに切り替えることに決めた。だが、私たちは近いうちにこうしたタイムラインを公開する必要がまったくなくなることを望んでおり、それを信じている。


9月13日

14:11.
裁判所はダニラ・コズロフスキーの名誉、尊厳、仕事上の評判を保護に関する訴えを認めた。訴状のなかで同俳優は「保安・反腐敗」連邦プロジェクト代表のヴィタリー・ヴォロジンによって拡散された情報が名誉毀損であると認定し、同社会活動家がSNS上で自身の言葉を取り消す投稿を行うことを義務付け、また精神的賠償金として1ルーブルを科すことを要求していた。ヴォロジンは判決を不服として控訴する構え。 同人の言葉を引いて、«Лента.ру»が報じた。「彼(ダニラ・コズロフスキー)には1ルーブル、半ルーブルでさえ払う者はいないだろう。我々は、自分たちが正しいと考えており、公平を求め、最後までやり遂げるつもりだ」。
2023年4月、俳優のダニラ・コズロフスキーはモスクワ市のプレスネンスキー地区裁判所に告訴した。3度目の試みで受理された訴状は、法律が施行される以前に公開されたSNSへの投稿やインタビューを理由としてロシア軍の信用失墜に関する違反で同俳優を捜査するようヴォロジンが検察総局に要求したことに対する、俳優サイドからの返答であった。また、ヴィタリー・ヴォロジンは、同俳優が長らくアメリカに出国していたが、現在は帰国していることを主張していた。ダニラ・コズロフスキーはオープン・レターのなかで告発すべてに明白に反駁し、裁判所に訴える意向を示していた。


9月10日

12:00.
エヴゲニー・マルチェッリがザハル・プリレーピンのテキストを原作とした作品を上演する。9月10日にモスソヴェト劇場の集会で明らかになった。劇場運営部は第101シーズンの計画を発表。その中で劇場芸術監督のエヴゲニー・マルチェッリによる、ザハル・プリレーピンの散文『ショーロホフ 私生児』に基づいてエレーナ・イサエヴァが脚色した作品の初演を公表した。物語は作家ミハイル・ショーロホフの生涯と作品に関するものである。原著の紹介文には次のように書かれている。「著名な作家、評論家、政治家のザハル・プリレーピンは、その新しい本格的なショーロホフの伝記のなかで、この大作家にまつわる伝説を説得的に暴いている。主人公である作家とともに彼の生涯と創作の道筋を一歩ずつ辿りながら、プリレーピンが見せているのは、ショーロホフの著作だけでなく彼の運命もまた今日の我々にとってもアクチュアルなものだということだ」。
また新シーズンではマルチェッリ演出の『タルチュフ』と『ブレーメンの音楽隊』、アンドレイ・コンチャロフスキー演出の『かもめ』と『マクベス』、イーゴリ・ヤツコ演出でヴァレンチナ・タルィジナ主演の『スペードの女王』が予定されている。
8月20日、モスクワ・アーバニスト・フォーラムが行なわれていた「ルジニキ」の舞台で、モスソヴェト劇場はヴャチェスラフ・マヌチャロフ演出作品『送られなかった手紙』を上演していた。これはドンバスでの出来事を扱ったオレグ・ロイの同名の小説に基づいている。


9月9日

12:00.
ヴラジミル・ケフマンがサンクト・ペテルブルグ国際文化フォーラムのディレクターに任命される。同ニュースはフォーラムのサイトで発表された。サイトでは次のように記されている。「新代表の基本的な課題は、2019年以来初めてサンクト・ペテルブルグで実施される文化フォーラムを首尾よく迎えることである。ヴラジミル・ケフマンはロシア文化にとって象徴的な人物である。彼が2007年から率いるミハイロフスキー劇場は、彼の指導のもと、ロシアを代表するクリエイティブな団体の一つとなった。彼の尽力でもって、ミハイロフスキー劇場のツアーの範囲は著しく拡大し、ロシア大統領やロシア連邦政府から表彰されるにいたる極めて重要な社会的・文化的なイベントが企画されてきた」。
2012年にヴラジミル・ケフマンは第二回サンクト・ペテルブルグ国際文化フォーラムのディレクションを担い、その準備と運営を監督した。2021年10月にケフマンはゴーリキー記念モスクワ芸術座の総裁に任命された。同ポストはこれ以前には存在しないものだった。これ以前、彼はミハイロフスキー劇場とノヴォシビルスク・オペラ・バレエ劇場のディレクター職を務めており、のちにそれらのポジションは裁判所の判決により芸術監督のポストへと変更された。サンクト・ペテルブルグおよびレニングラード州の調停裁判所とロンドンの高等法院が、果物輸入を専門とするケフマンの会社JFCの破産を宣告したのち、ヴラジミル・ケフマンは管理ポストを務めることができなくなった。2017年に、60ヶ月に及んだケフマンとJFCの二人のマネージャーの刑事訴追はロシア内務省捜査局によって打ち切られたが、ロンドンでは彼は依然として詐欺罪にとわれている。現在のところノヴォシビルスク・オペラ・バレエ劇場の芸術監督は首席指揮者のドミトリー・ユロフスキーが務め、ミハイロフスキー劇場ではケフマンが継続している。


9月6日

19:19.
ベルコヴィチとペトリイチュクは11月4日まで留置所に収容。本日9月6日、モスクワ市ハモヴニキ地区裁判所でジェーニャ・ベルコヴィチとスヴェトラナ・ペトリイチュクの予防措置を延長する審理が行なわれた。留置所での勾留は2023年11月4日まで延長された。詳細はリンク先

14:00.
『ペテルブルグ・シアター・ジャーナル』誌に、ダンス協会の名でアレクサンドル・カリャギンに宛てた、「ゴールデン・マスク」賞の「コンテンポラリー・ダンス」賞のあり方に反対するオープン・レターが公開された。書簡の中では次のように述べられている。
「「ゴールデン・マスク」は常にプロフェッショナルのダンス関係者たちが倣うべき目標でした。ゴールデン・マスク演劇祭の首脳部、マネージャー・チーム、専門家、批評家、技術スタッフらが、専門的な選考から演劇祭そのものの運営に至るまで、あらゆるレベルで見事な組織力をみせ、〔賞の〕候補者たちがモスクワに滞在する際には、極めて快適で、プロフェッショナルで人間的な温かみのある受け入れ体制を整えてくれたことは、賞賛に値します。まさにゴールデン・マスクのおかげで、コンテンポラリー・ダンスは、この芸術における新しい名前や出来事に対しての全国の関心を呼び起こすことができました。
「コンテンポラリー・ダンス」部門のノミネートと「バレエ」部門のノミネートを統合する案は、本質的に、ロシアのコンテンポラリー・ダンスという現象そのものを破壊することになるでしょう。主要な国家賞における「コンテンポラリー・ダンス」部門のノミネートの存在は、我々の活動や、新しい言語、思想の探求、そしてこの芸術の発展や現在や将来の担い手たちの創造的成長にとって大きなモチベーションでした。振付家やダンス・カンパニーにとって、この存在は自分たちが国全体の文化的コンテクストの一部であると認めうるもの、極めて高度な専門的水準で評価されうるものでした。ロシアのコンテンポラリー・ダンスは芸術的・美学的にも、経済的にも、精度的にも、様々な理由から「バレエ」と統合されたノミネートであるべきではありません(後略)」。
同レターには、振付家、公立、非公立のダンス・カンパニーの主宰者、「コンテンポラリー・ダンス」部門の「ゴールデン・マスク」受賞者、フェスティバル主催者、研究者、教育者ら50名以上の署名が添えられている。
署名者のリスト全体とオープン・レター全文は「ペテルブルグ・シアター・ジャーナル」のサイトでみることができる。
8月28日に演劇人同盟の会議でアレクサンドル・カリャギンは、ウラジミル・ミシャリンをトップとするゴールデン・マスク賞の新しい執行部の創設と同賞に関する規定の変更を発表した。この件に関する情報は、広報担当の署名付きで演劇人同盟のサイトに掲載された。すでに7月に明らかになっていた新しい規定の内容には、ノミネート数の縮小と、審査員および専門家会議の決定が演劇人同盟トップと文化省の管理下に置かれることが含まれていた。8月28日、『ペテルブルグ演劇ジャーナル』にゴールデン・マスク賞の破壊に反対する200名を超える演劇関係者たちが署名した請願書が掲載された。


9月4日

19:00.
ロシア軍中央アカデミー劇場(ЦАТРА)は大規模なツアー編成でセヴァストポリに到着。9月1日、特別保護区博物館「タヴリダのケルソネソス」の古代劇場でアンドレイ・バドゥリン演出『空飛ぶ船』が上演され、「きっと叶う夢について」の音楽劇の観客のなかには特別軍事作戦参加者たちの子ども達数十人もいた」とタス通信が報じている。9月6日まで同劇場はラヴレニョフ記念黒海艦隊ドラマ劇場と黒海艦隊将校会館で様々な作品(古典、メロドラマ、喜劇)の上演とコンサートを実施する。
とりわけ、ツアーのプログラムには「ロシアの英雄への献辞『我らが先導者たち(«Наши маяки»)』」が含まれている。9月2日の上演に関する劇場の発表では次のように書かれている(以下、劇場発表からの引用は綴りや句読点はそのママ)。「イベントのフィナーレでは、ロシア人民芸術家のオリガ・ボグダノヴァやコンサートに参加したアーティストたち全員による楽天的な「求めるは勝利のみ(“Нам нужна одна победа”)」が響き渡り、その後のツアーの日々への高揚感、気分、意欲を盛り上げた」。劇場はプレス会見でのオリガ・ボグダノヴァの発言を引いている。「セヴァストポリには本当によく来ていて、実際、ここに来るとほっとします! 2014年を思い出すと心が大きく震えます。クリミア併合の直後に将校会館でコンサートと『私たちはあなたの同胞で、あなたたちは私たちの同胞』がおこなわれ、その基調となっていたのは本物の家族の契りでした」。
またロシア軍中央アカデミー劇場は劇場の代表的女優アリナ・ポクロフカヤの言葉も伝えている。「クリミアのセヴァストポリに来られて嬉しいです。撮影やツアー以外にも、〔私にとって〕多くのものがこの場所と結びついています。私はドネツクに生まれ、ここに親戚もいて、つまり生まれ故郷なんですが、最も重要なのは、ここが決して焼け跡にはならないということです。いま現在はとても不安定で、ここで起きているあらゆることが私を動揺させます。でも、すべてはあるべき形で終わると信じています。だからきっと、私たちのこの土地はより美しく花ひらくでしょう」。
そのほか、ルナチャルスキー記念セヴァストポリ・ロシア劇場の小舞台では9月4日に『グレーゾーン』(モスクワで上演されたドンバスに関する初めての作品)の無料公演が実施された。同作は、セヴァストポリ出身のオリガ・マニコによる同名の戯曲とルガンスク出身のスヴェトラナ・チシキナの戯曲『優しい嘘』が原作となっている。これらのテキストを2022年に執筆した二人の劇作家は、「すべて実際の出来事に基づいている」と述べている。ユリヤ・シュリエヴァ演出の同作におけるエピソードの一つは「とある女性のモノローグ」、もう一つはリシチャンスクの10歳の住民ロマに関する「スケッチ」である。

17:00.
ミハイル・ブィチコフは、ロシア演劇人同盟議長アレクサンドル・カリャーギンとの「ゴールデン・マスク」賞の状況に関する公開の対話をSNSの自身のページで続けている。
ブィチコフは8月31日にカリャーギンに向けてオープン・レターを書き、はやくも9月1日にカリャーギンは演劇人同盟のサイトでブィチコフ、カマ・ギンカス、ゲンリエッタ・ヤノフスカヤをはじめとした〔ゴールデン・マスク〕演劇祭と同賞の行方を気にしている人々に向けた返答を公開し、その中で、提案されている改革を「健康診断」に例えた。「難しいプロセスだが、建設的に参加できる人々は喜んで招待する」とカリャーギンは記した。
本日ミハイル・ヴィチコフがカリャーギンへの返答として投稿されたテキストを、以下に全文引用する。

А. А. カリャーギンが9月1日付のオープン・レターで私の名前に言及しただけでなく、私個人に対しても「プロジェクトへのご提案とお気遣いに感謝します」と書いてきた以上、私は演劇人同盟議長への質問をできる限り具体的にまとめ、私の目から見て、「ゴールデン・マスク」が独立した専門機関として保つことができるような提案をしようと思う。

尊敬するアレクサンドル・アレクサンドロヴィチ!
1、絶対的に必要なのは「極めて多い」という「フェスティバルの活動への要望」をすべて具体的に挙げる必要があるということです。誰が要望しているのでしょう? あなたですか? あなたはそうした要望をこれまでに何か口にしたことがありますか? 誰に対しての要望ですか? 独立非営利団体「ゴールデン・マスク」の活動に対してですか? 
2、ゴールデン・マスクの現行のディレクションは、賞とフェスティバルの組織と運営に関する演劇人同盟との契約に違反していたのでしょうか? また、演劇人同盟と独立非営利団体「ゴールデン・マスク」の契約関係を停止する根拠はあるのでしょうか? どのような根拠でしょうか?
3、独立非営利団体「ゴールデン・マスク」の設立者から演劇人同盟が抜けるという決定は、演劇人同盟の事務局で議論されたのでしょうか? もしそうでなく、議事日程と投票の結果が記された事務局会議の議事録が存在しないのであれば、このような決定は違法ではないですか?
4、そもそも、プレスで報道された、ディレクションの刷新、演劇人同盟議長が「ゴールデン・マスク」トップの全権の「引き継ぎ」、および会長の交代という計画は、権力の乱用であり、演劇人同盟の規約違反、現行の「ゴールデン・マスク」賞に関する規則違反にあたるのではないでしょうか?
5、この変更案について、現在の「ゴールデン・マスク」トップのイーゴリ・マトヴェエヴィチ・コストレフスキーはどのように考えているのでしょうか?
6、「ゴールデン・マスク」に関するワーキング・グループはいつ結成されたのか教えていただけますか? 同グループのメンバー構成は? 同グループの権限は?規約は?
これは、アレクサンドル・アレクサンドロヴィチ、答えを受け取るべき質問です。「ゴールデン・マスク」をめぐる状況を、がちゃついた「舞台裏」から公共の場へと実際に移すため、専門的な議論の方向に軌道を変えるため、答えが必要なのです。どうか時間を見つけてこれらの質問に答えてください。この状況は極めて深刻で、私たちの仲間の大多数を不安にさせています。
実際のところ、主な質問は次のようなものです。そもそもあなたはなぜ「ゴールデン・マスク」の「改善」を始めようとしたのでしょう? あなたは刷新の必要性について抽象的に訴えているが、申し訳ありませんが、あなたの仲間たちは、「ゴールデン・マスク」の現行の運営者たちよりも長い期間、演劇人同盟に居座っている。創造的な同盟の運営にあたってきたあなたの豊富な経験を、まずは私たち演劇人同盟に向けるほうが適切なのではないでしょうか。
そこで、提案と要望です。具体的なノミネート作品や「ゴールデン・マスク」の制度の構造的な変更に関して議論することはいかなる意味も意義もないでしょう。取り上げるべき破壊的なアイデアは、専門家委員会と審査委員たちから独立性を奪い、賞に関わるあらゆる決定を演劇人同盟の議長に従属させるということです。
これこそがいまこの計画の起草者たちによって定められようとしていることだ。長年に亘って、見事に私たちの同盟を代表し、守ってきたあなたが、いまになって創造的な原則、民主主義的な原則を変更したいのですか? まだ遅くはありません。来年の4月末まで全てをそのままにしておくことが必要です。「ゴールデン・マスク」の現在の規定、現在のディレクション、現在の会長のままに。10月30日にあなたが予定している(おそらく、拡大)事務局会議において、フェスティバルと賞を改良するための可能な措置について議論し、事務局が原則的に承認した場合には、専門家たちとの幅広い議論を始めることを提案します。時間はかかるでしょうが、取り返しのつかない過ちや損失から、私たち、そしてあなたを守ることになるでしょう」。
8月28日に演劇人同盟の会合でアレクサンドル・カリャギンは、ウラジミル・ミシャリンをトップとするゴールデン・マスク賞の新しい執行部の創設と同賞に関する規定の変更を発表した。この件に関する情報は、広報担当の署名付きで演劇人同盟のサイトに掲載された。すでに7月に明らかになっていた新しい規定の内容には、ノミネート数の縮小と、審査員および専門家会議の決定が演劇人同盟トップと文化省の管理下に置かれることが含まれていた。8月28日、『ペテルブルグ演劇ジャーナル』にゴールデン・マスク賞の破壊に反対する200名を超える演劇関係者たちが署名した請願書が掲載された。

15:20.
ラトヴィアのプロデューサー・カンパニーKATLZ RIGAは、ベラルーシの作家でノーベル賞受賞者のスヴェトラナ・アレクシエヴィチの『セカンド・ハンドの時代』を原作とするミハイル・ドゥルネンコフの戯曲『愛すべき人々のネーション(«Нация влюблённых»)』の初演を告知した。プレヴェンにあるブルガリアの劇場「イヴァン・ラドエフ」での同上演はラトヴィア人演出家マルチンス・エイへ(Martins Eihe)の作品となる。初演は9月5日で、同作品はブルガリアの他の都市(プロヴディフとソフィア)でも上演される。
アレクシエヴィチのドキュメンタリー的書物に集められたポスト・ソヴィエトの1990年代に関する実際の人々の語りは、ドゥルネンコフの戯曲において「15人の登場人物の愛に関する短い物語」へと姿を変え、今日の移民者たちのインタビュー動画が付け加えられる。同企画の共同プロデューサーであるKATLZ RIGAはプレス・リリースで次のように述べている。「作品のなかで、ソヴィエト時代は記憶の時代となり、そうした記憶を通じて現実の出来事が浮かび上がってきます。それは血なまぐさく、恐ろしく、あらゆる世代に傷を負わせる出来事です。しかし、もっとも困難な時代にも人々は愛によって生き延び、彼らを生き延びさせたものに関する記憶でもって歴史的な真実の感覚をおき替えてきました。プレヴェンの劇場の舞台上では大きな共同住宅がぐるぐる回りつづけていて、隠れるような場所はどこにもなく、すべてがあけすけで、登場人物の誰一人として所有物はなく、自由に話すことができないような場所だった。どのような人でも死刑執行人にも、諜報機関への情報提供者にも、あるいは逆に救済者にもなり得るのです。そしてそれぞれの人生の物語に愛がある。芝居の一部には、ジャーナリスト、政治家、芸術家といったこの数年にロシアを離れた人々への2023年のインタビュー動画が用いられます。それはあたかも、セカンド・ハンドの時代が、国家的テロという新しい時代とともに戻ってきたかのように」。

15:00.
オレグ・タバコフ劇場は新シーズンに『特別軍事作戦参加者たちの実際の物語について』と上演することを、本日9月4日、芸術監督のヴラジミル・マシコフが劇団員の総会で発表した。テキストの作者は、(『ブンバラシの受難(«Страсти по Бумбарашу»)』の主役を演じた)若手俳優のセヴァスチヤン・スムィシニコフと現在同劇場の文芸部主任を務める劇作家のオレグ・アントノフである。彼らは「ごく最近、特別軍事作戦に関する戯曲ワークショップが行なわれた「タウリカ」から戻ったばかりである」とタス通信はヴラジミル・マシコフの言葉を引用している。「私たちは特別軍事作戦に参加した人々と出会った。これは、自分の物語、感情、情緒を分かち合うことのできる人々を選別することだった。これはさまざまに異なる物語であり、お茶を飲みながら話すようなものではなかった」。
さらに劇場の予定には、プーシキンを記念した「デンマーク」作品(『ピョートル大帝のエチオピア人』)とオストロフスキーを記念した「デンマーク」作品(『罪なき罪人たち』)、オレグ・アントノフの新しい戯曲(暫定タイトル『サリエリ』)の上演、アフィノゲノフの『恐怖』(「このタイトルはいまの時代にとてもマッチしている」とマシコフはコメントしている)の上演がある。また、オレグ・タバコフ劇場では大祖国戦争の時代の出来事を扱った二作品も上演される。「アンドレイ・ゾロタリョフは戦時中の偽の飛行場を扱った戯曲『リアル(„Настоящий“)に取り組んでおり、またシーズン予定には、1942年のヴァンゼー会議の出来事に基づいた『不浄の血(„Дурная кровь“)』(暫定タイトル)もある」とタス通信は報じている。


9月2日

16:20
ロシア人民芸術家リヤ・アヘドジャコヴァに対して、ロシア軍の信用失墜の条文に関する捜査が開始された。タス通信が司法機関に照会して報じた。同紙によると、捜査は、リヤ・アヘドジャコヴァが「ブレーメンの劇場でウクライナの国旗を掲げて舞台にたった」後に開始された。この条文で同女優は罰金もしくは行政上の逮捕のおそれがある。
捜査の実施を内務省に依頼したのは、「保安・反腐敗」連邦プロジェクト代表のヴィタリー・ボロジンである。彼が言及したのは、6月27日にブレーメンで上演された『我が孫ヴェニヤミン』のインターネット上に掲載された映像だった。そのカーテンコールでアヘドジャコヴァはウクライナ国旗を持って舞台にあがったとされる。この行為が、ボロジンによれば、「ロシア国民であり続ける彼女がそのロシアの信用を失墜させ」ているという。この容疑に対する返答としてリヤ・アヘドジャコヴァはガゼータ紙〔«Газете.ру»〕に、ブレーメンでのウクライナ国旗は「ある煽動者」によって手渡されたものであり、舞台上には持ち込んでいない、と語った。
「どういうことですか? 私がなんの旗を持って出たっていうの? ある煽動者がいて、花束を受け取っているときに、彼が私にその旗を押し付けてきました。ブレーメンの街で、カーテンコールのとき、私は花束をたくさんもらっていて、その中の一つにそれ[旗]が入っていたんです。最初、それをスカーフだと思いました。煽動者たちは意図的にやったのね。その人物を私たちは見つけることができず、目で探したのだけど、普通は舞台際まで来ているはずだから」と同女優は述べた。
これ以前にもヴィタリー・ボロジンはダニラ・コズロフスキーとアーラ・プガチョワの捜査の先導を試みていた。4月10日には、リヤ・アヘドジャコヴァに対して国家反逆罪で起訴するよう要請していた。


8月31日

23:00.
「テロリズム正当化」の容疑で拘置所に収監されているジェーニャ・ベルコヴィチとスヴェトラナ・ペトリイチュクがアンナ・ポリトコフスカヤ賞「音叉〔«Камертон»〕」を受賞。同賞は2013年から「人権擁護の領域における顕著な功績、言論の自由の原則を守る勇気と一貫性、誠実さ、品位、市民としての責任、人間としての思いやり」に対してジャーナリストに授与されている。2023年の同賞の審査員は全会一致で『美しき鷹フィニスト』の劇作家と演出家に対して、「人生と舞台における真実のために」と言葉を添えて同賞を授与することに決定した。
スヴェトラナ・ペトリイチュクはこの件に関して次のようにコメントしている。「近くの共和国の一つでジャーナリスト学部の学生だった私がアンナ・ポリトコフスカヤ賞を受賞することになると言われたとしても、もちろん信じることなんてできなかったでしょう。さらに驚くだろうことは、それがジャーナリスト活動によるものでは全くないということです。それでもやはり、私はいまでも自分をどこか偽物だと感じています。これは私にとって大変な名誉であり、とても大きな先払いです。この名誉にふさわしくなるよう精一杯努めます。そして、近いうちに受賞のお礼をみなさんに直接お伝えできると信じています」。
授賞式では政治犯を支援するオークションも実施された。そこでは、アレクセイ・ヴェネディクトフ〔モスクワのこだま編集長〕(外国エージェントに指定)が美術家クセニヤ・ソロキナの「ゴールデン・マスク」を購入した。これは彼女が2022年に『美しき鷹フィニスト』で受賞したものだった。この件に関しては、ジャーナリスト自身〔アレクセイ・ヴェネディクトフ〕が自身のテレグラム・チャンネルで発表した。集められた資金はペテルブルグのアーティストであるサーシャ・スコリチェンコにあてられる。彼女はすでに一年以上も勾留されており、健康に甚大な問題を抱えていることから特別食を必要としている。

22:00.
カマ・ギンカスとゲンリエッタ・ヤノフスカヤが、ゴールデン・マスク賞をめぐる現状に関して、演劇人同盟代表のアレクサンドル・カリャギンにあてた公開書簡を発表。SNS上で拡散された同テキストは リンク先から読むことができる。

14:00.
ミハイル・ブィチコフは『ペテルブルグ演劇ジャーナル』に演劇人同盟指導部と演劇界に対しての公開書簡を掲載し、そのなかでゴールデン・マスク賞の改組計画を「八月のクーデター」と呼び、発案者の責任を追及した。
書簡では次のように語られている。「ゴールデン・マスク賞に関する演劇人同盟からの新しい情報は、われわれの創造的な同盟にクーデターが生じているということを裏付けている。八月のノーメンクラトゥーラ的クーデターだ。演劇人同盟の職員たちはロシアの演劇界で制度を「追い出」している。その制度の権威、名声、創造的精神こそがその独立性といかなる「上位の人間」にも制御されえないものを保証している。
ロシアの演劇界の目の前で、同盟の指導部たちによって、公共的で、民主主義的で、創造的な演劇人同盟の性質が毀損されようとしている。演劇人同盟の構成員たちとの話し合いもなく、事務局が参加することもなく、演劇人同盟の名のもとに声明が出され、われわれ全員、つまりゴールデン・マスク賞とともに歩んできた俳優、演出家、美術家など何万人ものロシアの演劇人たち全員のものを強奪するために組織的な力学が強化されようとしている。
私はこれをもくろんでいる人々に責任を問いたい、そして率直に尋ねたいのだ。誰なのか、と。誰が、どのような根拠で国家的な演劇賞と演劇祭であるゴールデン・マスク賞を改変する必要があると判断したのだ、と。名乗り出たまえ! 明確な専門的論拠を示したまえ!」
書簡全文はリンク先から読める。
8月28日に演劇人同盟の会合でアレクサンドル・カリャギンは、ウラジミル・ミシャリンをトップとするゴールデン・マスク賞の新しい執行部の創設と同賞に関する規定の変更を発表した。この件に関する情報は、広報担当の署名付きで演劇人同盟のサイトに掲載された。すでに7月に明らかになっていた新しい規定の内容には、ノミネート数の縮小と、審査員および専門家会議の決定が演劇人同盟トップと文化省の管理下に置かれることが含まれていた。8月1日にミハイル・ブィチコフはSNSに演劇人同盟に宛てて、新しい規定を批判する公開書簡を投稿、また8月28日に『ペテルブルグ演劇ジャーナル』にゴールデン・マスク賞の破壊に反対する200名を超える演劇関係者たちが署名した請願書が掲載された。


8月29日

16:15.
マルク・ザハロフ・レンコム劇場はイスラエル・ツアーの中止に関して各メディアに宛てられた公開書簡のなかでコメントした。そこでは、「制御不能なイスラエルのウクライナ愛国者グループを捉えて離さないヒステリーと招聘側が立場を明示しないため」レンコム劇場自体がツアーを断ったと述べられている。また同書簡では「ツアーは予算外の資金源で実施されるはずで」、それは「劇場の友人や素晴らしい作品のファンから」の予算だったと主張されている。しかし、「ツアー予算の大幅な増大」のため、「俳優たちはわずかな日当以外は無償で働くことに同意していた」という。劇場は、ツアーへの反対者たちを「あからさまな脅迫と攻撃的な侮辱」だと非難し、イスラエル当局に対して、こうした人々の「奔放で破壊的なふるまい」を公式に評価するよう求めた。


8月28日

16:00.
〔テルアビブの〕ハビマ劇場でのマルク・ザハロフ・レンコム劇場のツアーが中止に。 Haaretz紙が報じた。その理由となったのは、ロシア語話者のイスラエル人たちによる抗議だった。同紙によれば、ウクライナにおけるロシア当局の政策を支持する劇場のツアーに反対する請願書に、わずか三日間で5000を超える署名が集まったという。マルク・ザハロフ・レンコム劇場の俳優の多くは公然と特別軍事作戦を支持しており、その中にはアンドレイ・レオノフ、ヴィクトル・ラコフ、アントン・シャギン、オレシャ・ジェレズニャクがいる。ショレム・アレイヘムの作品を原作とした『追善の祈禱〔«Поминальная молитва»〕』のツアーは10月末に実施されるはずだった。
ツアー主催者のハリ・オルドンはSNSに掲載された声明の中で次のように述べている。「ハビマ劇場の指導部と協議した結果、我々は日程をバラし、レンコム劇場のイスラエル訪問をいわゆる「戦争後の夕方6時」まで延期することとしました」。


8月26日

16:10.
ノヴォシビルスクの第一劇場で創設メンバーの俳優たちが解雇される。ポータル・サイトの「ノヴォシビルスク・ニュース〔Новости Новосибирска〕」が報じた。シーズンが始まるまでに10人を超える俳優たちが劇場を離れた。同紙によると、これは劇場執行部との対立によるものだという。2022年3月に、劇場ディレクターのユリヤ・チュリロヴァが解雇され、その後の2023年2月には芸術監督のパヴェル・ユジャコフもまた劇場を離れていた。新しいディレクターにはミハイル・ドロブィシェフが、芸術監督にはノヴォシビルスクの演出家ジェムマ・アヴェチシャンが任命された。
「私が劇場を去った時、俳優たちも全員残り、作品もそのままだった。劇場はシーズンとレパートリーに関して準備万端だった」。ノヴォシビルスク・ニュースはユジャコフの言葉を引いている。「私は俳優全員に仕事を続けて欲しいと考えていた。しかし、どうやら、何かが起こり、新しい指導部とはやっていけないということを彼ら全員が悟ったようだ。主要な俳優の何人かは新しい指導部に解雇され、何人かは他の劇場に移っていき、また何人かは街を離れた。そして昨日最後の二人の俳優が解雇となった」。



Comments

Leave a Comment