ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第11週

凡例

タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。

訳者による割注は〔〕で記している。

戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。

人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。

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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)第11週

Театр.誌原文(第11週)

(翻訳:伊藤愉)

▶︎公開:6月8日00:45
▶︎更新:


2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。

*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。



5月11日

12.00.
6月15日から19日に新リガ劇場でアルヴィス・ヘルマニス演出のモノドラマ『Post Scriptum』のプレミア上演が行なわれる。この一人芝居の主役はロシア国籍の女優チュルパン・ハマトヴァが演じる。作品では、アンナ・ポリトコフスカヤの出版物と、検閲によって発禁処分にあったフョードル・ドストエフスキーの長編小説『悪霊』のある章が用いられる。『Post Scriptum』はラトヴィア語字幕付きのロシア語で上演される。
3月21日に、ラトヴィア人演出家のアルヴィス・ヘルマニスはロシアを離れてラトヴィアに移住した女優チュルパン・ハマトヴァを、自身が率いる新リガ劇場に招いていた。

11.30.
ザルツブルク音楽祭はテオドール・クルレンツィスとの協働を継続する。音楽祭芸術監督のマルクス・ヒンターホイザーがDer Standard誌のインタビューでこのことを語った。彼はクルレンツィスのmusicAeternaオーケストラと合唱団は自立的なカンパニーで、ロシア国内の劇場といかなる関係も持っていない、と指摘した。「私たちはすべてのロシア人アーティストに全き疑惑を向けたいのでしょうか? それは壮大な陰謀論以外の何物でもない」とヒンターホイザーは述べている。すでに知られているように、この夏ザルツブルクではロメオ・カステルッチとテオドール・クルレンツィスはバルトークの一幕オペラ『青ひげ公の城』とカール・オルフのオラトリオ『時の終わりの劇』の上演を行なう予定である。ヒンターホイザーはこの件に関して代替案はあり得ないと強調した。
4月21日には、在墺ウクライナ大使のヴァシリー・ヒミネツ氏が、クルレンツィスがmusicAeternaオーケストラと共にザルツブルク音楽祭〔Salzburger Festspiele〕に参加しうることに対して激しい批判を述べていた。ウィーンのコンサートハウスではmusicAeternaオーケストラの慈善コンサートが中止されている。4月29日にはウィーン国立歌劇場の総支配人ボグダン・ロスチッチがロシア人アーティストのボイコットへの反対と、テオドール・クルレンツィとmusicAeternaの団員への支持を表明している。


5月9日

17.55.
ブレヒト〔の『第三帝国の恐怖と貧困』〕原作の『白墨の十字』を上演中に、内務省特殊部隊がフセヴォロド・リソフスキーを拘束。リソフスキーが自身のSNSで知らせた。演出家の計画では、『白墨の十字』はモスクワの地下道で演じられるはずだったが、上演は結局、辻広場の「オゴロドナヤ・スロボダ」で行なわれることになった。3時間後、リソフスキーは調書の作成なしに解放された。詳細は弊誌のサイトを参照(http://oteatre.info/lisovskogo-otpustili-iz-politsii/)。


5月8日

22.10.
ソーシャルアート・プロジェクト「イヴの肋骨」キュレーターのユリヤ・カルプヒナとフェミニズム・アクティヴィストのダラ・シューキナは「電話テロリズム」の罪で被疑者となった。「イヴの肋骨」がSNSでЗакС.Руのサイトへのリンクとともに伝えている。当該サイトによれば、5月7日夜にカルプヒナの自宅にシロヴィキ(情報機関職員)が訪れ、捜索を行なった。4時間後、彼女とダラ・シューキナはペトログラード地区の調査委員会に連行され、取り調べを受けた。容疑者として取り調べを受けた後、二人とも拘置所に送られた。拘束から48時間後には、釈放あるいは保釈されることになる。
「イヴの肋骨」のSNSではカルプヒナの弁護人のヴェラ・イヴァノヴァの言葉が引用されている。それによれば、、カルプヒナはインフラに対するテロ行為と知りながら虚偽の報告を行うことに関する条文(刑法第207条第2項)の被疑者となっている。捜査当局によると、彼女はロシア連邦大統領付属国民経営・国家事業アカデミー(РАНХиГС)への「爆弾テロ」に関する情報に関与している可能性がある。4月29日には対象者不明の刑事事件が告発されている。「ユリヤとダラに関する情報がどこからどのように知られるようになったのか、捜査によって彼女らの犯罪への関与の可能性がどのように立証されたのか、どのような情報に基づいて捜索に来たのか、こうしたことに関する情報はありません」と「イヴの肋骨」はイヴァノヴァの言葉を引いている。
5月1日にLGBTQ団体に反対するチムール・ブラトフが、カルプヒナとシューキナは政治的運動の実施を準備していると通報したことにより、二人は拘束された二人はガッチナ警察署に連行され、同日に調書なしで釈放されていた。シューキナは、彼女らはいかなるイベントも企画していなかったと伝えていた。


5月6日

16.00.
ロシア下院副議長ボリス・チェルヌィショフは元ヴァフタンゴフ劇場芸術監督のリマス・トゥミナスの発言に過激思想がないか調査をするようにロシア最高検察庁に要請。
「ヴェドモスチ」紙が報じた検事総長イーゴリ・クラスノフへのチェルヌィショフの訴えでは、トゥミナスとウクライナ政府の代理人を名乗る悪戯者たちと電話が5月5日にRutubeで公開されたという。「ウクライナの文化大臣とのやりとりを想定しながら、トゥミナスはウクライナでの特別軍事作戦に関する発言を立て続けにしたり、ロシア社会に対する過激な姿勢を強く打ち出している」と副議長は要請書で主張している。
チェルヌィショフは、トゥミナスが刑法280条および282条(過激派的行為への公然の呼びかけ、憎悪や敵意の扇動、人間の尊厳の侮辱)に違反したかどうかを調査するようにロシア最高検察庁に要請した。
5月6日、ヴァフタンゴフ劇場はトゥミナス2007年から率いていた劇場での「活動をやめた」との情報を出していた。〔ロシア〕文化大臣のオリガ・リュビモヴァは「しかるべき指令に署名した」ことを認めた。5月1日以降、トゥミナスは健康上の理由からリトアニアに滞在している。



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