凡例
タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。
訳者による割注は〔〕で記している。
戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。
人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。
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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)25ヶ月目
Театр.誌原文(25ヶ月目)
(翻訳:伊藤愉)
▶︎公開:2024年8月5日19:55
▶︎更新:
2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。
*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。
編集部は週ごとのタイムラインを月ごとのタイムラインに切り替えることに決めた。だが、私たちは近いうちにこうしたタイムラインを公開する必要がまったくなくなることを望んでおり、それを信じている。
3月18日
9:00. マリーナ・トカレヴァとオリガ・エゴシナが創設したフェスティバル「舞台芸術ビエンナーレ/演出の授業」が対象範囲を拡張。2024年は、カザンとチェボクサリのほか、「未来の舞台」プロジェクトのラボラトリをルガンスクで開催する。ラボラトリの責任者はアレクサンドル・コルチェコフ、参加者はアナスタシヤ・シテプラ、ラニボ・ツジャオ、アナスタシヤ・スタルツェヴァ、ミハイル・シモノフ、ユリヤ・プレオブラジェンスカヤ、ユリヤ・ヴォロンツォヴァ。勝者はパーヴェル・ルスペカエフ記念ルガンスク・アカデミー・ロシア・ドラマ劇場の舞台で2025年1月20日まで作品を上演する。
12:11.
フランスの出版社Sampizdat éditionsから戯曲集『リュビモフカ2022:こだまのこだま』が出版された。フランス語に翻訳された6つの戯曲:『ランダムな八文字』(Н. コヴァリチュク)、『演劇のためのテキスト:知的劣化をとり除く労働』(ヴィケンチー・コスチュケヴィチ)、『ヴァーニャは生きている』(ナタリヤ・リゾルキナ)、『シャシリク』(パーヴェル・プリャシコ)、『インスタグラムで私たちは永遠に生き続ける』(イリーナ・セレブリャコヴァ)、『日本』(アンドレイ・スタドニコフ)が収録されている。同出版物は、パリで行なわれたイベント「リュビモフカのこだま」で朗読されたテキストをまとめたものである。戯曲集の編集はエレーナ・ゴルジエンコとアントゥアン・ニコリ、翻訳はアーシャ・ヴラシク、エレーナ・ゴルジエンコ、アナスタシヤ・エヴシテグネエヴァ、エレオノラ・ミトラホヴィチ、アントゥアン・ニコリ、ナタリヤ・プロコフィエフ、Lёshat。
公式の刊行日は3月26日。論集はフランスの書店、小売チェーンfnac、出版社で注文することができる。
3月14日
12:38.
3月20日にベルリンのBallhaus Prinzenallee劇場で、エステル・ボル(アーシャ・ヴォロシナ)の戯曲『子孫』(演出はユリヤ・マズロヴァ)の朗読パフォーマンスが行なわれる。上演では、「フランシスコ・デ・ゴヤ、ヒエロニムス・ボス、サルバドール・ダリ、ギュスターヴ・ドレらの絵画で視覚化された現代の地獄をめぐる」ように特徴づけられた上演では、100点以上の古典絵画や版画で構成されたビデオ・シークエンスが用いられる。出演者はユリヤ・アウグ、オリガ・ロマノヴァ*、タソ・プレトネル、アントニナ・ジケエヴァ、グリゴリー・コフマン、アレクセイ・デドボルシ、デニス・ビルノフ、ヴラジミル・シテバ、ユリヤ・マズロヴァ。
同戯曲が初めて客前で演じられたのは、2023年11月、プラハでのフェスティバルKulturus 「戦争のはじまり」だった。
* ロシア法務省が外国エージェントのリストに入れている。
3月13日
8:15.
3月12日に連邦保安庁の職員がペルミ現代美術館PERMM館長のナイリャ・アラフヴェルジエヴァを家宅捜索したことが明らかになった。『コメルサント・ペルミ』が報じた。本件は3月12日にペテルブルグ、モスクワ、ウリヤノフスク、ニジニ・ノヴゴロドで実施された芸術家らへの家宅捜索と同様、ピョートル・ヴェルジロフ* に対して提起された国家反逆罪との関係があるものとされる。
またペルミでも現地アクティヴィストの一人に対して家宅捜索が行なわれた。
* ロシア国内で外国エージェントに指定。
3月12日
11:30.
ロシア各地で芸術家たちが家宅捜索され(その数はおよそ15人ほど)、そのうちの何人かは拘束されたと人権保護プロジェクト「ネットワーク・フリーダムズ」が発表した。捜索の一部は、ロシア刑法275条(国家反逆罪)に基づき、モスクワのレフォルトフスキー裁判所によって許可された。本件はおそらくピョートル・ヴェルジロフ*に対する国家反逆罪に関連している。事件の提起に関しては、本日、捜索の際に明らかになった(捜索の一つはヴェルジロフ*の母親の家で行なわれた)。とりわけ、サンクトペテルブルグでは連邦保安庁の職員がカトリン・ネナシェヴァとナターシャ・チェトヴェリオのもとに訪れ、「死者の党」の参加者クリスチナ・ブベンツォヴァは捜索のあとに拘束された。ウリヤノフスクでは芸術家のエゴル・ホルトフが、ニジニ・ノヴゴロドでは義絵術かのアンドレイ・オレネフが拘束された。またPussy Riotメンバーのマルガリータ・コノヴァロヴァ、オリガ・クラチョヴァ、オリガ・パフトゥソヴァの自宅も家宅捜索され、後者二人は尋問のため連行された。
* ロシア国内で外国エージェントに指定。
3月11日
21:30.
全ロシア博覧センターでの展示「ロシア」でコンスタンチン・ボゴモロフの愛国的プロジェクト『国家の声』の上演が始まる。同プロジェクトの登場人物は、告知によれば、「普通のロシア人たちであり、彼らの日常の労働は私たちの生活をより良いものに変える」という。それは、ゴミ収集車の運転手であり、鉱山労働者であり、溶接工であり、機械整備工であり、機械作業員であり、またブインスキー劇場ディレクターのライリ・サドリエフである。340以上の応募からドキュメンタリー的一人芝居のベースとなる12の物語が選ばれた。
ボゴモロフによれば、同プロジェクトは「我が国におけるドキュメンタリー演劇の復興と変革」を目指したものであり、彼の考えではドキュメンタリー演劇は「長らく人生の暗く悲しい側面に焦点が当てられていた」が、いまではそうした傾向は「すでに消えつつある」。
総予算5700万ルーブルの大規模プロジェクト(文化イニシアチブ大統領基金のサイトでの申請書による)に携わることに同意したのは、演出家タルガト・バタロフ、イヴァン・ミネフツェフ、フィリップ・グレヴィチ、ミハイル・プルタヒン、アイダル・ザッバロフ、ヴィクトリヤ・ペチェルニコヴァ、劇作家のドミトリー・ダニロフ、ヴァレリー・ペチェイキン、イリギス・ザイニエフ、マリヤ・マルヒナ、イーゴリ・ヴィトレンコなどである。
上演の出演者は、イーゴリ・ミルクルバノフ、アレクサンドラ・レベノク、アレクサンドル・セムチェフ、アレクセイ・ヴェルトコフなど著名な俳優たち。また、3月と4月に全ロシア博覧センターの文化宮殿で行なわれる上演は無料である。
3月7日
14:10.
バレリーナのイリゼ・リエパがロシア・メディアでのインタビューを理由にリトアニア国籍を剥奪される。本件に関する布告は、2月の国籍委員会の要請を受け、リトアニア大統領ギタナス・ナウセダが署名した。
本決定の理由となったのは、ロシアのメディアとのリエパのインタビューで、そのなかで彼女はバルト諸国の振る舞いを非難し、ヴラジミル・プーチンの支持を表明していた。リトアニア内務省は同バレリーナの公の場での発言を「国家の信用を損なうもの」と評した。リエパはリトアニアの名声を高めたことで2000年に例外的に国籍を与えられた(10年以上、彼女のパートナーはダンサーのピャトラス・スキルマンタス(Petras Skirmantas)だった)。例外的に与えられた国籍の剥奪は、リトアニアの安全保障上の利益を脅かす行為だけでなく、リトアニアやEU諸国、その同盟国の脅かしている国家を公的に支援した場合にも適用されうる。
2月29日
16:42.
ベルコヴィチとペトリイチュクが起訴される。本件はペトリイチュクの事件に関するSNSで明らかになった。「大統領教書演説の際、スヴェトラナ・ペトリイチュクとエヴゲニヤ・ベルコヴィチがロシア連邦刑法205条2項の最終版により起訴された」。
最終版には「マスメディアやインターネットを含む電子情報通信ネットワークを用いたテロ活動遂行の公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、テロリズムのプロパガンダ」が含まれている。同違反は、30万ルーブル以上100万ルーブル以内の罰金または有罪判決を受けた者の3年以上5年以内の期間の賃金ないしその他の収入額、または5年以上7年未満の禁固刑および一定の地位につく権利あるいは一定の活動に従事する権利が最大5年間剥奪される。
弁護側は事件資料の検討に着手した。拘束期間の延長に関する次回の審理は3月10日までに実施される予定。
2月28日
22:00.
劇作家ブレヒトの生まれ故郷アウクスブルクのブレヒト・フェスティバルで、ナナ・グリンシテインの戯曲『カローラ・ネーアー/ズボン役』に基づくアナスタシヤ・パトライ演出のドキュメンタリー演劇『メモリア』が上演された。原作では、亡命中のベルトルト・ブレヒトのインタビュー、裁判資料、テキストと、ブレヒト劇の著名な女優カローラ・ネーアーの事件とが絡み合う。ネーアーの悲劇的な運命は「インターナショナル・メモリアル」*によって復元された。1933年、彼女はヒトラーのドイツからソ連に亡命したが、逮捕され矯正労働収容所の監獄で死亡した。
同作品はモスクワのメイエルホリド・センターで創作され、初演は2022年2月9日だった。ドイツ語上演のため、アナスタシヤ・パトライは特別にロシア語とドイツ語の上演バージョンを作り上げ、アリョナ・スタロスチナ、イヴァン・ニコラエフ、そしてドイツ人女優のカタリナ・スピアリンク(Катарина Шпиринг)が出演した。
* ロシア国内で外国エージェントに指定され、ヴェルホフヌイ裁判所の判決により、活動停止となった。
12:00.
2月28日から3月12日にパリでタチヤナ・フロロヴァとクナム劇場(КнАМ Театр)の『私たちはもういない…』が上演される。上演が行なわれるLes Plateaux Sauvagesのサイトでは、作品とその作り手たちについて次のように述べられている。「やむを得ぬ亡命という自らの体験に基づいて、リヨンに逃れたロシアのカンパニーは、この場所で、自らの体験に基づいたドキュメンタリー演劇を上演する。本作は喪失の体験、人格の損失、出自の損失を問いかける。2022年3月22日、彼らは全部で23キロの荷物、記憶、家族の物語を背負ってロシアを完全に離れた。その生涯が長い年月の間に積み重ねられた事物のなかに溶け込んていく。こうした事物やそれと結びついた感情を通して、『私たちはもういない…』は国家の歴史を紐解いていく」。
現在、タチヤナ・フロロヴァとクナム劇場はリヨンのCélestins劇場にレジデンス・アーティストとして所属し、同劇場でも上演を行なっていた。
クナム劇場(КнАМ Театр)(コムソモリスク・ナ・アムーレ、ハバロフスク地方、ロシア連邦)は1985年に、演出家のタチヤナ・フロロヴァと志を同じくする彼女の仲間たちによって設立された。劇場は〔これまで〕幾度となく国際フェスティバルに参加。
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