凡例
タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。
訳者による割注は〔〕で記している。
戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。
人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。
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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)27ヶ月目
Театр.誌原文(27ヶ月目)
(翻訳:伊藤愉)
▶︎公開:2024年10月9日15:50
▶︎更新:
2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。
*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。
編集部は週ごとのタイムラインを月ごとのタイムラインに切り替えることに決めた。だが、私たちは近いうちにこうしたタイムラインを公開する必要がまったくなくなることを望んでおり、それを信じている。
5月24日
14:00.
ヴァフタンゴフ劇場は「ロシア退役軍人」の会による文化大臣オリガ・リュビモヴァへの訴えを受け、リマス・トゥミナスを偲ぶ夕べを中止した。6月4日に予定されていた前芸術監督に関する夕べについて同劇場は5月22日に発表、同日には1000人規模のメインステージでのチケットは全て完売していた。その翌日の5月23日、z系メディアが、「ロシア退役軍人」の会代表で特別軍事作戦義勇兵のイリダル・レジャポフが署名した「リマス・トゥミナスを偲ぶ夕べだけでなく、劇場で予定されている彼の演出作品すべて」の中止を求める請願書を公開した。「ロシア退役軍人」の会のサイトにはレジャポフの言葉が掲載されている。「われわれはトゥミナスを記念する会は許しがたいと考えている。この出来事は、先ごろカナダ議会でナチストであるグニカ〔Гунька:Hunka フンカ〕を称賛したスキャンダルに匹敵する。劇場の運営陣はどうやら異なる道徳的・倫理的現実に生きているらしい」。
5月20日
15:30.
演出家のキリル・セレブレンニコフは自身の教え子である演出家ジェニャ・ベルコヴィチと、劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの支持を表明。カンヌ国際映画祭での自身の作品『リモノフ/バラード(Limonov – the ballad)』のプレミア上映に関連したプレス・カンファレンスに、彼は被告席に座るベルコヴィチとペトリイチュクが写った写真を持って出席した。「彼女らは芝居を上演した以外に何も悪いことはしていない」と同演出家は語った。「そしてすでに一年もこじつけの罪で拘禁されている」。ベルコヴィチとペトリイチュクは2023年5月4日に拘束され、5月5日以降、拘置所にいる。拘束の理由となったのは、ネットで急進的イスラム主義者たちと知り合い、シリアにいる彼らのところに向かう女性たちの物語であるスヴェトラナ・ペトリイチュクのドキュメンタリー的戯曲に基づいたベルコヴィチの作品『美しき鷹フィニスト』である。ロシア刑法205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件された。2024年5月20日、第二西部地区軍事裁判所で演出家ジェニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの事件に関する審査が始まった。
14:00.
ルナチャルスキー記念ケメロヴォ州立ドラマ劇場で演出家ユーリー・テミルバエフが、ヴィタリー・ドロフェエフとアレクセイ・ポセレノフの戯曲『コールサイン《クズバス》あるいは前線の神々』を原作とする『コールサイン《クズバス》』を上演。ドロフェエフはドンバスの軍事行動に参加していた。
ロシア国家親衛隊のサイトでは同上演に関して次のように述べられている。「登場人物のモデルの一つは国家親衛隊特殊部隊員の人生である。そして作品において彼のコールサインは「クズバス」だった。本作は特別軍事作戦をモチーフとして事件の当事者によって上演されたロシアで初めての演劇作品である」。また同ページではドロフェエフの言葉も引かれている。「戯曲『コールサイン《クズバス》』のメインストーリーは、突撃部隊の隊長ザハールの物語である。彼の人物像は北コーカサス、シリアなどで名誉と勇敢さで持って祖国を守ったロシア国家親衛隊の将校の実話に基づいている。2022年2月24日がきたとき、彼はすでに引退していたにもかかわらず、躊躇することなく契約書にサインし、いち志願兵として前線にでた」。
作品ジャンルが「バラード」とされた同作に関して劇場サイトでは次のように述べられている。「舞台は特別軍事作戦が行なわれているドンバスの、義勇兵大隊の一つ。4人の兵士が、それぞれの運命と、その場所にいるたしかな理由を背負っている。1人目は復讐を誓い、2人目は自らの名誉の回復を願い、3人目は愛を守るため、4人目はいま起きていることに世代間の結びつきと運命の必然を見てとっている」。
5月12日
17:00.
Staatsschauspiel Dresdenでドレスデン平和賞の授賞式が行なわれた。同賞は、ミハイル・ゴルバチョフが最初の受賞者となった2010年以降、毎年様々な専門家に授賞されている国際賞である。今年のドレスデン賞はアレクセイ・ナヴァリヌイに死後授与された。
授賞式では、作曲家セルゲイ・ネフスキーの「二曲のカノン・マドリガル」と名付けられた「アレクセイ・ナヴァリヌイへのレクイエム」が世界初演された。二つの声楽曲のうち、ヴァルラム・シャラモフの詩に基づく一曲目の「深夜に」はこの日のための書き下ろし、二曲目のパゾリーニの詩に基づく「心からこぼれ落ちたもの」は2022年に作られた。 ネフスキーの音楽は、オラフ・カッツァー率いるヴォーカル・アンサンブルAuditivVokal Dresdenが奏でた。さらにStaatsschauspiel Dresdenのアーティストたちが、チェリストのエミール・ロフナーの伴奏でアレクセイ・ナヴァリヌイのテキストを読み上げた。
5月3日
15:00.
ベルコヴィチとペトリイチュクはさらに半年間、拘置所に拘留される。第二西部地区軍事裁判所でジェニャ・ベルコヴィチとスヴェトラナ・ペトリイチュクの事件に関する審理が行なわれた。裁判官は両者の拘禁を6ヶ月延長する検察の請求を認めた。
5月2日
14:35.
モスクワ市裁判所でスヴェトラナ・ペトリイチュクとジェニャ・ベルコヴィチの拘束期間延長に関する控訴審が開かれた。4月8日、ザモスクヴォレツキー裁判所はベルコヴィチとペトリイチュクの拘置所に5月4日まで留置する決定を下した(一年前の2023年5月4日に、彼女たちは拘束され、その時から拘禁されている)。モスクワ市裁判所は強制措置を変更なしに継続とした。
審理でベルコヴィチの弁護士のクセニヤ・カルピンスカヤは、事件資料が本件の複雑さを語るものではなく、被告人たちの拘禁期間を延長し続ける根拠にはならないとあらためて指摘した。ペトリイチュクの弁護士のマリヤ・クラキナは、裁判所が事件資料の代わりにその目録のみを参照していると弁護側が主張していることに基づいて、ザモスクヴォレツキー裁判所の審理の映像記録の提出を請求したが、これは事件資料の検証とともに却下された。
10:00.
4月14日、クレタ島のイラクリオン(ギリシャ)で、スヴェトラナ・ペトリイチュクの戯曲『美しき鷹フィニスト(“Φίνιστ, ο Σταυραετός”)』が上演された。Queen Bees Theatrical Companyによる上演はギリシア語で行なわれた。同上演の演出家コンスタンチナ・パッリが2023年6月に翻訳したもの。ギリシア語版では、急進的イスラム主義者たちとインターネットで知り合った「マリユシカたち」の物語は、4人の女優のアンサンブルで語られる。企画者たちは、初演時の6回上演は満席だったと述べている。
4月26日
15:00.
4月26日と27日、トフストノゴフ記念ボリショイ・ドラマ劇場の第二舞台(カメンノオストロフスキー劇場)で、ミハイル・ゴルボヴィチ記念ルガンスク・アカデミー音楽ドラマ劇場の上演が行なわれる。上演は、連邦プログラム「グランドツアー」の一環で、ツアー日程のファイナルとなる。同劇場はすでにカレリア共和国とムルマンスク州を訪れ、またサラトフ州でのフェスティバル「生のために!(ZА ЖИЗНЬ!)」に参加してきた。ペテルブルグでは大祖国戦争の際の地下組織「若き親衛隊」を扱ったロック・オペラ『磔にされた青春(«Распятая юность»)』やショーロホフの「ドン物語」を原作とした音楽喜劇『女たちの反乱』が上演される。