凡例
タイムラインはテアトル誌を踏襲し、時系列を遡る形で記している(新しい情報が上)。
訳者による割注は〔〕で記している。
戯曲、小説、上演等の作品タイトルは内容を確認できていない場合、仮置きの日本語訳を記している。
人名におけるアクセントの音引きは、基本的には表記しない。
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ロシア演劇界タイムライン(2022年2月24日-)29ヶ月目
Театр.誌原文(29ヶ月目)
(翻訳:伊藤愉)
▶︎公開:2024年12月11日00:20
▶︎更新:
2月24日、テアトル誌はウクライナ領の状況に関連するタイムラインの記録を開始した。
*Roscomnadzor(ロシア連邦通信・IT・マスメディア監督庁、Federal Service for Supervision of Communications, Information Technology and Mass Media)はロシア軍によるウクライナ各都市への砲撃やウクライナ民間人の犠牲関する情報、および進行中の作戦を攻撃・侵略・宣戦布告と呼ぶ資料は現実に即していないとみなしている。
編集部は週ごとのタイムラインを月ごとのタイムラインに切り替えることに決めた。だが、私たちは近いうちにこうしたタイムラインを公開する必要がまったくなくなることを望んでおり、それを信じている。
7月21日
17:00.
「ウプサラ=サーカス」は8月16日と17日にライプツィヒで「スーツケース(«Чемоданы»)」を上演する。カンパニー主宰で演出家のラリサ・アファナシエヴァによると、同作は2年前から制作されてきた。これは、ワークショップの成果となるユニークな「サーカス短編集」である。
「スーツケース」は10歳以上の大人も子どもも対象とした作品で、制作者たちは、そうした観客たちと「重要なことを話す必要」があると信じている。作品には4人のアーティストが出演する。サーカスの手法(アクロバット、ジャグリング、ディアボロ(空中ごま)、コンテンポラリー・ダンス)を用いて、彼らは2年間の経験に基づいて、観客とともに次のような問いを考えようとする。「スーツケースのなかにはなにが入っているのだろう。それは新しい世界で居場所を見つけ、目標に向かうことを助けてくれるだろうか。あるいは何かを心待ちにして立ち止まることになるのだろうか?」
作品紹介では制作者たちが考えているその他の問いも列挙されている。「君のスーツケースにはどのような印象が詰まっているのだろう? そのスーツケースをテニして君はどのような旅に出たのだろう? スーツケースに君はなにを残し、なにを取り除くんだろう? 旅の途中で君たちは誰に出会い、その出会いは君の人生をどのように変えるだろう? そして最も重要な問い:移動は悲劇的なことなのか、それとも単に新しい生活への一歩なのか?」
現在、「ウプサラ=サーカス」はドイツに移ったが、カンパニーの一部は故郷のサンクト・ペテルブルグで活動を続け新しい作品を発表している。
7月18日
12:00.
裁判所は控訴審でイヴァン・ヴィルィパエフへの懲役8年の判決を取り消す。RIAノーヴォスチによると、これは法廷での事件審理において違反が生じていたため。現在事件はあらためてバスマンヌィ裁判所での審理に差し戻されている。
2023年12月にイヴァン・ヴィルィパエフは欠席裁判で一般矯正施設における8年の懲役、4年間のウェブサイトの管理に関わる活動の権利剥奪の判決がくだされていた。また、国際指名手配されてもいる。
ヴィルィパエフは政治的、イデオロギー的、民族的憎悪や敵意を動機として、ロシア軍の行動に関するデータを含む虚偽の情報を、公に拡散したとして罪に問われていた(ロシア連邦刑法207条3項2号)。2014年から劇作家で演出家のイヴァン・ヴィルィパエフはポーランド在住で活動している。
7月16日
23:00.
SNAMI.Projectカンパニーは、9月7日から9日にタリンで実施されるKRYMOV FESTを発表した。同プロジェクトは10月に70歳をむかえるドミトリー・クルィモフを祝して行なわれる。
9月7日と8日はKino Artisの舞台でモスクワでの同演出家が演出し、すでに生で観ることのできない最後の作品2つ、『モーツァルト『ドン・ジュアン』/ゲネプロ』(ピョートル・フォメンコ工房)と『コスチク』(プーシキン劇場)の録画を上映する。9月9日は、ロシア劇場で演劇批評家のセルゲイ・ニコラエヴィチがドミトリー・クルィモフへの公開インタビューを行なう(この会談はクルィモフの父親であるアナトリー・エフロスの映画『On Thursday and Never Again』にちなみ、「On Monday and Never Again」と名付けられた)。対談の中心的なテーマは、同演出家が近年国外で上演した作品と演劇そのものになることが予定されている。
7月11日
14:20.
スヴェトラナ・ペトリイチュクの夫であるユーリー・シェフヴァトフは、テレグラム・チャンネルに裁判における彼女の最後の言葉を投稿した。ここにその言葉をすべて転載する。
「第1回審理で私の弁護人が私に言った言葉の一つは、私とベルコヴィチは、カラウロヴァが判決を聞いたのと同じ水槽の中にいる、というものだ。彼はたしかに知っている。彼もまたカラウロヴァの弁護人だったからだ。私の劇作の恩師は、もちろんん、最大限に自らの登場人物のことを考察しなければならない、と教えていた。しかし私は、これほどまでにその登場人物と近しい関係になるとは考えていなかった。
この1年間、人生においても芸術においてもこれまで遭遇したことのないような猛烈な不条理の犠牲者であると自分自身を感じています。また侮辱されているとも感じます。6年前、戯曲を書いていたとき、私は法秩序を司る機関によって最大限に是認されていることをしている、作家として可能なやり方で犯罪防止に貢献していると確信していました。私は、私以前の幾多の作家たちとまったく同じように、違反行為の動機を探ろうと試みていました。私が書いたのは、そのような女性たちが存在すること、です。それは、尊敬すべき裁判官のみなさんが誰よりもご存知のことです。私たちは、戯曲のなかにテロリズムを正当化するようなものはなにもないと主張する20以上の証言を聞きました。しかし、私たちが話しているのはロシア語で書かれたテキストに関してで、そこには複雑な語彙も、特殊な用語もありません。作者がISIS*を支持しているかそうでないかを決めるために、芸術学Ph.Dである必要も言語学の専門家である必要もまったくありません。ロシア語が話せ、高校を卒業していれば十分です。このテキストにテロリズムの正当化があることに気づかなかった人々は、検察によれば、過去6年間に、演劇界の数百の専門家、文化省、演劇人同盟、ロシア連邦刑執行庁、数千の観客、この14ヶ月のあいだ留置所にいる私たちに手紙を書いてくれた数百の人々とのことです。それから、言語学者の人々もいます、そのうちの一人は言語学的司法鑑定の手法に関する本を書いています。でも検察は〔その人〕より詳しいのでしょう。
私たちが留置所にはいって15ヶ月が過ぎました。そろそろ不条理は後退する頃でしょう。私とベルコヴィチが、ようやく、本当に意味のあることに従事し、働き、近しい人々のを気遣い、愛する人々を抱きしめ、健康を取り戻すのです。常識がついに勝利をおさめるよう」
*ロシア領域内で禁止されているテロ組織
7月8日
19:20.
ロマン・ヴィクチュク劇場は、同建物を設計した構成主義建築家コンスタンチン・メリニコフにちなみ、名称を「演劇舞台メリニコフ」へと変更する。本件は、6月に劇場芸術監督に任命されたコンスタンチン・ボゴモロフが発表した。ヴィクチュク劇場サイトに掲載された公式発表では、新しい首脳陣は現在のレパートリーからいくつかの作品を外すことを予定し、その代わりに「さまざまなスタイルと美学を信奉する」演出家たちの作品を採用するとのこと。「それにより、心理主義的なものから形式主義的なものまで、その現れが極めて多様なロシア劇芸術の伝統に立脚する劇場となるだろう」と劇場サイトで述べられている。「これにより、現代性に開かれ、私たちの社会生活に敏感に呼応する劇場となるのです。現代性との結びつきを失った劇場は廃れていきます。そして重要なのは、こうした劇場というのは、過去も現在も未来も、人々を描き、人々のためにある劇場だということです」。
劇場側は、「その美学的エネルギーを失っていない」ロマン・ヴィクチュクと彼の教え子たちによる作品を「保護」するつもりである。それ以外の作品は、新しい首脳陣たちが一通りの稽古を行なったあと、レパートリーに戻るか、あるいは永遠にレパートリーから削除されるか、となる。「過去と別れるときのように、作品との別れは、常に痛みをともなう」と劇場サイトでは述べられている。「私たちはそのことを十分に自覚しているが、この判断が唯一正しいものだと考えている。劇場は博物館ではなく、変革に開かれているときにのみ劇場は生きている」。俳優で演出家のドミトリー・ゴルベフはSNSで、新しい首脳陣は、ロマン・ヴィクチュクの演出作品『女中たち』、『ドン・ジュアンの最後の恋』、『素晴らしき人!(Несравненная!)』、『愛の幻想』、『長靴をはいた猫』、『マルキ・ド・サドの仮面舞踏会』、またイーゴリ・ネヴェドロフ演出の『ヴェネツィア人』とアレクサンドル・カルプシンの『従僕の遊び(Лакейские игры)』をレパートリーから外す判断をしたと伝えている。ヴィクチュクの『フョードル』は、ボゴモロフの改作版として上演される。現在劇場サイトは改装中で、ニュースと公演情報が表示されている。今後、あらためてロマン・ヴィクチュクの創作活動と彼の作品についてのページができる予定である。劇場はまた「記念のイベントやレクチャーを企画して、演出家の思い出を保つ」ことを考えているという。さらに、劇場の壁に記念プレートの設置も計画されている。
ロマン・ヴィクチュクの個人劇場は1991年にモスクワで創設された。1996年に劇場は公立となり、ストロムィンカ通りに自前の劇場を持つことになる。ロマン・ヴィクチュクは2020年11月に亡くなり、彼の没後、劇場芸術監督にはデニス・アザロフが着任したが、彼は2022年に辞任していた。その後、劇場は芸術評議会が主導しており、2024年6月7日まではコンスタンチン・ボゴモロフがロマン・ヴィクチュク劇場の新しい芸術監督に任命されたことは明らかになっていなかった。ボゴモロフはブロンナヤ劇場での同様のポストと兼任することになる。
19:22.
ジェニャ・ベルコヴィチとスヴェトラナ・ペトリイチュクに対して懲役6年の判決が下される。裁判所は検察側の要求を認めた。本件に関して詳細はリンク先に。
16:00.
本日、7月8日、演出家ジェニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの事件に関して、第16回目となる最後の審理が行なわれた。
審理は11時に始まった。本日の審理では事件に関する弁論が続けられた。弁護人のクセニヤ・カルピンスカヤとエレナ・オレシニコヴァ、そして演出家〔ジェニャ・ベルコヴィチ〕自身とスヴェトラナ・ペトリイチュクが発言した。その後、二人はは最後の言葉を述べ、これにより弁論は終了した。
弁護団に夜と、本日18時30分に判決が述べられ、一般の傍聴が許可されるとのこと。
第9回審理で判事のユーリー・マッシンは公判を非公開の形としていた。
ロシア刑法205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件され、罰金もしくは5年から7年の懲役が定められている。拘束の理由となったのは、ネットで急進的イスラム主義者たちと知り合い、シリアにいる彼らのところに向かう女性たちの物語であるスヴェトラナ・ペトリイチュクのドキュメンタリー的戯曲に基づいたベルコヴィチの作品『美しき鷹フィニスト』である。弁護団によると、検察は一般矯正施設における6年の懲役を求刑した。
7月5日
19:00.
2024年のアヴィニョン演劇祭のオフ・プログラムの枠内で、カテリナ・グリジナのマルチメディア・インタラクティヴ・パフォーマンス『ロシア人であること2022-2024』が上演される。パフォーマンスは7月5日から7日に«Au Chapeau Rouge»劇場の舞台で行なわれる。
同パフォーマンスは、2022年2月24日以降における現代ロシア人の移住や生活の問題に関する内容である。「自身の詩やダンス、客席との対話や個人的なアーカイヴからのインタビュー映像などを用いて、同アーティストは人間性の保持、持続性の探究、分断された世界における自己同一性の持続性と理解を探究という直接的な経験に没入していくことを提示する」と上演アナウンスでは述べられている。
このパフォーマンスは、移住者たちにとって極めて重要な、どのような状況であれ何かを続けていくこと、という問題を提起している。同作は、観客とのインタラクティヴな対話、やむをえず移住した人々へのインタビュー動画、即興ダンス、そして、移住状態にあるパフォーマーたちによる毎週のワークショップの成果発表など多部的な構成となっている。
パフォーマンスに関する詳細は、以下のリンク先に。
13:10.
ジェニャ・ベルコヴィチの弁護団は、検事のエカテリナ・デニソヴァが昨日の審理でベルコヴィチとペトリイチュクに対して6年の懲役を求刑したと伝えた。本件は、ロシア刑法205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件され、罰金もしくは5年から7年の懲役が定められている。
一般的な6年の懲役のほか、検察はベルコヴィチとペトリイチュクに対して「4年間、インターネットを含む情報通信系電子ネットワークのサイト運営と関連した活動に従事する権利の剥奪」を求めた。ベルコヴィチとペトリイチュクが2023年5月4日から留置所で過ごした時間は、「一日を一日」として算入され服役期間に含まれる。
7月4日
19:00.
本日、7月4日、非公開の形で演出家ジェニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの事件に関する第15回審理が行なわれた。弁論が始まり、検事のエカテリナ・デニソヴァは、検察側が求める量刑を述べた。本件は、ロシア刑法205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件され、罰金もしくは5年から7年の懲役が定められている。6月13日に検察側の要請により、判事のユーリー・マッシンは公判を非公開の形としたため、ベルコヴィチとペトリイチュクにどちらの刑罰が適用されるかは不明である。また本日の弁論では、スヴェトラナ・ペトリイチュクの弁護人が発言した。
次回の審理は7月8日に行なわれる。
7月3日
14:13.
本日、7月3日、非公開の形で演出家ジェニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの事件に関する第14回審理が行なわれた。本審理はベルコヴィチの弁護団が不在であったために6月27日から変更されていたものである。一時的にジェニャ・ベルコヴィチの弁護人の権利を引き受けたのはイーゴリ・パヴロフスキーで、彼は前日に合意書を交わしたため、いま現在、事件の資料に目を通す必要がある。休暇中のクセニヤ・カルピンスカヤは7月4日にモスクワに戻り、裁判所が通知した審理に出席しようとしている。
6月13日、検察側の要請に基づき、判事のユーリー・マッシンは公判を非公開の形とした。
ロシア刑法205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件。拘束の理由となったのは、ネットで急進的イスラム主義者たちと知り合い、シリアにいる彼らのところに向かう女性たちの物語であるスヴェトラナ・ペトリイチュクのドキュメンタリー的戯曲に基づいたベルコヴィチの作品『美しき鷹フィニスト』である。
12:00.
クラスノダルの祖国防衛者劇場は「ペレプラヴァ」フェスティバルの開催を発表。同フェスティバルには、ウクライナでの戦闘行為に参加している軍人、ロシア国家親衛隊員、志願兵らを招待する。「大祖国戦争に従軍した詩人たち(彼らの多くは在学中から前線に出た)の詩は、ロシアの古典文学の重要な一部になった」と劇場サイトでは述べられている。「今日、戦争詩の年代記を書くのは私たちの同時代人である。「現代の大祖国戦争」の戦いにおいても、かけがえのない歴史的証言や詩的な宝物として我々が次の世代に伝えるべき言葉が生み出されていくことは疑いがない。それらを集め、保存し、その英雄的な軍人作家たちを正当に評価することが我々の責務である」。
7月1日
18:00.
ドミトリー・クルィモフ演出、チュルパン・ハマトヴァとマクシム・スハノフ出演の『狂人たちの日記』が2024年9月18日から21日にリガのLED Unit Halleで初演を迎える。「このホールでリハーサルと作品の撮影が行なわれていたため、制作チームは、現状では作品が生まれたこの場所が初演にふさわしいと判断した」とプロデュース・カンパニーArt Forteのサイトで語られている。
これ以前、ラトヴィア・ナショナル・シアターが『狂人たちの日記』の上演をキャンセルし、ウクライナでの紛争が終結するまでの期間、ロシア語での上演を延期するとした。同作はロシア語で上演され、ロシア人アーティストたちが世界で自らの場所を見つけようとする体験を語っている。9月中旬にナショナル・シアターでの初演が予定されていたが、同作のために舞台を貸し出すという決定が、市民の一部から反発を呼び、その結果貸し出しはキャンセルされた。
6月27日
27 ИЮНЯ
13:00.
本日、6月27日、非公開の形で演出家ジェニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの事件に関する審理が行なわれるはずだった。ロシア刑法205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件。拘束の理由となったのは、ネットで急進的イスラム主義者たちと知り合い、シリアにいる彼らのところに向かう女性たちの物語であるスヴェトラナ・ペトリイチュクのドキュメンタリー的戯曲に基づいたベルコヴィチの作品『美しき鷹フィニスト』である。
本日の審理は、ジェニャ・ベルコヴィチの弁護団が不在のため(クセニヤ・カルピンスカヤは休暇、エレナ・オレシニコヴァは病欠)7月3日に変更された。
12:00.
6月29日「ロメン」劇場でドンバスでの出来事に関する作品が初演をむかえた。ヴァレリヤ・ヤヌィシェヴァの戯曲『砂時計』は、演劇人同盟、文化省、文化創造大統領基金の支援のもと実施された愛国的コンクール「新しい時代/新しい主人公たち」で第三席を受賞していた。同作品は同作の劇作家で、「ロメン」劇場の女優、演出家のヴァレリヤ・ヤヌィシェヴァが演出した。
劇場サイトでは次のように述べられている。「戯曲の舞台は現在のドンバスで、武装した民族主義的集団が街に恐怖を与えている。あるグループのメンバーが主人公であるジプシーの青年ミゲリの婚約者ソーニャをひどくなじった。
物語のいまひとつのストーリーはソーニャの未成年の弟である。彼はファシスト的思想で頭がいっぱいになっていた。戯曲では民族主義的思想と人文主義的思想が衝突し、神はすべての人々を同じように創造し、敵意ではなく愛のために創造したのだという主人公たちの思想がある。愛や共にいたいという願いのために、主人公たちは親類たちからの圧力、外部の敵対勢力、生活環境、自分自身の疑念や先入観を乗り越えようとする。
作品の中ではナチズムがはっきりと強固に描き出される。彼らは駆逐せねばらなぬ恐るべき危険な敵であり、そのイデオロギーはなによりも子ども達の頭から切り離さねばならない。観客はナチズムに正当性がないことを目にするだろう」。
6月26日
22:00.
本日、6月26日、非公開の形で演出家ジェニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの事件に関する第12回審理が行なわれた。彼女らはネットで急進的イスラム主義者たちと知り合い、シリアにいる彼らのところに向かう女性たちを描いた『美しき鷹フィニスト』で「テロリズムの公的な正当化およびテロリズムのプロパガンダ」の罪に問われている。審理は2時間遅れて始まった。本日、法廷では、俳優で舞台芸術大学(GITIS)卒業生のアレクセイ・マカロフへの弁護側尋問が行なわれた。これが証人尋問の最後であり、その後被告人尋問が始まった。スヴェトラナ・ペトリイチュクは18時半まで証言し、ジェニャ・ベルコヴィチへの尋問が始まったのは、休憩を挟んで21時20分だった。22時に審理は終了した。裁判の続きは明日6月27日12時に予定されている。「Lawyers PRO People〔Адвокаты PRO людей〕」の〔テレグラム・〕チャンネルによると、弁護側は、ロマン・シランチエフの「破壊学的」鑑定は許容し難い証拠である旨を申し立てる予定で、また法廷での『美しき鷹フィニスト』の上演録画全体を視聴確認することを求めている。
第9回審理で、検察側の要請に基づき、判事のユーリー・マッシンは公判を非公開の形としている。
13:00.
ドミトリー・クルリャンツキーが「ゴールデン・マスク賞」を辞退。同作曲家は自身のSNSで次のように述べた。「私にとってこれは、永遠に失われた何か別の人生からの「メッセージ」なのだ。作品は素晴らしく(とはいえ、私がそれを観たのは録画でだけなのだが)、そのチームは私にとって身近で大切な人々だ。この作品は、いつもの通り、私たちが生きているこのひどく穢らわしい世界を扱ったものだ。(中略)私にとって重要なのは演劇がまだ主要なものに関して語ることができるということだ。私はこの作品を作り上げたすべての人々に感謝している。もちろん「ゴールデン・マスク」を受け取ることはできない。これは個人に対するノミネートであり、だから自分の個人的な意見を表明する権利を私は持っているはずだ。私個人にとって、「マスク」は演劇とその背後にある人間らしい生活を壊滅させているシステムの渋面となってしまった。(中略)新しい公式的なロシア演劇のシンボルとして、ジェニャ・ベルコヴィチとスヴェトラナ・ペトリイチュクに対する裁判がある。私はこのことを言う機会があり、こうした機会を用いる義務がある。しかしそれでも、私は我が国で、そして演劇界で、文字通り壁に追い詰められながらも真実と名誉に奉仕し続けている素晴らしい人々が数多くいることを知っている」。クルリャンツキーには、ペルミの劇場「シアター=シアター」での作品『カテリーナ・イズマイロヴァ(ムツェンスク郡のマクベス夫人)』における最優秀作曲家として授与された。
SNSでは「マスク」の授賞に関して、エミリ・カペリュシもまた発言している。「私個人にとってはどのような賞よりもジェニャ〔・ベルコヴィチ〕とスヴェタ〔・ペトリイチュク〕の事件に関する裁判の茶番劇が終わるほうがいい。また、私たちの演劇界において彼女たちへの連帯を示している人々が少ないことについても考えている。同時に、このような困難な時代に誠実な仕事をしてくれた劇場(チェボクサルィの人形劇場)と上演チームにとても感謝しています」。カペリュシはチュバシの人形劇場でユーリー・スチコフと共同でデザインした『リア王』において、人形劇部門における最優秀美術家賞を受賞していた。
6月25日
18:00.
本日、6月25日、非公開の形で演出家ジェニャ・ベルコヴィチと劇作家スヴェトラナ・ペトリイチュクの事件に関する第11回審理が行なわれた。ロシア刑法205条2項「テロ活動実施への公的な呼びかけ、テロリズムの公的な正当化、もしくはテロリズムのプロパガンダ」で立件。拘束の理由となったのは、ネットで急進的イスラム主義者たちと知り合い、シリアにいる彼らのところに向かう女性たちの物語であるスヴェトラナ・ペトリイチュクのドキュメンタリー的戯曲に基づいたベルコヴィチの作品『美しき鷹フィニスト』である。
本日、裁判所には弁護側証人が出廷した。演劇批評家で芸術学準博士(кандидат)のパーヴェル・ルドネフ、言語学専門家のアナトリー・バラノフ、心理学専門家のオクサナ・グリナ、演劇学者で「ゴールデン・マスク賞2022」専門家会議メンバーのマリーナ・シマディナである。
一昨日の審理で検察側の要請に基づき、判事のユーリー・マッシンは公判を非公開の形とした。
次回公判は明日6月26日に行なわれる。事件の推移を見まもりたい。
15:05.
クラスノヤルスク人形劇場は、「ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国の各劇場の発展の環境整備と共通の文化空間の形成を目的とする」ロシア演劇人同盟クラスノヤルスク支部のプロジェクト「演劇・テリトリー・新時代」への参加を発表。8月19日から31日にクラスノヤルスクの俳優たちがルガンスクの街や村で『ロシアの十字架』の上演、スヴェルドロフスクでは『10まで数えられるヤギ』の初演が行なわれる。さらに演劇批評家のヴラジミル・スペシコフが「ルガンスクとドネツク地域における演劇評論家の育成に関するセミナー・ワークショップ」を開催、各団体代表者のためのラウンドテーブルでは、レクチャー「ロシアの演劇祭:その歴史と現状」が実施される。ラウンドテーブルには、演劇人同盟地方支部の代表アンドレイ・パシニンとクラスノヤルスク人形劇場ディレクターのタチヤナ・ポポヴァも参加する。
15:00.
ウクライナの戦闘地域で当地に志願兵として派兵されていた、ゴルノマリイスキー・ドラマ劇場の俳優ミハイル・ペクツォルキンが死亡した。現地ポータルサイト«ProGorod»の記事では次のように伝えられている。「コジモデミヤンスクには祖国防衛に立ち上がる愛国者たちが数多くいる。マリ〔共和国〕の俳優たちのなかにもそうした人々がいるのだ。ミハイル・ペクツォルキンは、同劇場において特別軍事作戦で亡くなった三人目の俳優となった」。
2024年春から夏にかけて戦争地域でロシアの劇場の俳優、スタッフが亡くなったのは、決してこれ事例だけではない。6月にはレオニド・グサロフ(かつてオムスクの劇場「ガリョルカ〔天井桟敷〕」に所属し、現在はニジェゴロツキー喜劇劇場と「ストレル」劇場の俳優)の死を、彼が教鞭をとっていたジュコフスキー児童芸術学校第一が伝え、またコミ・ペルミャツキー・ナショナル・ドラマ劇場が、同劇場の副ディレクターであるヴラジミル・トルシニコフの死を伝えた。どちらの発表でも「戦闘任務遂行中の死亡」という表現が用いられている。